レジで働いていると、領収書の宛名に氏名や会社名ではなく「上(うえ)様」と記載するよう客に求められる場合がある。一般常識ではあるが、学生や社会経験の短い人なら知らなくても不思議ではない慣習だ。
佐賀県の30代前半の女性(事務・管理)は、飲食店で食事をした際に「上様も知らないなんて!」と、レジの若い男性店員に怒りをぶつける中年男性を目撃したという。
「レジの方が男性に『領収書の宛名はどうしますか?』と聞くと、男性が『上様で』と言いました。レジの方は上様を知らなかったようで困惑していました。すると、男性がレジの方に怒りだしました。最終的には店長まで呼び出していました」
「領収書の宛名でそこまで怒らなくても」と思った女性は、「レジの方がこれをきっかけに嫌になって辞めたりしないでほしい」と若い店員を心配する言葉で投稿を締めくくった。編集部は、クレーマーはどのような人物だったか、クレーム発生時の店内の様子はどうだったか、女性に取材することにした。(文:福岡ちはや)
「『従業員に上様も教えないんですね!』と怒っていました」
女性がクレームを目撃したのは7月のこと。平日の夕方17時半頃で、友人と一緒に天ぷら屋さんで食事をしていたときだった。せっかく外食を楽しんでいるのに、店員に怒りをぶつけるクレーマーがいたら、おいしさが半減しそうだ。
「クレーマーの中年男性は1人で店に来ていました。とにかく上様が通じなかったのが気にくわなかったみたいで、10分くらいクレームを言っていましたね。30代くらいの店長が出てきて謝っていましたが、中年男性は店長にも『従業員に上様も教えないんですね!』と怒っていました」
店員が上様を知らないなら、その場で教えれば済む話だ。わざわざ店長まで呼び出して、10分近くもクレームを言うなんて、冷静に考えれば時間の無駄でしかない。クレーマーの中年男性は、よほど虫の居所が悪かったのだろうか。
「そのときお店は空いていて、私たちのほかに家族連れが1組いただけでしたので、大きな騒ぎにはなりませんでした。男性クレーマーが怒っていることには、レジ近くの席の私たちしか気づいていなかったと思います」
女性にとっては災難だったが、ほかの客が気づかなかったことは店には幸いだったろう。結局客は「上様も知らないなんて」と捨て台詞を吐いて出ていったという。
「若い子は知らないことも多いのに、そんなに怒らなくても」
しかし不憫なのは、必要以上に怒られる羽目になったレジの店員だ。女性は「レジの男の子は高校生か大学生くらいのアルバイトさんに見えたので、上様を知らなくてもおかしくないと思います」と気遣った。
「クレーマーが帰ったあと、店長はレジの方に『気にしないでね。こんなお客さんもいるよね』と言っているようで、責めている様子はありませんでした」
食事を終えた女性が席を立つと、若い男性店員は「いつもどおり、にこやかに穏やかに」会計してくれたそう。動揺する様子もなく、普通に見えたとのことだ。彼はその後も働き続けているのだろうか。
「お店は家から少し離れた場所にあり、あれから行っていないので、レジの方がお店を辞めずに続けているかはわかりません……」
また、女性はクレーマーの中年男性に対し、
「もっと周りを見て発言したほうがいいと思います。店内にはほかにも店員さんはいたので、代わって対応してもらえばよかったんです。そもそも、知らないことは悪いことではありません。特に若い子は知らないことも多いのに、そんなに怒らなくても…と思います。あと、すぐに怒ると身体にも良くないですよ」
と助言も送った。たしかにそんな些細なことで怒っていては、血管に負担がかかりそうだ。むやみに怒りをまき散らすのは、周りにとっても本人にとっても百害あって一利なしと言えるだろう。
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