採用面接で暴言を吐かれるなどの信じられない対応をされたという求職者は多いが、女性であるが故に不快な思いをすることもあるようだ。
大阪府の20代後半の女性は、新卒で就活時にとある私立の中高一貫校の社会科の中学教師として採用試験を受けた際、面接中に面接官から
「なぜあなたは女性なのにパンツスーツなのか?」
と聞かれたという。パンツスーツで就活する女子学生はいまどき珍しくない。この質問にどのような意図が込められているのかわからなかった女性は、素直に回答した。
「生徒にもし万が一何かあった際のことを考え、すぐに動けるようパンツスーツを履いてきました」
機能性を重視してパンツスーツを選んだと答えた女性。すると面接官は、日本中の女性を敵に回すかのような言葉を返してきたのだった。編集部はこの女性に詳しく話を聞いた。
「国際的に活躍できる人」を育てる進歩的な校風のはずが……
面接は、事前に学校から指定された授業範囲について、プリントや指導案などを用意し、面接官を生徒に見立てて授業を行うというものだった。当時の女性は大学4年生で、22歳になったばかり。対する面接官は40代〜50代の男女2人ずつだった。
なぜパンツスーツを着ているのかと問われ、理由を答えた女性に対し、次の瞬間、信じられない言葉が返ってきた。
「『女性なら良妻賢母を目指さなければいけない、スカートでなければならない』と言われました。ただ、そう言ってきた40代後半の女性面接官は、あまり身だしなみに気を使われないのか、化粧をされておらず少しスカートにしわが寄っていたのがとても印象に残っており、よく覚えています」
昭和の時代ならまだしも、これは数年前の面接である。女性が驚愕したであろう様子は想像に難くない。
「男女共学にもかかわらず、そのような偏見とも取れることを生徒に教えているのか、もし教えているなら、女性=良妻賢母を目指さねばならぬなんて時代錯誤も甚だしいと思いました」
と息巻くも、当時は「やっと書類選考を通過して採用試験に進み始めた時期だったため、慣れておらず何も答えられなかった」という。
「女性が良妻賢母を目指さなければならない道理はない。キャリアを積むことを最優先にして結婚や子どもを望まない人生を目指したって構わないのでは、と今なら言いたいです。というか、良妻賢母というならもう少しご自身の身だしなみに気を使われた方が旦那様のためにもよろしいのではないでしょうか」
そう毒づきたくなるのも無理もない。さらに、そもそも表向きは保守的な校風の学校でもなかったようで、「国際的に活躍できる人、発信できる人を育てるという校風で、良妻賢母を育成するような雰囲気ではなかった」と訝しむ女性。女性面接官に個人的な思想を押し付けられた可能性もありそうだ。そして、結末を次のように明かした。
「不採用通知がしばらくして届きました。ただ、こういう先生がいるなら学校の先生は向いてない、合わないかもと感じるようになりました」
大学で教育や心理学について学び教員を目指していた女性は、「この採用試験によって傷つき挫折した」と悔しさをにじませた。
結局、女性は新卒でおもちゃメーカーに入社したあと、数社を経て現在は「幼稚園で事務職」をしているという。教員になる夢を諦める羽目になり残念だっただろうが、時代錯誤な価値観を押し付けてくる面接官と一緒に働かずに済んだことはよかったかもしれない。
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