男性は当時の職場を「とにかくキツイ仕事で、時給は最低賃金に気持ちチョイ乗せ程度で、仕事量と対価が割に合いませんでした」と振り返る。
「飛行機が到着して折り返し出発するまでの時間は約60分だったので、この間に到着便から荷物を下ろし、すぐに出発便の荷物を積むという、とにかく時間に追われる作業でした。気象状況などにより到着が遅れると更にバタバタして、修羅場と化します。体調やお腹の調子が悪かったりすると、変な汗をかきながらの作業を強いられる過酷な環境でした」
作業は1班10名のグループで行われていた。班によっては嫌がらせをする人もいたが、男性の班は親切丁寧で的確なアドバイスをしてくれるメンバーばかりだったという。時間に追われる過酷な状況でも、達成感を感じる瞬間があった。それが「出発機の見送り」だ。
「自分達が作業した飛行機が滑走路に向かうため、目の前から動き出す時に、客席の窓を前から後ろまで順に見つつ手を振ると、手を振り返して下さるお客様を見るのが楽しみでもありました。それ以外は良い面がなく。有期雇用、つまり雇用期間が満了したら続けたくても辞めなければならないという事実を知りました」
有期雇用は時給「社員には許されているマイカー通勤が不可」
有期雇用の期間は5年だった。
「仕事をしていると1年なんてあっという間に過ぎてしまいませんか?仕事に慣れてきて逆に新人に指導する立場に来た頃に、『是が非でも辞めなければならないのは如何なものか?』と考えました」
過酷な仕事内容に加え、時期が来れば必ず辞めなければいけない環境。しかも有期雇用の待遇はアルバイトと同じだった。
「給与計算は時給。社員と全く同じ勤務をこなすのに、社員では許可されているマイカー通勤が不可。早朝勤務や遅番勤務では、当時田舎に住んでいた私には公共交通機関の本数が乏しかったため大変な思いをしました。身内に空港まで送迎してもらったり、時にはマイカーで行き空港周辺に点在している有料駐車場に駐めてました」
過酷な上に頑張っても報われないのでは、辞めたくなるのも無理はない。結局、男性は5か月で退職した。現在の心境をこう綴っている。
「飛行機好きにはたまらない仕事ではありますが、あれだけ好きだった飛行機がそれ以来嫌いになり、今では乗るのも嫌になり、時間がかかっても新幹線やフェリーで移動するようになりました。二度とやりたくない仕事です」