「人事部長と、常務、会長の3人が面接官でした。主に部長が質問し、常務と会長は私が答えた内容について深堀りする形でした。常務は会長の娘さんのようで、会長の長い話を程よく切ってくれました」
と面接を終えた時点での感触は悪くはなかったようだ。翌日エージェントから電話があり、「採用したいのだが、建築事務所ではなく、その会社が経営している老人ホームの総務課長としての仕事になる」と告げられた。
「老人ホームの改善をしてほしいということで、面白そうだと思い、会社に入りたい旨を転職エージェントに伝えました」
と採用が決定した。エージェントから「何か聞いておきたいことはありますか?」と連絡が来たため、「国際結婚をする予定なので、有給休暇をまとめて取ることは可能でしょうか?」と聞いたという。
「フィリピン人の婚約者がおり、就職したのちに結婚する予定で、相手の家族に会いにフィリピンへ旅行する計画を立てていたためです」
エージェントからは「1週間ほどまとめて取ることは可能なようです」と返事が来て、その時には何も言われなかった。しかし、後日その老人ホームに見学に行ったところ
「入ってすぐ常務の方に、『ちょっと国際結婚のことで話があります』と言われました」
と謎の呼び出しをされた女性。茶室に入ると、会長からこんな叱責を受けてしまう。
「『国際結婚なんて大事なことなんで最初に言わないんだ!相手は何の仕事をしてるんだ?会社名は?』などと結婚相手の個人情報を聞かれた挙句『君みたいな有名大学卒とよく分からん配管工じゃ釣り合わないじゃないか!親は何て言ってるんだ?』などと要らないお節介を述べられました」
女性は旧帝大卒で、「結婚相手は技能実習生として来日し、配管工として働いていました」ということだった。会長の暴言に近い叱責はこれにとどまらず、女性はある決断を迫られることになる。【後編へ続く】