「採用における自社の強み」とは、言い換えると、求職者にとってその会社を選ぶ理由です。実は多くの企業が、求職者にとってその会社を選ぶ理由を明確化できていないのが現状です。ではなぜ、多くの企業が自分たちの採用における強みを言語化できていないのでしょうか。それには主に2つの理由があります。
(1)自社にとって当たり前になっている
求職者にとっては非常に魅力に映ることであったとしても、自社にとってはあまりにも当たり前で、魅力とすら思っていないことがあります。
ある投資型不動産会社の営業職の募集の例を挙げます。その会社はインセンティブを含めた給与水準が自社の魅力だと思っていました。しかし業務内容を聞いていくと、投資型不動産にしては珍しく、新規営業を一切行わず、紹介や既存顧客へのアプローチのみを行うという営業手法でした。給与水準は、青天井の給与を出すことが多い業界内では特筆すべきものではなかったのですが、この「新規営業を行わずにその給与が貰える」というのが何よりの魅力だったのです。ところが、その営業手法がこの会社にとってはあまりに当たり前になっており、自分たちの強みに気づいていませんでした。
(2)求職者のニーズを知らない
今、就職市場、転職市場で動いている学生や社会人のニーズを知らない、というケースも見受けられます。当たり前ですが、企業が就職活動中の学生や転職活動中の社会人に会う機会は、自社の面接がほとんどです。採用活動をかなり積極的に行っている企業を除けば、月に接触できる人数は数名程度でしょうか。そんな中で、求職者が求めていることを正確に把握し、そのニーズに合わせて自社の強みを的確に発信するのは非常に難しいことです。
例えば、あるデザインエージェンシーでは、フルリモート・フルフレックスで勤務できるのですが、採用において1つの武器程度に考えていました。しかし、このフルリモート・フルフレックスという条件は、デザイナーやエンジニア職の求職者に非常にニーズがあり、この条件だけで大きく採用戦略が変わるほど、重要な要素であることは理解されていませんでした。実際、フルリモート・フルフレックスを打ち出した求人原稿に変更したことで、応募者数は激増し、社員数は半年で2倍を超えるほどの採用成功に繋がりました。
自社の社員に入社理由や魅力を聞いてみよう
これら2つを解消し「採用における自社の強み」を明確にするには、どうしたらいいのでしょうか。もちろん、採用コンサルティング会社に依頼するのも1つでしょう。ただ費用も掛かる手法のため、検討が必要です。
そこで費用をかけず、手っ取り早く最も効果があるのは、
「なぜ自社に入ったのか?なぜ続けているのか?」
と社員に聞くことです。
社歴が長い社員には、長く続けている理由を聞き、新しく入った社員には「なぜ他社ではなく自社を選んだのか?」を聞けば、そこに「採用における自社の強み」のヒントが隠れています。それらを繋ぎ合わせて言語化していくことで、明確化されていきます。
是非「採用における自社の強み」を明確にして、「自社が考える良い人」と巡り会って頂きたいと思います。