千葉銀行は1943年、千葉合同銀行など計3行が合併して設立。1971年に東証一部に上場しました。1998年に中央証券を買収し、現在は連結子会社9社、持分法適用子会社6社を傘下に擁するグループとなっています。
2023年3月期の経常収益は2783億円で地方銀行4位、同経常利益率は31.2%で同1位。時価総額も地銀トップ(2024年2月末現在)で、地域トップバンク10行による広域連携「TSUBASAアライアンス」に加盟しています。(NEXT DX LEADER編集部)
「価値創出の基盤」の筆頭にDX掲げる
千葉銀行は2023年4月に「第15次中期経営計画 フェーズ1(2023年4月~2026年3月)」を発表。新たに「一人ひとりの思いを、もっと実現できる地域社会にする」をパーパスに、「地域に寄り添う エンゲージメントバンクグループ」をビジョンに制定しました。
中期経営計画では、取組指針に「お客さま中心のビジネスモデルの進化」を掲げ、基本方針として「Ⅰ:最高の顧客体験の創造」「Ⅱ:既存事業の質の向上」「Ⅲ:新たな価値の提供」の3つをあげています。そして、5つの「価値創出の基盤」の筆頭に「DX」を掲げています。
成長戦略として「デジタルの利便性・リアルの専門性を活かした既存事業の深化、非金融を含む新規事業への挑戦」をあげており、デジタルの活用が戦略の中心に置かれていることが分かります。また、構造改革として「各事業領域のポテンシャルを最大限に発揮させるガバナンス改革、グループ組織力の向上」にも「デジタル戦略部」の設置と生産性の変革などがあげられており、ここでもデジタル重視の姿勢が現れています。
ビジョン実現に向けた取組指針として「お客さま中心のビジネスモデルの進化」を掲げ、「最適なパーソナライズ提案によるクロスユース拡大」「お客様のニーズに先回りし、商流の川上に立った提案」「お客さまのニーズに沿った非金融サービスの拡充」「お客さまが選べるタッチポイントの構築」の4つに取り組むとしています。
より具体的な取組方針としては、以下の3つの基本方針を掲げています。
- 基本方針Ⅰ:最高の顧客体験の創造
・One to Oneマーケティング - 基本方針Ⅱ:既存事業の質の向上
・個人ビジネス=最適な資産運用提案/住宅ローンビジネスの強化/信託・相続ビジネス/キャッシュレス基盤強化
・法人ビジネス=法人ポータルを通じて経営者の補佐役として事業者の経営課題解決に貢献 - 基本方針Ⅲ:新たな価値の提供
・新事業(ちばぎん商店/オンアド/不動産ファンド/金融サービスの拡充)
「金融事業の進化」と「非金融事業の創造」を推進
千葉銀行は2017年に「ちばぎんDX 1.0」としてデジタルバンキング戦略を打ち出し、フィンテックの共通基盤を構築し、これを活用した「通帳アプリ」や「バンキングアプリ」を開発しました。
2020年からの「ちばぎんDX 2.0」では「CXと生産性の向上」を目指し、アプリ・ポータル・データ活用・ペーパーレス印鑑レスを推進。あわせてDX人材育成精度を導入しています。
2023年からの「ちばぎんDX 3.0」では「最高の顧客体験の創造」を目指し、「お客さま中心のビジネスモデルの進化」を推進するとしています。
「パーソナライズ戦略」と「地域エコシステム戦略」によって「金融事業の進化」と「非金融事業の創造」を推進し、
- 「お客さまとつながるデジタルインフラ開発」
- 「銀行業務を効率化する業務インフラ開発」
- 「プラットフォームや新技術で事業を支援」
- 「ニーズをデジタルで支援」
- 「販売をデジタルで支援」
といった取り組みを行い、取り組みの基盤として「戦略効果を上げるためのデジタルマーケティング」と「戦略を加速するための人材開発」を行います。
「ちばぎんアプリ」と「法人ポータル」で顧客との関係強化
DX戦略では、「パーソナライズ戦略」と「地域エコシステム戦略」の2つの個別戦略について詳しく説明されています。
1つ目のパーソナライズ戦略で目指すのは「One to One マーケティング」で、データを活用して顧客ごとの悩みに適した解決策を提案し、ファンを増やしていく考え方です。
多様な媒体から収集したデータを分析し、顧客ニーズやライフプランを先読み。顧客に最適なチャネルでカスタマイズしたライフプランを提案するとしています。
ライフプランの提案内容も、従来の「ローン」「保険」「資産運用」などの金融サービスだけでなく、「クリーン電気」「介護」「終活」など非金融サービスのラインナップをさらに充実させていくとしています。
2つ目の地域エコシステム戦略とは、地域の顧客と事業者をつなぎ、経済循環を構築することに千葉銀行が関わることを目指しています。
具体策として、地域の事業者と顧客が利用できる「キャッシュレス決済プラットフォーム」や、独自の購入型クラウドファンディングサイトを通じて商品・サービスを販売する「ちばぎん商店」、広告事業をあげています。
これら個別戦略を推進するツールとして、個人顧客にはスマホアプリの「ちばぎんアプリ」、法人顧客には「法人ポータル」を通じて、取引・関係強化を図るとしています。このほか、BaaSやメタバースなどの新技術の活用も積極的に行っていくとのことです。
特に「ちばぎん商店」については、千葉発の「地方創生の起爆剤」を生み出す〔STEP1〕、商流の川上に立った新たなビジネスモデルを確立する〔STEP2〕、新たな日常における消費活動を支援し「くらしとつながる」を実現する〔STEP3〕の3つで事業を強化していくとしています。
集中業務のRPA化で年30万時間の業務時間削減
このような成長戦略に加え、DX戦略にはデジタル技術による「業務効率化」や、戦略推進の基盤となる「DX人材育成」についても整理されています。
業務効率化については、対面チャネルを維持しつつ、非対面化へのシフトに対応。顧客向けチャットツールを導入したり、事務の本部集中化を測ったり、ペーパーレス化のさらなる推進、集中業務のRPA化などを進め、年30万時間の業務時間削減を目指します。
DX人材育成については、DXに関する一定のリテラシーを有する「DXベース人材」から、経験・実績・知識・意欲の「DXスコア」の基準を達成した人を、DXコア人材養成コースで教育し、「営業店DX」と「本部DX」のコア人材として経験を積ませ、さらにそこから「DX専門人材」を育成するとしています。