職場内に明らかな待遇の差があると、働く気力も失せてしまう。東京都に住む40代後半の女性は8年ほど前、某通信大手のグループ企業に派遣社員として働き始めたが、たった2週間で辞めたという。
女性は会長、社長もいる役員秘書室での事務サポートとして着任した。求人情報に「昼食は外食でも弁当持参でもOK」となっていたため弁当を持参したところ、秘書室長が案内してくれたのはとんでもない場所だった。
「『ここで昼食をとってください』と案内されたのは、倉庫でした。普段使わないようなホコリまみれの備品やダンボールが積み重なった、衛生的とは言えない環境でした」
一体どんな理由でそんな場所を案内されたのだろう。編集部では当時について女性に詳しく話を聞いた。(文:國伊レン)
「社員の方は社員食堂があるようでしたが…」
配属された秘書室は、40代後半くらいの男性室長1人と男女合わせて8人ほどの秘書がいた。派遣社員は1人だけだったが、最初の面談では室長が職場見学を担当するなど、それなりに手厚い対応をしてくれたようだ。
しかし「ここで昼食をとってください」は衝撃だった。
「とにかくビックリしました。確かにテーブルと椅子はありましたが、私には倉庫にしか見えなかったからです」
全ての秘書がそこで食べているならまだ納得できるだろうが、そうではなかった。この会社は「現在の従業員数は単体で1万2000人程度」の上場企業で、社員食堂も備わっていたのだ。
「社員の方は社員食堂があるようでしたが、派遣には案内がありませんでしたので、使用しませんでした。また、女性秘書の方たちは制服があったので、更衣室やロッカーがあると言っていましたが、わたしにはありませんでした」
制服がないのは仕方ないが、つまり更衣室で昼食をとることも出来なかったのだ。社食があるのにわざわざ倉庫で食事をさせるのは、あまりにも酷ではないだろうか。しかも、女性が待遇差を感じることはこれだけではなかった。
正社員の女性秘書たちは高級ランチへ
昼どきになると、こんな会話に気付いたという。
「5人ほどいた女性秘書たちは、お昼になると役員から『今日、この店行かない?』などと声を掛けられ、お高いランチを食べに行っていました。それに、女性秘書たちが『今日は常務に〇〇をご馳走になった』というような話をしているのを何度か聞きました」
嫌でも扱いの差に気付いてしまったのだ。女性はいつも一人、埃っぽい倉庫で昼食をとっていたのだから、いたたまれない気持ちになったであろう。
「社員の方は社員食堂も使用できていましたし、外食も多いようでした。一度だけ、仕事の都合で外食に出そびれたと思われる女性が、軽食を持ってきて一緒に食べたことはありますが、私はだいたい一人でしたね。倉庫なので空気が悪くて不快でした」
女性が室長に聞いたところによると、女性秘書たちはもともと「役員が部長等だった頃からの部下」で、役員に昇進した際に秘書に引き抜かれたという。つまり役員お気に入りの女性社員たちだったため、男性秘書たちはもちろん、室長すら彼女たちには「異常に気を遣い、何も言えない」雰囲気だったそうだ。
「ほかの会社でも派遣社員として働いた経験がありますが、派遣社員でも休憩室や社員食堂は使用できました。この職場は、何かと派遣社員と正社員で線引きしたがるところでした」
こう総括する女性。普段の仕事では「派遣社員は私一人だったので、まあこんなものかな」とそこまで疎外感は感じなかったというが…
「毎日、不衛生な環境で昼食をとるのが嫌になり、最長2年の雇用契約でしたが体調不良を理由に2週間で辞めました」
その後は税理士法人勤務を経て、現在は商社で経理担当として正社員で働いているそうだ。
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