みずほフィナンシャルグループは2021年度下期に、それぞれ総合職、一般職に相当する「基幹職」と「特定職」を統合する。取引のデジタル化による来店客の減少や、機械による事務作業の自動化(RPA)により、一般職を維持する意義が薄れたという。同じくメガバンクの三井住友銀行や三菱UFJ銀行も20年に同様の職種一本化を予定している。
同グループによると、対象になる従業員は約3万5000人。このうち、一般職は約1万3500人と4割近くを占めている。新卒採用については、20年卒はこれまで通り総合職と一般職を分けて採用し、21年卒は未定という。
広報担当「より専門性や高度なスキルが求められる時代になった」
同グループの広報担当はキャリコネニュースの取材に対し、
「(職種統合は)顧客ニーズの多様化によって、より専門性や高度なスキルが求められるようになったことから見直しを決めた」
と説明。RPAやネットバンクの浸透を踏まえ、「事務の効率化を進め、コンサルティング業務により注力する必要性が生じている」という。
さらに、今年10月から従業員の副業・兼業を解禁する。狙いについては
「社内外で専門性を磨き、これまで一般職で働いていた人にも総合職として活躍してもらうことを期待している」
とした。
一般職をなくす動きは「30年前」から始まっていた?
長年、多くの女子学生を採用してきたメガバンクの一般職がなくなるのはインパクトが大きい。しかし、人材研究所代表の曽和利光氏に言わせると、こうした一般職廃止の動きは、男女雇用機会均等法が施行された1986年から始まっているという。曽和氏は
「一般職廃止のニュースが注目されるのがおかしいとまでは言わないが、『今さら』という印象が強い。今までよく一般職がもっていたなと思っている」
と印象を語った。30年前から商社などでは同様の一般職を廃止する動きがあり、以降にできたメガベンチャーでも総合職、一般職といった分け方をしているほうが珍しいようだ。
高度経済成長の中で生まれた一般職は、主に女性を対象とし、総合職のアシスタントのような位置付けで、管理職になることがなく、一般事務やライン作業に従事する人が多い。大企業にいて正社員で働けるケースでは、総合職ほど責任がなく、非正規社員ほど待遇が悪くないことから人気のある働き方だった。
40~50代まで働き続ける一般職社員も 固定費を減らしたい経営層
曽和氏によると、ルールや法律で定められてはいなかったものの、かつては一般職として働く女性は”結婚するまで”に退職するのが暗黙の了解だったという。ところが、現在では女性の社会進出が進み、40~50代になっても一般職で働き続けている人がいるという。
こうした一般職の無期雇用化は、固定費(人件費)として会社経営を圧迫しかねない。そこで、多くの企業では事務作業を派遣社員やアウトソーシングに任せることを進めてきた。最近になって浸透したRPAもそのうちの一つだ。
今回のように銀行で一般職が長続きした背景には、銀行の事務作業には知的作業の割合が高かったことを挙げる。多くの企業の一般事務と比べ、派遣社員やアウトソーシングに任せづらい仕事内容だったことから一般職の廃止が遅れたが、RPAの導入でそれが解決する形となった。
働き方の多様化で「限定社員」が主流になる?
働き方の多様化から、大手商社などでは一度廃止した一般職を復活させる動きもあった。だが、現在は一般職に代わる「限定社員」として雇用するケースが目立つ、と曽和氏は指摘する。
限定社員は、職種や就業する地域を限定した社員のこと。一般職とは異なり、出世してマネージャーに昇進するケースもある。一方、従業員の「何でもかんでも会社の指示(転勤など)に従うのは嫌」というニーズを満たし、優秀な人材を会社にとどめるために登場したという。曽和氏は
「これからはどの業界でも一般職はなくなっていき、限定社員が主流になっていくだろう」
と展望を語った。