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20年間蓄積してきたノウハウ、だけど持ち出しはOK 「社員のキャリアをより輝かせるのは経営の義務」

ビービットで事業戦略室長を務める矢部真史氏

“コンサルティング”とは一般的に、課題を抱える企業に対して解決策を示し、その発展を支える仕事を指す。しかし実際に提供する内容やアプローチの仕方は企業によって実にさまざまだ。

ウェブコンサルティング会社として起業し、今では企業が提供するUX改善のためのコンサルティングを提供しているビービットは、徹底した分析とロジカルな思考を重視したコンサルティング手法に定評がある。今回は、事業戦略室で室長を務める矢部真史氏に、同社に浸透する”ビービット流”の考え方について聞いた。(取材:キャリコネニュース編集部)

2021年は「過去にない速度」で成長中

Q.どのような事業を展開しているか。

A.ビービットという会社は元々、事業会社というよりもコンサルティングファームに近い企業として設立されました。コンサルティングとしては、お客様の行動観察やインタビューを通じて、デジタルサービス利用時の問題点や、狙った効果を実現出来ていない原因などを分析し、その分析に基づいてデザインやサービス設計の改善提案をするという仕事をしています。

現在では、そのコンサルティング関連事業が7割くらいを占めています。ただ、2017年には「USERGRAM」というSaaSプロダクトを開発し、我々がコンサルティングで行ってきた分析をデジタル上で行う仕組みを提供しています。ユーザー行動を可視化するという領域で、お客様の動きを一連の流れとして把握し、AI(人工知能)などを使って改善に至るための示唆を容易に導き出すことができる独自性の高いプロダクトです。

USERGRAMを使うと、デジタルサービス上でユーザーがどういう動きをしているかの分析が可能となるので、その結果を使って実際のデジタルサービスを改善し、ビジネス上の成果を実現することが可能です。現在は、累計で400社程度の企業に導入が進んでいます。

一方、USERGRAMはデータを可視化し分析を容易にするツールではあるものの、そこから施策や企画を生み出すためには、まだまだお客様が自ら時間やリソースを割いて対応する必要があります。その際、必ずしも全てのお客様がデジタルサービスの運用経験が十分ではない場合もあります。それに加えて改善を実現するまでに組織におけるさまざまな「壁」に直面する場合もあるはずです。お客様にUSERGRAMの価値を実感していただくためには、やはりサービスの改善が実装されることが必要です。

そこで、こうしたデジタルサービスの改善プロセス全体に伴走し、お客様のビジネス価値の実現までご一緒するために2020年に新たに立ち上げたのが「UXグロースコンサルティング」です。ビービットが長年培ってきた「ユーザー行動に立脚してデジタルサービスの成長を実現させる」というコンサルティングのアプローチを活用し、今最もビービット全体の成長を牽引するチームになっています。「UXグロースコンサルティング」では業務やプロセス改善はもちろんのこと、サービスの提供価値や戦略などの再定義を通じて、お客様のデジタルサービスの成長を一緒に実現していくべく奮闘しています。

Q.直近の業績について。

A.2019年はビービット全体としてグローバルで20億円強の売上でした。2020年は新型コロナウイルスの影響もあり「やや成長」くらいに留まりましたが、2021年はおかげさまでこれまでにないスピードでの成長が実現しています。新たに立ち上げたUXグロースコンサルティングも、本格的な展開は2021年からにもかかわらず、1年も経たずに数億円規模のビジネスに成長しました。

Q.好調の要因についてはどのように考えるか。

A.我々が『アフターデジタル』(日経BP社)という書籍で日本市場に働きかけていることも相まって、デジタルサービスを内製化して継続的に改善していきたいというニーズが拡大しています。こうした企業では、これまでデジタルサービスの改善を代理店やコンサルティング会社などに外注していたため、内製化を進めようとしてもスキルを持っている社員が不足していたり、そもそも「継続的に改善を行うにはどのようにすれば良いか」ということが明確ではなかったりすることが往々にしてありました。従来のコンサルティング企業ではこうした観点で支援してくれることは少なく、我々がそのニーズにカチッとはまった部分はあると思います。

なぜ我々がそのようなニーズにお答えできるかというと、「デジタルサービスを継続的に改善する」という考え方は、元々ビービットが20年ほどコンサルティングを手掛けてきた中心的な考え方だったからです。今回の「UXグロースコンサルティング」というサービスを開始するにあたっては、これまでのビービットのコンサルティングのやり方を一回分解して、理論的に再構成を行いました。この新しいフレームワークのおかげで「こういう風にやれば、デジタルサービスを継続的に改善できるんですよ」ということを単なる経験やカンではなく、論理的にご説明することが可能となりました。つまり、我々がこれまで持っていた知見や能力をお客様の新しいニーズにうまくマッチさせることが出来たことが、成長を後押しした大きな要因だったと思っています。

海外戦略、現地企業と連携模索

Q.伸びている領域、伸ばしていきたい領域は何か。

A.ビービットは日本国内と上海・台湾でビジネスを展開しており、国内と海外では成長を実現するために異なる戦略を展開しています。まず、日本国内ではUSERGRAMの導入をさらに進めることを基本戦略とし、その上でUXグロースコンサルティングによりお客様のデジタル内製化や企業変革を支援していきたいと考えています。この領域では今後数年間は、2桁台後半成長を維持していきたいと思っています。それに加えて、『アフターデジタル』で紹介しているように、大企業のお客様とデジタルで社会を大きく変えるようなプロジェクトを展開していきます。

一方、海外での戦略は現状の売上比率を維持したまま、国内と同じくらいのスピードで成長させる戦略を掲げています。2021年現在では、海外のビジネスはほぼすべてコンサルティングによって構成されていますが、USERGRAM、UXグロースコンサルティングについてもそれぞれの市場のニーズに合う形で展開していき、既存の事務所がある上海・台北に加えて新たな国への進出を計画しています。

海外展開に関しては、既に上海・台北で合わせて40名くらいのコンサルタントが在籍しています。もちろん、日本国内で日本企業向けに開発したソリューションが必ずしもそのまま海外展開できる訳ではありません。企業変革とは、現状の課題やリソースによって「処方箋」が変わるので、お客様のニーズにお応えできる形で提供をする必要があります。

とはいえ、必ずしも当社で全ての開発を完結させる必要があるとは考えてはいません。各国でSaaSプロダクトを開発しているローカルベンダーや、コンサルティングを扱っている現地企業と連携・提携も当然検討しています。UXに関する世界的な盛り上がりを考えると、スピードを上げて展開していくことが重要だと考えています。

例えば、台湾や上海では既に10年くらい事業を展開しているため、さまざまなプレイヤーとのリレーションシップを持っています。その中から適切なパートナーを見つけ出し、海外展開をスケールさせる上でも、パートナー戦略は今後より一層重要になっていくでしょう。

求めるのはアーティストではなく「お客様貢献の視点」

Q.競合他社にはない、御社の独自性はどこにあるか。

A.以前と比べて、今では日本国内だけでも多様なプレイヤーがUXに関するサービスを提供するようになってきました。ビービットはこの流れを牽引した企業の一つであると自負していますが、UXという考え方が一般化してきたのは歓迎すべきことだと感じています。

今ビービットが提供しているUX設計や改善の特徴をお伝えすると、いわゆる「アート的な思考」からデザインを生み出すのではなく、ユーザーの行動分析を通じて論理的にUI/UXを設計するという点があげられます。UI/UXというとしばしば直感やアーティスティックな才能によって設計されると思われがちですが、ビービットの場合はロジカルにUXを設計していく部分が強みだと捉えています。

これは決してクリエイティビティを否定している訳ではありません。ただ、ビービットの場合、例えば「新しい企画をやりたい」といった漠然としたところからスタートするのではなく、ユーザーや事業課題の分析からスタートし、あるべきUXをロジカルに積み上げていくというところを強みとしています。

差別化という観点でいうと、ビービットは創業から20年間、ずっとUXを専業に事業を手掛けてきたことが、すでに大きな差別化ポイントとなっています。仮にこれからビジネスの領域を拡大させるとしても、システム構築やSIerのような動きをすることはないでしょう。これまでの膨大な知見・経験の蓄積と突出した専門性を携え、お客様にとって「UXだけを真摯に考えてくれる会社」であることを目指しています。

一方で、より総合的な提案を求められるお客様も増えてきているのも事実です。そういったご要望に対しては、我々のビジネスパートナーである電通デジタルや経営共創基盤と協働して、お互いがそれぞれの得意な分野を活かしつつ、全体として大きな提案ができるような工夫も行っています。

Q.ロジカルに考えられたUXの利点は。

A.我々のUX設計は「かっこいいことをやりたい」「新しいことをやりたい」が基点にはなっていません。ビービットのコンサルタントは、お客様のビジネスを最大化したり、エンドユーザーにとってより心地よいものを提供することを常に最も重要なことだと掲げています。

我々は、コンサルティングの成果物として「とにかくかっこいいけれど、ビジネスでは役に立たないもの」をお出しすることはありません。ユーザーの行動観察をベースにロジカルに詰めていくので、ユーザーにとって心地よいものであるし、お客様のビジネス成果にもつながるデザインを提供します。一般的に想像されているいわゆる「UXデザイナー」の仕事とはだいぶ違うかもしれません。

Q.御社で働くコンサルタント/デザイナーの志向性は他社と違うか。

アートの部分が秀でた方や優れた能力を持たれた方というのは、自分の「やりたいこと」や「表現したいこと」を明確に持っておられる場合がしばしばあるかもしれません。一方で、我々はそういう欲求はほとんどなく、お客様に依頼された領域において「ユーザーとお客様の役に立ちたい」という思いが大きいです。

コンサルタントとして論理的に「こういうことをやった方がいいですよ」というお話は常に行っていますが、自分たちが満足するために「こんなかっこいいことをしませんか!」という”企画屋”的な側面はありません。このように「常にお客様の成果を最大化することに特化した」部分が、他社とは大きな違いになっているのではないでしょうか。

ビービットという会社は、会社としての個性は際立っていても、個々のコンサルタントに関しては個性ありきの集団ではないとも感じています。ビービットでは領域の「好き嫌い」を主張するコンサルタントやクリエイターはほとんど見受けられませんね。もちろん個人によって業種や課題ごとの蓄積はありますし、個人として取り組みたい案件の希望がある場合には、組織としてその想いを受け止めるということは大事にしたいと考えています。ただ、どのメンバーも顧客志向がとても強い。全体としては、「自分の成果を出すために仕事をしている」というよりも、他者貢献を第一にして仕事をしているメンバーが非常に多いと思っています。

新しい研修体制がスタート ”ビービット流”が社内に浸透

Q.どのような人材が集まってきているか。

A.機能ごとの専門領域(営業、マーケティングなど)は、基本的に過去にその領域で実績を上げている方が多いですね。また、成長期のスタートアップでマネジメントをした経験があったり、ミドルサイズの企業で事業活動をリードされていた方もご入社いただいています。おかげさまで多くの優秀な方にご参画をいただけるようになり、例えば営業であれば、執行役員として上場までをリードした経験を持っている方にも参画していただいています。

一方で「UXグロースコンサルティング」は、コンサルティングファームの経験のみという方は少なく、事業会社とコンサルティング会社の両方を経験し、その結果として「コンサルティング的な能力を事業会社で発揮したい」と考えるようになった方に参画いただいています。

コンサルティングファームには短いプロジェクトを重ねることで多くの経験を積むことができるメリットがありますが、一方で一つのお客様の成長を長くご支援するのが難しいこともあります。ビービットなら、グロース支援(成長支援)というソリューションを通じて「お客様にコミットして長くお付き合いしたい」「デジタルという枠組みの中で、さまざまな経験を積みたい」という方がマッチしていると思います。

Q.ビービットに入社する魅力は。

A.弊社への志望動機を伺うと、我々が持っているユーザー体験分析や顧客理解のスキルに魅力を感じている方が非常に多いですね。中途入社したメンバーに対してはこれまではOJTでの学びがメインだったのですが、今年7月からは座学と疑似プロジェクト、実務プロジェクトを組み合わせて、より効率的かつ早く学べる研修体制をつくりました。

中途入社のマネージャークラスの方も希望に応じてこの研修に参加可能ですので、ビービットが持っているユニークなノウハウやスキルを全ての中途入社の方に身に付けてもらえるようになりました。こうした研修体制に関しては、かなり手厚いという自負があります。

Q.実際に研修を受けてみた感想は。

A.ビービットのコンサルティングは独自の手法で提供されているので、理解するまで時間がかかるのも事実です。ただ、現在ではそれを体系立てて教えることが可能になりました。学ぶ順番も考えられていて、「ここを知ったから、次はここを知りたい」というタイミングで研修が設定されているので、業務に必要なプロセスをスムーズに理解できるはずです。

また、メンバー間で「全員が統一した知見を持っている」というのも良いポイントとだと自負しています。「この人はこういう考えなんだな」「この人はこう捉えているんだな」という個人ごとの差があまりないので、一人一人の意見に振り回されることもないでしょう。

「会社として何を伝えたいか」がしっかりしていることと、研修担当者が共通認識を持っていることが、ビービットの教育体制の良い点だと感じています。研修を受けていてストレスに感じることがなかったのが、その魅力を表していると思います。

Q.御社のノウハウを持ち出して独立する人はいないのか。

A.独立するメンバーも結構いるんですよ。むしろビービットで学んだスキルを駆使して、個々人にとって良いキャリアを築いてほしいと考えています。

もちろん大前提として、ビービットで長く働き続けてほしいと思います。しかし、これはどちらかというと私のポリシーに近い部分なのですが、ビービットに来る人は現状では中途入社の方が多いのに、その方々に対して「2社目の会社にはずっといてください」というのはちょっと理不尽なお願いなんじゃないかなと思うのです。経営としては一人でも多くの方に長く働いていただきたいですが、一方でその社員がポジティブに次の選択をするということも想定すべきですし、仮にその選択をするなら静かに応援したいとも思っています。

言い換えれば、社員のキャリアが輝くようにするのは、受け入れる経営者の義務だと考えています。実際に、転職面談の中では「あなたはうちの会社に来ると、こういうキャリアパスがあって、もし望むのであればこういう会社に将来的に行くこともできるはずですよ」というお話もしています。

このような話は現在の転職市場で魅力的な人材を採用するために必要ですし、会社としてもやるべきことだと思っています。もちろん、こうした優秀な方が弊社に来たいと思ってもらえる状態を作り、かつビービットで個々の市場価値を上げることができる環境を作っていかなければいけないとも考えています。その上で目指したいのは、ビービットに入社した方に長く活躍していただくということですね。

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