引き上げのたびに存在感が増してきた消費税。収入にかかわらず課税されるため、食料品や外食テイクアウトには軽減税率が導入されるなど、不公平感を減らすための仕組みも用意された。しかし、実は制度を詳しく見ていくと「おかしなことが山ほどある」と指摘する専門家もいる。
経済評論家・佐藤治彦氏の著書『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』(亜紀書房)の中から、消費税にまつわる論考を紹介する。
年間だと働いたうち、1.2ヶ月分を消費税に持っていかれる
令和元年10月から消費税は10パーセントに引き上げられました。また、新たに軽減税率も導入されました。食料品や一部の新聞などが税率8パーセントのままに据え置かれ、外食などでもテイクアウトは軽減税率となりました。
消費税は平成元年に3%で導入されて、5%、8%、10%と引き上げられてきました。消費税を引き上げるたびに私たちは、社会保障を守るためという説明を受けてきました。超高齢化社会の年金や医療のために税金がより多く使われるのは仕方のないことかもしれません。
しかし、すでに所得税や住民税を払ってやっと手にした毎月の所得から、物やサービスを購入する時に、さらに10%の税金を取られるのは本当に大変なことです。どの家庭からも同じ10%の税金を払ってくださいというのが消費税です。
分かりやすく言えば、12ヶ月働いてすでに所得税などを払った後に、さらに10%です。つまり、働いたうち1・2ヶ月分。つまり、1ヶ月と1週間分は、消費税に持っていかれるのです。しかし、それほど多くのお金を納める消費税についておかしなことが山ほどあると指摘しておかずにはいられません。
税金は公平、公正でなければならないと思うからです。令和元年に消費税10%へ引き上げがされても、国民の社会保障に対する将来不安は増すばかりです。それでは、消費税を15%、20%に引き上げればいいのでしょうか。
すでに普通の国民にとって限界です。だからこそ、今回の10%への引き上げの時に、食料品などの軽減税率が始まったのです。
家賃なら月100万でも「非課税」
しかし、究極の軽減税率は消費税が始まった30年以上前からあるのをご存知でしょうか。
たとえば、アパートやマンションなど居住用の賃貸住宅の家賃には、消費税がかからない。0%です。家賃は究極の軽減税率です。ビジネスで使う商業用の賃貸物件などには消費税がかかりますし、月極め駐車場や、コインパーキングからも徴収されます。
賃貸住宅の消費税がゼロということは都会の高級賃貸住宅のように、毎月の家賃が50万どころか100 万円を超すものでも、無税なのです。
高級マンションの中には居住者用のジムが併設されている物件があります。家賃にジム使用料が含まれているとジムも無税です。タウンハウスに、駐車場付き賃貸住宅の駐車場も同じです。家賃に含まれていると税金がかからない。
先に書いたように事業者向けの賃貸物件には税金がかかります。たとえば、月の家賃が10万円程度の小規模事業者向けの賃貸物件にも消費税はかかる。
個人向けの居住でも、ウィークリーマンションやリゾートマンションには消費税がかかる。もちろん、ホテルや旅館に定住している場合でも税金がかかる。つまり、1泊2000円の安宿には税金がかかり、毎月の家賃が100万円を超える高級ジムと駐車場付きマンションは消費税ゼロなのです。私は不公平に思います。
同じ住まいでもマイホームはどうでしょう。個人がマイホームを持とうとすると、建物には消費税がしっかり10%かかります。
30年以上の住宅ローンを払い、不動産取引税と毎月の固定資産税なども払う上に、建築費用には消費税がかかるのです。もちろん、不動産屋さんの仲介手数料にも10%の消費税が必要です。
持ち家派が不当に扱われるというか、高級賃貸マンションの消費税が無税なのはどうしても納得がいかないです。たとえば、月の家賃が20万円までは無税、それ以上は10%の消費税を支払うといったことは簡単にできるはずなのです。
家賃は無税で、電気代、ガス代、水道代など人が生きていくのに必要なインフラには10%の税金がかかるのもおかしい話です。
●書籍情報
著者:佐藤治彦
出版社:亜紀書房
価格:1200円+消費税