「1on1は意味がない」ということはない 部下のほうこそ意識して活用しよう
現代はまさに多様性の時代です。部下を深く理解することが上司に求められる中、1on1を導入する企業が増えています。
しかし、私が担当する管理職向け研修では、「1on1をしっかり活用できていますか?」と聞くと、大抵の上司の皆様は俯きながら、「うまく活用できていません」と答えます。上司と部下、それぞれが忙しい中で1ON1の時間をとっているのに、不毛な時間になってしまっているようです。
今回は、上司だけでなく部下にこそ1on1を有効に活用してほしいといった目線も含めて、効果的な1ON1の進め方をご紹介してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
1on1をすること自体を目的にしてはいけない
リクルートマネジメントソリューションズの調査(2022年)によると7割近くの企業が、1on1ミーティングを施策として導入しています。
導入の目的に関しては、1位が「社員の主体性・自律性の向上」(52.5%)、2位が「自律的キャリア形成の支援」(41.5%)となっています。1on1の効果として、「上司と部下のコミュニケーションの機会が増えた」「上司と部下の関係性が良くなった」といったメリットがあったとされていますが、私が管理職の皆さんやメンバーの皆さんから伺う生の声とは、少し乖離があります。
実際の現場では、上司と部下それぞれが、1on1の時間そのものを一つの仕事と捉えて義務的に進めている状況が伺えます。もちろん仕事なのですが、1on1の目的をあまり考えずに行なっている方が多く、上記の調査とは裏腹に1on1の時間を作ること自体が目的になってしまっているようです。
1on1を部下自身の成長に繋げよう!
1on1の目的には、様々なものが考えられますが、上司としては部下の育成と部下のエンゲージメント強化をはかり、成果創出に繋げていくといったことになります。この目的を前提として捉え、1on1を有意義にしていくことが必要です。
上司が効果的に1on1を展開するためには、4:2:4の法則というものをお伝えしています。1on1の目的設定や事前準備に4割の力を使い、当日の面談には全体の2割の力、そして、その後の観察やフォローに4割の力を使っていくのです。
前述の通り、多くの方が1on1当日の面談に多くの力を注いでしまい、1on1が目的化してしまっています。最終的な成果創出の目的の中で、1on1をデザインしていきましょう。
一方部下の方にとっても、1on1に明確な目的を持つことが大切になります。成長実感を高めたいといった思いを強く持っている方が増えている昨今、そのための貴重な時間として活用していかなければなりません。1on1を、キャリア形成の支援をしてもらえる場として活用していきましょう。
例えば、「私は、将来広報に関わるキャリアを目指していますので、顧客の購買行動分析にもチャレンジをして、マーケティング力を高めていきたいです」といった思いを1on1の中で伝えられれば、上司として部下の今後のキャリア形成にとって有意義な経験を考えやすくなります。
上司は、キャリアカウンセラーのようなプロとは違いますので、自身のキャリアへの思いをしっかり伝え、成長の機会を積極的に獲得していくのです。また、最近の課題感や悩みを伝えることによって、人生の先輩としてのアドバイスやヒントをもらえるタイミングとすることもできます。仕事の話ばかりに終始するのではなく、自己開示をし、良好な関係を作っていきましょう。
以上、今回は効果的な1on1の進め方に関して、上司の立場と部下の立場からお伝えさせていただきました。上司と部下の良好な人間関係と支援関係が、人と組織の成長を促していきます。形だけの面談にこだわりすぎずに、常に目的を考えて進んでまいりましょう。