藤子不二雄A先生が亡くなってしまった。こんな時代こそ『まんが道』を読むべきだ。 | キャリコネニュース
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藤子不二雄A先生が亡くなってしまった。こんな時代こそ『まんが道』を読むべきだ。

書影

今こそ読みたい

藤子不二雄A先生が亡くなってしまった。最後に連載していたコミックエッセイ『PARマンの情熱的な日々』(集英社『ジャンプSQ』連載)を「元気がでるまで残念ながら休ませてください」と休載したのは、2015年11月のことだった。

以来、様々な催しに出席したというニュースはあっても、新作の公開はないままだった。

思い返せば、代表作が多い作家だった。知名度から言えば『忍者ハットリくん』『怪物くん』『プロゴルファー猿』あたり。ちょっと気取るなら『笑ゥせぇるすまん』・『魔太郎がくる!!』。いやいや『劇画 毛沢東伝』や『愛ぬすびと』を挙げる人もいるだろう。そんな無数の作品を描き続けて来た人物だが、私のイチオシは『まんが道』だ。私は何度も読んだし、今でも手の届く範囲に置いてあるのだが、これこそいま読まれるべき作品だと思う。(文:昼間たかし)

挫折の克服が延々と続く『まんが道』

『まんが道』は1970年から2013年4月まで、数々の雑誌をまたいで連載されていた。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)に連載された、あすなろ編に始まり、『週刊少年キング』(少年画報社)の立志編・青雲編。『藤子不二雄ランド』(中央公論社)の春雷編を経て、『ビッグコミックオリジナル増刊』(小学館)『愛…しりそめし頃に… 満賀道雄の青春』と続いていく。

フィクションだが、本人の自伝的マンガでもある。上京して漫画家を目指す主人公の姿は、「これから何かを成し遂げたい」と考えるすべての人たちを奮い立たせると思う。その普遍的な価値は、今も古びてはいない。

今とは全く違う、昭和を舞台に描かれているのに、今でも読み続けられるのは、読者が劣等感やコンプレックスを感じても折れない主人公の姿に共感するからだろう。

主人公・満賀道雄は、自分よりも絵が上手く、才能を持っている人物と出会う。とりわけF先生をモデルとする才野茂は、親友であると同時に強烈な才能を持つライバルでもある。

しかし、そうした劣等感を抱えながらも、満賀は成長していく。「あすなろ編」で描かれる小学校時代。満賀は才野との圧倒的な画力の差に打ちのめされる。打ちのめされるのだが、そこで折れるのではなくコツコツとデッサン練習を繰り返すことで自信をつけていく。

「春雷編」では、石ノ森章太郎(1984年までは石森章太郎)の圧倒的な描くスピードの違いに驚く。しかし、それを羨みながらも、結局は流されず、自分のペースでコツコツと仕事を積み重ねていく。

A先生は日本を代表する大作家なのだが、まんが道に描かれているのは成功者のきらびやかなストーリーではない。むしろ失敗や挫折を味わいつつ、消えない劣等感と折り合いをつけながらも夢を諦めず、ひたむきに生きていく作家の姿なのである。

もちろん努力したからといって、誰もが大作家になれるわけではない。しかし、A先生ですらも先の見えない時代をどう生きぬいていくべきか、悩みながらコツコツと努力を積み重ねていたのだ。「小手先のテクニックで他人を出し抜き、簡単に大儲け」みたいな話がもてはやされる世の中だが、こんなときこそ、みんな焦らず『まんが道』を読むべきだ。

※本来Aは丸囲み表記ですが、文字化けを避けるためご了承ください。

 

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