同検討会がまとめた報告書では、テレワークには時間や場所にとらわれずに業務を効率的に行える側面がある一方、集中して作業に従事した場合は長時間労働になる可能性がある、と指摘。その上で、過度な長時間労働にならないよう注意するとともに、
「労働者が労働時間を過少申告することがないよう、健康管理の観点からも、使用者は労働時間を適切に把握することが重要である」
と注意喚起している。
また、労働時間の管理方法については「例えば、使用者が個々の労働者の仕事の遂行状況を常時把握・管理するような方法は、あまり現実的ではない場合もあり、またテレワークのメリットを失うことになりかねないという点についても留意が必要」と指摘。具体的な管理方法については明記を避け、「労使で話し合ってルールとして定めておくことも重要」と述べる」にとどめた。
さらに、フランス企業の労使交渉で協定締結が進んでいる「つながらない権利」についても言及。業務連絡のタイミングに関する協定で、時間外、休日、深夜など従業員側が「この時間はつながらない」と希望した場合に、企業側が希望を尊重することを定めている。報告書には、
「使用者はメールを送付する時間等について一定のルールを設けることも有効である。例えば、始業と終業の時間を明示することで、連絡しない時間を作ることや、時間外の業務連絡に対する返信は次の日でよいとする等の手法をとることがありうる」
といった記述があった。
このほか、メンタルヘルスの不調を防ぐためにオンライン上で双方向のコミュニケーションを取りやすくすることや、パソコンの配置や照明といった作業環境の整備、またテレワーク実施率が比較的低い非正規労働者についても、円滑に行えるようガイドラインで留意事項を示すべきとした。
「そもそも成果主義にすればいいのでは」とITジャーナリスト
ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、テレワーク中の時間管理について「そもそもテレワーク前から、勤務時間中にサボっている時間はありましたよね」と振り返る。
「私も外回りの営業を6年半やりましたが、1つ目のクライアント先に行ってきて、次のアポまでに時間があれば喫茶店に入ることはありました」
さらに「昼に1時間の休憩を取ったからといって、その他の勤務時間をずっと働いているわけではなかったでしょう」と続ける。では、なぜテレワーク中の時間管理がこれほど脚光を浴びるのだろうか。
「従業員が出社してこないことに対する不安が根底にあると思います」
外回りの直行であっても、昼には会社に戻ってくる。出張の場合でも、定時連絡を入れるように定められることが多い。井上氏は「家から出ていれば”会社の輪”に入っているという安心感があるんです」と話す。一方、テレワークについては
「”ずっと家にいる=会社の輪に入っていない”とみなされているのでしょう。その意味では、日本の会社ってまだまだ村社会なんだなって思いますね」
と印象を語った。
「テレワークによって働き方の価値観が揺さぶられていると思います」と話し、その象徴の一つが勤務時間の穴の表面化だという。働く場所が変わったことにより、求められる成果やそれに対する評価方法が変化してきており、「今までのやり方では、従業員を評価できないと思います」と強調する。その上で、
「そもそも成果主義にすればいいのではないでしょうか」
と持論を展開。テレワーク中の作法を策定することは”キリのない議論”といい、成果によってのみ従業員のパフォーマンスを評価することで議論の必要性はなくなるとした。