民主党の「派遣はモノ扱い」発言追及 会合出席者が「揚げ足取りでは?」と異議
廃案続きで「呪われた法案」とも呼ばれる労働者派遣法の改正案に、またケチがつけられた。3月2日の衆議院予算委員会で民主党の西村智奈美議員が、塩崎恭久厚労相にこう問いただしたのだ。
「先ほど大臣は『(派遣労働者を)モノ扱いをするなどということはあってはいけないんだ』という風に仰いましたけれども、実は厚生労働省の中で、大臣の部下がそのような発言をしておられるわけです」
「人材派遣業協会というところの新年会で、この、まさに労働者派遣法の担当者が、こういう発言をしておられます。『これまで派遣労働というのが、期間が来たら使い捨てだったという風な、モノ扱いだった』と」
「こういう認識の中で労働者派遣法の議論をしているんですか? このような考え方を持って労働者派遣法改正案を出してきているとすれば、私たちはとても認めることはできない」
「国民を奴隷だと思ってる」と激しい批判もあるが
これに対し担当課長は、テレビ朝日の取材に「私自身は、派遣労働者の方の声に真摯に耳を傾けてやっているつもりだし、正確に伝わっていないのなら残念だと思っています」と答えていたが、ネット上には発言に対する激しい批判があがっている。
「なんじゃこりゃ、行政の役人がこんな事言ってるなら、それに指導を受ける会社もそうなるのは当たり前じゃろうが」
「官僚の本音が出た。国民を奴隷だと思ってる」
その一方で、「これ今そうだから直さないといけないっていう話なのに、何が悪いんだ」「『モノ扱い』で止まったら問題だけど、『モノ扱い[だった] 』である。今回の改正(案)で改善したと言ってる」などと、追及は揚げ足取りではないかという声もある。
「担当課長の吊るし上げ」や「官僚叩き」は、派遣労働者の待遇を良くすることにつながらないという批判も少なくない。
「民主党は厚生労働省の課長責めるよりも、派遣労働者の待遇改善にもっと熱心に取り組めよ。民主党は役人叩くことが目的化してるぞ。だから民主はダメなんだ」
なお、担当課長の発言は15年1月27日のもの。西村議員はこれを1か月以上もあたためていたことになる。発言のあった会合に参加した人材サービス会社ヒューコムエンジニアリングの出井智将代表は、「これを今取り上げるなんて、よっぽど民主党もネタがないのだと思いました」と首をかしげている。
「派遣社員をモノ扱いのままにしたのは民主党では?」
担当課長の発言は、「これまで派遣労働は期間が来たら使い捨てだったというふうなモノ扱いだったのが、(改正法案で)ようやく人間扱いするような法律になってきたと思う」というのが全体像だったが、西村議員はこの前半のみを引用したようだ。
出井氏も、あいさつを聞く限り、批判されているような内容には感じなかったという。
「この発言は、改正法案が現状よりも、派遣労働者を保護する方向に規制強化されていることの説明の流れで発せられたものです。確かに『ようやく人間扱い』という表現には違和感がありましたが、全体の話を聞いていれば問題発言だとは思えません」
現行の労働者派遣法は、常用雇用労働者を派遣労働者が代替することを防止する法律となっているため、「正社員を守るための法律だが、派遣労働者を守るものではない」。今国会に提出予定の派遣法改正案は、これを見直し、派遣労働者を「労働者」として守ることができるようにしたものであり、その意味で「正社員に使われるモノから、保護される労働者」に変わる――。
発言の意味はそのようなものだったと出井氏は説明する。また、悪質事業者を徹底的に排除して労働者保護を行う、という意味も込められていたと捉えている。
「前政権で、『正社員を守るための派遣法』という方向性を更に強化して、派遣社員をずっと派遣のまま、モノ扱いのままにしようとしてたのは民主党じゃなかったでしたっけ?」
ネットにも、民主党の支持母体は正社員労組の連合なので、ホンネでは正社員の待遇に影響を与えかねない「派遣労働者の待遇改善」に反対なのだろう、という辛らつな批判もあった。国会審議が、働く人をきちんと救う方向で行われることを期待したい。
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