「マタハラ」に過敏になる人たち 「つらいでしょ? 休んでていいよ」は2割の人が「もう来なくていい、に聞こえる」
少子化対策が進む中、妊娠した女性に対する嫌がらせを指す「マタハラ」に過敏になる人が出ているようだ。1月27日の「白熱ライブ ビビット」(TBS系)。今回の放送ではマタハラの「加害者」が出演し、当時の胸の内を激白していた。
インタビューに応じたA子さんは、土木建築工事の会社で事務員として働いていた31歳の女性。事務員はA子さんを含め3人いたが、そのうちの1人である先輩女性が妊娠した。先輩は産休まで働くつもりだったが、会社に来てもつわりで常に体調が悪い。上司から「仕事を手伝ってあげてほしい」と頼まれたA子さんは、それを快く受け入れたという。
職場イジメに見えるケース。実は「会社の体制」が原因
しかし、実際に先輩の分まで仕事をフォローするとなると、予想以上にキツい現実があった。サービス残業は当たり前、休日出勤すらザラだった。毎日少しずつ積り積もっていくストレスは、いつしか先輩に対する憎しみになり、ついには「流産すればいいのに」とまで思うほどになってしまったという。
「もう顔も見たくなかったですし、そんなに子どもを守りたいなら、仕事なんか辞めちゃえばいいのにって」
怒りでいっぱいになったA子さんは、社長に「なんで私がこんなに負担しなきゃならないのですか! 辞めさせていただきます!」と直訴。その結果、先輩は追い出されるようなかたちで、予定よりもひと月早く産休へ入ったのだという。
マタハラには、個人レベルのイジメのようなものから、会社全体の制度としての問題によるものまである。A子さんのケースは前者にも見えるが、その真相は会社のフォロー体制のなさによるものが大きかったようだ。
産休や育休を前提とした人員配置や、仕事をカバーした人に手当を出すなどしていたら、A子さんも追い込まれずに済んだのかもしれない。手にする給料はまったく変わらず、仕事量だけ増えまくるのはキツい。
無意識のうちに「マタハラ加害者」になるケースも
A子さんの場合は「これはマタハラかも」という自覚があったが、番組では「無意識のうちにマタハラ加害者になってしまう」というケースもあると説明。たとえば、妊娠している人に対する、こんな言葉だ。
「つらいでしょ? 休んでていいよ」
まさか、と思うが、この言葉は言われた側の受け取り方によっては、マタハラになり得るのだとか。よかれと思い、気づかいのつもりでかけた言葉だとしても、人によっては「それって来るなってこと?」と被害者意識を持ってしまうこともあるとのこと。
過敏ではと思うが、MCの真矢ミキも「えぇー? 本気で心配してるだけですよ?」と引いていた。井上貴博アナはこう尋ねた。
「じゃあ、風邪引いてる人に『つらいでしょ? 休んでいいよ』って言うのもダメなんですか?」
これに対し、脳科学者の中野信子は「風邪引くのは2、3日でしょ? 妊娠は9か月続くんですよ」と応じ、「もう来なくていいよ」に聞こえるとコメント。隣に座る弁護士の中里妃沙子も「受け取る側が過敏になっていたら、『もう私(迷惑かけるから)ここ来なくていいんだわ』と受け取りがち」とマタハラ認定していた。
結婚したての女性に「期待してるぞ!」も危ないらしい
しかしふたりとも、ちょっと敏感過ぎやしないだろうか。常に「人は過敏」ということを前提に話さなければいけないのだとしたら、なんて世知辛い社会。悪意のない言葉を、受け取る側が「無神経」と批判しすぎるのもいかがなものか。行き過ぎると「妊婦がそんなにエラいのか!」と吠える昭和のオッサン上司みたいな意見が増えそうだ。
番組を見た視聴者からも「じゃあどうやって声かけたらいいん?ってなる」「気遣いの言葉をどうやったらそういう風にとるのか全く理解できない」という声があがっていたが、街のアンケートでは実に2割の人が「それはマタハラだ」と捉えていたという。
他にも結婚したばかりの女性社員に「期待してるぞ! 今がんばり時だ!」というのもハラスメントになり得るらしい。「子どもを(今は)作らないでね」というプレッシャーに感じてしまう人もいるのだとか。
真矢はやはりここでも前向き。「ワタシは大体この言葉で、宝塚乗りきってきましたよ。こういうのセンシティブに捉え過ぎたら、被害妄想になっちゃう」と言っていた。そしてその横で国分太一は、終始「わからない……」とつぶやいていた。(文:みゆくらけん)
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