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まるでRPGのダンジョン Uber配達員がタワマンを敬遠する理由

タワマン画像

写真:飯配達夫

Uber配達員が、タワマンには行きたがらないという話があるが、それは本当の話。理由は単純に「儲からない」からだ。

Uberの配達報酬は、基本的に店から届け先までの移動距離で決まる。足止めを食っている時間が長いと、時間ばかりかかってちっとも稼げない。そして、タワマンはその「トラップ」がちょっとばかり多すぎるのだ。順番に説明しよう。(文:飯配達夫)【連載第16回】

(1)正面から入れる……と思ったら。

タワマンには通常、表玄関(いわゆるエントランス)と業務用の裏口がある。どちらから入ればいいのか、行ってみるまでわからないケースが多い。オフィスビルとか商業施設と一体化しているタワマンなどでは、マンションの入り口が目立たないケースもままあるのだ。

コンシェルジェがいるようなタワマンでも、正面玄関からすんなり入れてくれる場合もある。しかし、エントランスホールに管理人室的な場所がなくても、業務用の搬入口を通るように言われるケースもある。どこを通るべきかは行ってみるまでわからない。

(2)隠しダンジョンの入り口かよ。

さらに「警備室で受け付けて」と言われたとしても、警備室がどこにあるのかパッとわかるケースばかりではない。便利な地図アプリにも「入り口」とか「警備室」までは表示されない。入り口が地上ではなく地下駐車場の奥に存在する場合もある。こうなると、もう隠しダンジョンの入り口を探す気分である。

(3)専用アイテムが必要な場合も。

さて無事、警備室にたどり着くと受付が待っている。業務用のエレベーターを使うために「専用のカードキー」が必要な場合もあって、そのときには受付手続きに手間取る。氏名や業者名、それから連絡先や行き先を書いたり、ときには身分証をチェックしたりと時間がどんどん過ぎていく。

(4)マンションの裏側は迷宮そのもの。

さらに業務用のエレベーターがわかりやすい場所にあるとは限らない。表通路と違ってマンションの裏側は大昔のRPGダンジョンそのものだ。

壁と見分けがつかないような地味なスタッフオンリーの扉をいくつもくぐり抜け、何度もくねくね曲がった末、ようやく業務用エレベータにたどり着くという物件もある。当然ながら、オートマッピング機能はない。ぼーっとしていると帰り道もわからなくなる。

(5)エレベーター順番待ちもある。

そしてほとんどの場合、大型タワマンでさえ業務用エレベーターは一基しかない。そこにペットをつれた住民、ロードバイクを押した住民、そして宅急便業者や他社のフードデリバリー配達員……などが乗り合わせる。

通常のビルならいざ知らず、タワーマンションは文字通り高層だ。40階建て、50階建てなどざらである。当然エレベーターの待ち時間は長くなる。そうこうするうちに次の注文が入ってくるが、エレベーターが来る気配は露ほどもない……。まあ、こんな調子である。

報酬が全然見合わない。

Uber配達員は、配達件数に応じてインセンティブ(ボーナス報酬)がもらえるので、誰もが1件でも多く配達したいと考えている。

Uber配達員がもらえる報酬は配達1件あたり500円ぐらいが目安だ。注文を受けて店で料理を受け取るまで15分、タワマンまで10分で行けても、初めてのタワマン内で20分かかるなんてのはザラなのだ。500円の配達に45分かけていたら最低賃金未満である。

たとえば入り口を発見するのに4分、受付して業務用エレベーターにたどり着くまでに3分、上りエレベーター待ちで5分、料理を渡すのに1分、下りエレベーターで5分、受付でカードを返して脱出するまでに2分でも20分だ。

「タワマンは効率が悪すぎる」という声が届いたのだろうか。今年に入って計算方式が変わり、報酬に配達時間も考慮されるようになった。とは言え、それとて充分報われるほどではない。

じゃあ、なんで配達を引き受けるのか? それも単純で待機しているよりはマシだからだ。タワマン住民は富裕層なので、Uberのオーダーがけっこう多い。路上で手持ち無沙汰にしているよりはと、注文が割にあわないのを知りつつ引き受けてしまうのである。

ああ、タワマン。それは現代社会の罪を象徴する、現代のバベルの塔なのかもしれない。

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