テレ東「ガイアの夜明け」の公式ツイッターが炎上 良い給与に、安定した生活…。そんなものは「後回し」?
大手企業で働いた経歴を持つ若者たちが「社会の役に立つ仕事をしたい」とソーシャルビジネスに打ち込む姿に、3月23日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)が密着した。
ソーシャルビジネスとは、ビジネスを通して社会問題を解決しようとする取り組みのこと。都内で開かれたアイデアコンテストで発表者を務めたNTTデータ出身の男性は、大企業の安定した職を捨てても思いを貫く理由をこう語る。
「新興国の人たちのために何かすべきという信念があるならば、突き通していく方が自分にとっても社会のためにもいい」
視聴者は溜め息「技術を一から教える気はないんだなぁ」
ソーシャルビジネスを手掛ける「ボーダレス・ジャパン」を10年前に設立した田口一成さん(35歳)も、大手商社を25歳で退職。バングラデシュの貧困層が作る革製品店「ビジネスレザーファクトリー」を展開し、軌道に乗せている。
同社には事業のアイデアを若手社員にプレゼンさせ、OKとなれば3000万円が出資されるしくみがある。入社6年目のNさん(29)も、バングラデシュで子供服ブランドを展開。子どもたちが学校に行けず働きづめになっている状況を変えたいという思いがあった。
ところが自社工場を作り、現地でミシンが使える人を募集すると、訪ねてくる女性たちは技術が未熟だったり使える機種が限られていたりして、やむなく門前払いするしかない事態に。Nさんは簡単に縫える商品を増やし、技術に応じた雇用ができるように路線を変えた。
このようなアプローチも段階的に必要なはずだが、視聴者は一連の場面に違和感を持ったようだ。現地の人たちに丁寧に技術伝承して、成長を手助けする展開を期待していた視聴者は、そうではなかったことへの疑問をネットに書き込んでいる。
「貧困層を助けたいって言っているけれど、技術を一から教える気はないんだなぁ…」
「(人を)育てることもコストと考える現在経営者の問題が浮き彫りに。事業を継続するなら、技術を教育し伝承することが必要」
こういった批判には、若い労働者を育てずに使い捨てする日本のブラック企業への反発も込められているのだろう。
「国内の貧困とか子供達の問題はスルー」と違和感
このほかにもネットには、番組や登場人物たちへの批判めいた書き込みが予想以上に目に付く。たとえば国内にも困った人たちが大勢いるのに、なぜか海外の新興国の問題を優先したがるエリートたちへの違和感だ。
「人の役に立ちたいという意識高い人達が、海外の安価な労働力を利用してWIN‐WINという関係を作ってるんだよね。国内の貧困とか子供達の問題はスルーして」
もしも「報酬に見合わない仕事を選ぶ人たち」がテーマであれば、国内にも「介護職と保育に携わる人」がすでに多数おり、そういった人たちに光を当てるべきだという声も見られた。
また、番組公式ツイッターが「良い給与に、安定した生活…。そんなものは『後回し』という人が、増えてきているんだそうです」と書いたことに対しても、「やりがい搾取」を疑う人たちから批判が殺到している。
「まるで低い賃金で奉仕する事が美徳であるかのような言い方はやめて頂きたい。メディアがこの様な誤った労働をまるで美徳であるかのように垂れ流すから若者の低賃金問題が解決しない」
「頭がお花畑のあなた方に一言申し上げます。『皆食うために働いている』と。給与もろくにもらえず、明日食べるご飯も困る生活を強いる会社が押し付ける『やりがい』なぞ、空腹を満たす手段にすらなりません」
自分たちが否定した「企業ビジネス」と似てくるのでは
ネットの書き込みには誤解に基づいたものもありそうだが、その一方で、番組に登場するような若者を称賛することが視聴者の批判を招くほど、苦悩を抱える人たちが増えているとみることもできる。
結局、この番組ツイートには「異常なこと言ってる」「見損ないました」「まったく何も現実を見てない証拠だな」「やりがいよりも金をくれ…ですよ…」などといったリプライが続き、リツイートが4000を超える炎上状態になっている。
確かに番組を見た感想としても、新興国の安い労働力を使うこと以外は、海外に生産拠点を求める既存メーカーと同じようにも思えた。ソーシャルビジネスが継続的なものである限り、一定の利益を上げ続ける必要がある。その中身はかつて自分たちが否定した「企業ビジネス」と、さほど変わりないのかもしれない。(ライター:okei)
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