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「東北弁・なまりのテープ起こし、お任せください」ニッチ過ぎる企業の生存戦略

ニッチなキャッチコピーが掲載されているのは、日本弁護士連合会発行の「自由と正義」という月刊誌だ。花角代表は「6年ほど前から年に数回掲載していますので、度々取り上げられ話題になっていますね。関心を持っていただけるのは嬉しいです」と話す。

同社は1973年創業、メイン業務は県や市町村議会の議事録の作成だ。議事録作成分野では「東北最大のシェア」だという。仙台に本社を構えるため、依頼主も大半が東北弁ユーザーであり、”東北弁案件”が集まりやすい。

以前、遺産相続に関する音声テープの文字起こしを依頼されたことがあった。依頼人は東京の会社に頼んだが、両親は東北弁で話していた。馴染みのない方言のほか、独特の発音やイントネーションなどのなまりもあるため、非東北弁話者だと聞き取ることすら難しい。そのため同社に仕事が回って来た。

「もしかしたらこういう需要もあるのか?と思い、『東北弁・東北なまりのテープ起こし、お任せください』という広告を掲載しました。以来、年に数件、東北弁がわからないから、という依頼が来るようになりましたね」

現在、スタッフは約70人。東北6県の方言に対応する。方言は旧藩単位で異なっているものの、「同じ山形県民でも山形弁と米沢弁で違いはありますが、お互いの言っていることは分かるので、広くカバーできていますね」とのことだ。

「よく『どんな訓練をされているんですか?』と聞かれますが、みんな東北出身なので生まれた時から分かるんですよ(笑)」

議事録には、基本的に方言をそのまま載せる。地方議会だと言い合いになった際に強い方言が出るため、”東北弁ネイティブ”でないと聞き取るのは至難の業だ。

「ほかに、例えば仙台だと『いずい』という言葉があるのですが、標準語で言い表せないのでそのまま記します。でも、非東北弁話者でも分かるようにして、と求められたら『いずい(しっくり来ない)』とすることもありますね」

音声認識技術が向上しても「最終的に人の手は必要になる」

スタッフはみな東北弁に精通しているが、年配世代の訛りには苦労することもある。「80代の方に東日本大震災の被災者インタビューをした時は難しかったです。年配の方の方言は強いので」。

「年配になればなるほど方言は濃くなっていて、分かる人も限られてきます。私の子どもは小学生なんですがテレビやアニメの影響か、ほとんど標準語です。『お父さんたちの会話がわからない』ということがあるほど。言葉は変わっていっていますね」

訛りの強い東北弁話者は減っているが、だからこそ需要もあるようだ。新しい課題も出てきている。「コロナ禍で地方自治体の議会も増え、仕事自体は増えています。オンライン会議の音声データを文字起こしする仕事も増えましたね」とのこと。

「どれだけ訛っていても聞き取って文字起こしすることはできます。でも回線やマイクの問題などで音質自体が悪いと起こすことができません。これが新しい悩みですね」

また、昨今はAIを使った音声認識の技術向上が目覚ましい。レコーダー機器の発展で速記業務が下火となったように、音声起こしも衰退をたどるのではないか。花角氏は「それでも最終的に人の手は必要になると考えています」と語る。

「スピード感が求められる現在。議会検索システムや議会中継に関する業務も行っていますが、それらと”文字起こし”をどうリンクさせるのか、”東北弁”という特殊な言葉をどう活かすのか。また音声認証など科学技術とどう共存するのかを考えていかなければと思っています」

件の「東北弁・東北なまりのテープ起こし、お任せください」というコピーは、実は何十年前からあったという。

「東北以外の仕事を請け負う時にマイナスになるのでは、と一時期使わなかったんです。でも今では、音声認識との差別化を図るためにも武器になると思っています」

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