290円の牛丼も贅沢品! 転職できない40代男性のリアルな貧困事情
ここ最近、貧困女子や子どもの貧困がメディアに取り上げられて話題になっているが、悲惨な状況にあるオジサンもいる。年収300万円で一家4人を養っている鎌田孝太郎氏(仮名・45歳)に話を聞いた。現在は埼玉県の中核都市に住み、都内のめがね販売店で販売と事務を行っている。
「この年で年収300万円じゃ、切り詰めて生活せざるを得ませんよ。お昼ご飯はもっぱらスーパーの特売で買った88円のカップ麺をすすってます。290円の牛丼すら贅沢品ですよ。中学生の子どもがいるのですが、給食費も滞納しています。流石にまずいとは思っていますが、ない袖は振れないですからね……」
そう話す鎌田氏の風采は上がらない。めがねこそ新品だが、スーツもよれてどこかみすぼらしい。月収は24万円でボーナスなし。年収300万円は20代の若者ならばいざしらず、家族4人が食べていくには少なすぎる金額だ。(文:中村直人)
会社からは「ゆくゆく給与は上げるから」と言われるが……
鎌田氏は、以前はめがねの製造工場に勤務。しかし、業績が悪くなってリストラされてしまった。そこから貧困に陥ってしまったという。
「再就職の時に、『ずっと携わってきたし、これからも業界にいたい』と思ってめがね販売会社に移りましたけど思えば、まだ若いときに違う業界を選んでおけばよかったですね。めがね業界はどこもじり貧です。話題になったJINSも今業績がよくないですから。だから、特徴のない我が社の業績がいいわけがありません」
なまじ経験のあった“めがね業界”に愛着を持ってしまったことが現在に繋がっている。転職業界では「35歳を過ぎると転職はできない」なる35歳転職限界説がささやかれている。鎌田氏もご多分に漏れず、キャリアアップを求める転職はできなかったのだ。
「面接で社長から『ゆくゆく給与は上げるから』と言われてそれを信じていました。でもその後、課長になって役職手当が付くかと思ったら、基本給は変わらず。むしろ、管理職だから残業代に上限ができて減りました。年収も以前はもう少しもらっていただけに生活レベルを落とすのは辛いですね」
優秀な若手は次々と会社を離れていくが、自分は動けず
そして新たな職場は体質もブラック企業であった。給料が安い割に、残業も多く、上司からは売上げのノルマを求められるという。
「会社的には『長く働いていること』が是とされます。だから、毎日サービス残業で帰りはいつも終電近く。でも、店舗の営業時間が終ればあとは片付け程度なので、特にやれることも少ないんですよね。『接客を丁寧にしろ!!』と言われても、そもそもお客さんが店舗に来ないんだから、接客しようがない(苦笑)」
ブラック企業は売上げや生産性を高めるために策を立てるということもしない。「気合いで売ってこい」「根性が足りない」と精神論で現場に発破をかけるだけで、当然売上げは数年前を境に右肩下がりのままだ。
「長い時間働いて残業代がもらえるならまだマシですけど……。一頃前は『体制にNOを!』と上司にかけあった人がいたみたいですけど、結果は変わらず、みんな諦めていて能力のある元気な若手人から転職していくので離職率は非常に高いです」
家族からは転職を勧められているが、これといったスキルもなければ動くことができない。
「専門性といってもめがねだけ。そもそも年齢的に雇ってくれるところがあるだけマシかもしれません。病気になったら入院費なども払えないので健康には気をつけていますけど、未来が怖いですね……」
鎌田氏はまだまだ住宅ローンの支払いが残っているため、少ない給与ながらこのまま働き続けるしかない状態である。何の変哲もないオジサンになってしまうと貧困から抜け出すのは容易ではない。男性の貧困も闇が深い。
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