新人アニメーターの平均年収は110万で1日11時間労働 アニメ業界のブラックすぎる実態まとめ
『君の名は。』『この世界の片隅に』などのヒット作に恵まれ、アニメ業界の市場規模は約2兆円。一方でアニメの制作現場は、長年劣悪な労働環境に置かれている。
NHKのテレビ番組『クローズアップ現代+』でも特集が組まれ、以下のような過酷な現状が紹介された。
・新人アニメーターの平均年収は約110万円(業界全体でも約333万円)
・1日の平均労働時間は11時間。月間の休日は平均4日
・イラスト1枚の単価は約200円
実は、アニメーターの多くはフリーランス(個人事業主)として働く。出来高制で描いた原画分の収入のみを受け取る構造になっているのだ。
アニメ制作の際はテレビ局、出版社、広告代理店などからなる”製作委員会”が発足されるが、グッズ販売等による収益は、すべて製作委員会に出資した企業の元に入る。どれほどヒットしようと、アニメーターの報酬額は変わらない。
ジブリ新人スタッフ「給料が安すぎる」と海外から批判相次ぐ
シリーズもののテレビアニメの祖ともいえる『鉄腕アトム』は、1本約50万円で制作されたと言われている。当時としても破格の安さで、手塚治虫は漫画で稼いだ収入で赤字を補填していたという。1960年代からアニメ業界の低賃金の状態は始まっていたのだ。
宮崎駿監督は、そんな状況に変化をもたらした。スタジオジブリを設立し、アニメーターを正社員として安定的に雇用したのだ。しかし、そんなジブリすら「給料が安い」と批判されることも。
スタジオジブリは、年齢18歳以上、制作に必要な日本語力があることという条件で求人を出した。新人育成前提のため、経験は問わない。3年間限定の契約社員で、月収は20万円。
日本では悪くない雇用条件にも思えるが、海外からは批判が相次いだ。「有名企業なのに20万円って低すぎ……東京で暮らすのは安くないのに……」といったコメントもあった。ジブリ以外の日本のアニメーターの現状がわかれば、海外からさらに強い批判が集まることは必至だ。
疲弊するアニメ業界を救う、新たなビジネスモデルとは
アニメ制作会社の収入高の合計額は増加傾向にあるが、半数近くの企業が減収しているという状況も見過ごせない。
2000年代以降、アニメ制作会社は次々と創業されたが、その多くは自転車操業。安定して受注し続けることができなければ、倒産してしまう。やはり、アニメがヒットしても制作会社に還元されないビジネスモデルそのものに問題があるといえるだろう。
しかし、アニメ業界に詳しい河嶌太郎さんはこう語る。
「製作側が資金調達をし、それをネットの動画の配信に限定して、広告収益も得る形にすれば、低リスクでかつ製作側に直に利益が入ってくる構造になります。新しいビジネスモデルを模索する段階に来ているでしょう」
CGを使用して低予算で制作されたアニメや、クラウドファンディングによる資金調達で制作をした例もあるという。新たな取り組みがアニメ現場に変化をもたらすことを期待したい。
時給500円以下!?アニメーターが直面する”業界の闇”
いかにいいアニメを作ろうと、現場の報酬は増えない。日本のアニメ業界は”ブラック”どころではない。それにも関わらず、アニメーターはより高いクオリティを求められるようになっているという。
東京都の最低賃金は時給958円(2017年10月時点)という状況のなか、時給に換算すると500円以下という状況も珍しくないアニメ制作の仕事。一刻も早いビジネスモデルの改善が求められる。