プログラミングが人気だ。ハイスキルで高収入、世界のどこからでもパソコン一台で働ける。そんな未来に憧れて勉強を始める人が大勢いる。
子ども向けのプログラミング教育市場も拡大を続けているようだ。その一方で、誰もがプログラミングに向いているわけではない。
プログラミングを学ぼうとしたが、途中で辞めてしまったという学習塾勤務の30代男性Aさんに話を聞いた。(取材・文:はっしー)
「勉強し続けるのはしんどいな」
―― さっそくですが、Aさんがプログラミング学習をしていた時期と内容について教えてください。
「2020年の9月に、プログラミングスクールを受講していました。内容は主にRubyのプログラミングと、Linuxの操作方法です。受講料は月3万円くらいでした。そこは1か月でやめてしまって、2021年の年明け頃から、7万円ほどのウェブ制作の教材も買って勉強していました。結局、そこも1か月ほどでやめてしまいましたね」
―― なるほど、そんなに高額なスクールや教材というわけでもないですし、内容も悪くなさそうですね。そもそも、Aさんが学習を始めたきっかけは何だったんですか?
「きっかけは、プログラマとして海外で働いている人の姿を見たことです。海外で自由に働きたいという希望があったので、プログラミングを学べばそれが実現できるのではないかと思いました。あとはお金も大きな理由です。他の人とだいたい同じ理由ではないでしょうか」
―― 実際にプログラミングを勉強してみて、どう思いましたか? また、なぜ途中で学習を辞めてしまったのでしょうか。
「わからないことが一つ一つわかるようになって楽しいという気持ちが半分、これずっと勉強し続けていくのはしんどいなという気持ちが半分でした。そのまま勉強を続けていけば、高収入の仕事を得られて海外でも働ける未来があったのかもしれませんけど……それはコスパが悪いなと思ってしまったんですよね」
「お金にならないと判断しました」
―― プログラミング学習に区切りをつけたあと、次はウェブ制作も勉強してみたんですよね。そちらはやってみてどんな感想を持ちましたか?
「プログラミングと比べて楽だな?と思いましたね。内容もさくさく進められたし、苦ではなかったんですけど。あまりに簡単だな。これでお金がたくさん稼げるなんておかしいんじゃないか? と思ってしまいました」
「結局は、ウェブ制作を勉強すれば稼げるよ!と言って商材を売ってる人が儲かる世界なんだなってことがわかっちゃったんですよね。友達のためにウェブサイトを作ってもみましたし、勉強は楽しかったんですが、お金にはならないなと判断しました」
スクールの宣伝には「このスキルを身に着けたら月収○○万円も実現可能!」といった過剰な煽りが目立つ。たしかにスクールで学んだことをきっかけにして、転職や収入アップを成功させたひともいるだろう。
しかし実際のところプログラムも、ウェブ制作もそんなに甘い世界ではない。スクールや情報商材でパパッと身につく程度のスキルで「高収入」は得られない。
Aさんも「お金のためだけにやっても続かない」「コードを書くのが好きでないと途中で挫折すると思う」と率直に語っていた。