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元東電マン、復興に向け福島で起業 「責任を一生背負っていかなくちゃいけない」

2014年9月30日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、原発事故により多大な被害を受けた福島県で、産業を起こすことで復興へと動き始めた人々を紹介していた。

福島第一原発から6.5キロの浪江町では、今年の夏からがれきの撤去作業が始まったばかり。海沿いには62隻の船と400台以上の車が、震災直後と同じ場所に放置されたままだ。

南相馬市の「太陽光発電施設」で被災者を雇用

1004TV現在の放射線量の値は、国の基準値の0.23マイクロシーベルトより低い0.11マイクロシーベルト。岩手や宮城に比べて復興が遅れているものの、いずれ帰還できる時に向けて産業を復活させようという動きがある。

南相馬市の北に位置する小高区は、原発から20キロ圏内。震災後1年間立ち入りが禁止されていたが、昨年4月から一部で昼間の出入りが自由となった。小高で生まれ育った半谷(はんがい)栄寿さん(61)は、小高駅前を訪れてさびしそうに話す。

「こんな、少し涼しくなってきた夏の夕方に、駅前に人影がないなんてことは一度もなかったですね」

半谷さんは東大法学部卒業後、1978年に東京電力に入社。介護ビジネスなど数多くの新規事業を手掛け、執行役員も務めた。震災時には退任していたが、変わり果てた故郷を前に自責の念にかられる思いを語る。

「原子力災害は起こしてはいけなかった。本当に残念です。事故を起こしてしまった東電役員のはしくれだった身ですから、私は責任を一生背負っていかなくちゃいけない。背負うだけでなく、毎日毎日全力で、南相馬や福島の復興に少しでも役立つようにしなくてはいけない」

半谷さんは昨年、復興にむけた施設「南相馬ソーラー・アグリパーク」を、原発からおよそ25キロの南相馬市原町区にオープンさせた。施設の電力はすべて敷地内に並べられた太陽光発電ソーラーパネルでまかない、残りは電力会社に売電している。ここで植物工場を運営、サラダ菜などを水耕栽培し、被災した人々の雇用も生み出している。

オープンスクールで復興担う「若い世代」を育成

施設の一番の目的は、復興の担い手を育てることだ。施設の発電システムを小中学生に体験してもらい、考える力や行動する力を育む人材育成の場にしている。

小高区の小学6年生たちは、手動での発電や水力発電を起こすのにどれほどのエネルギーが必要かを楽しそうに体験・見学していた。その様子を見ながら半谷さんは力強く語った。

「私たちも頑張りますが、復興には長い時間がかかる。子どもたちの中から復興のリーダーが生まれて欲しいし、生まれると信じています」

さらに半谷さんは、県内の高校生たちと復興につながる事業会社を立ち上げたいと考えて、4回に渡る無料のオープンスクールを始めた。参加者のひとりで高校2年生の菅野智香さん(17)は、福島県に対する悪いイメージを変えたいと考えている。

福島県産の農産物について、スーパーで主婦の意見などをリサーチ。中間報告会でNPOやビジネスマンを招待して賛同者を募りつつ、野菜を首都圏に届ける宅配サービスの事業企画案を発表した。最後に菅野さんは、堂々と自分の思いをこう伝えた。

「福島県に住んでいる高校生も、将来社会に出たり世界に羽ばたいたりする時に、自分の地元を、自信を持ってPRすることが大切だと思います」

故郷の復興が心のよりどころに

半谷さんのねらいは、高校生が福島の復興に貢献している姿を小中学生に憧れの的として見てもらい、「福島の復興を担うさらに若い世代が生まれる」循環を作ることにもある。長い時間がかかる復興を見据えてのことだ。

番組では、家族と共に南相馬市に戻った時のことを考え、かつて地場産業だった絹織物を復活させようと奮闘する和田智行さん(37)の取り組みも紹介した。

仮設住宅で暮らす素人の女性たちが、まゆから糸を紡ぐ作業や機織りを学び、コースターなどの絹製品を商品化。9月に行われた「小田原箱根まちなか博覧会」では完売するほど好評だった。

元東電マンの半谷さんの活動は償いであり、自分の故郷を再生させる試みでもある。そして復興に向けて産業を起こそうとしている人たちにとって、故郷の復興が心のよりどころであり、誇りの回復につながっているようだった。少しずつではあっても何かしようと動き、前に進もうとする姿勢が尊いと感じた。(ライター:okei)

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若松丈太郎:福島原発難民―南相馬市・一詩人の警告 1971年‐2011年
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