翌年、男性がインフルエンザに感染した時のことだ。40度近い高熱で独身寮の部屋に寝込んでいたところ、会社から電話があったという。
「這ってでも出社しろ」
電話口で怒鳴られた。電話を取り次いでくれた寮のおばちゃんも驚いていたという。
「えっ、本当にこれから会社へ行くの? そんなに苦しそうなのに」
熱で意識が朦朧としていたため、どうやって会社へ行ったのかはほとんど記憶にないそうだ。当時の心境について男性は、
「せめて課長と主任にインフルエンザをうつしてやろう」
と、半ばやけになっていたと振り返る。
【前編はこちらから】「俺たちの定時は22時だ」入社1年目で休んだのは正月の3日だけ ベテラン男性が新人時代に目撃した“退職ドミノ”の現場【前編】
「死ぬ気で努力する覚悟が足りん」→「その前にお前を殺してやる」
周囲の状況も深刻だった。ある日、先輩が現場で倒れた。先輩は酒を一滴も飲まないが、「肝硬変寸前」になっており、医師には「ストレス性」と診断されたという。
男性も「そんな環境に長くいると、人の心は少しずつ壊れていきます」と記しているが、あるとき朝礼で主任がこう言った。
「最近の若い奴らは、死ぬ気で努力する覚悟が足りん。この仕事が終わらなければ殺される、そのくらいの気持ちでやれ」
その時、男性のデスクから3つほど離れた席にいた同僚が、小さな声でこうつぶやいたという。
「……そうかよ。でも、その前にお前を殺してやる」
職場でこんな言葉が出ること自体が異常だが、男性は「私ははっきり聞こえました。おそらく主任にも聞こえていたと思います。それほどまでに、皆の精神は追い詰められていたのです」とも書いている。
「お前が前にいた職場な、あそこ潰されたから」
男性が退職して数年後、別の同期から年賀状が届いた。そこには一言だけ書かれていた。
「お前が前にいた職場な、あそこ潰されたから」
男性は「人が減り続け、組織として維持できなくなったのでしょう」と背景を推測しながら、次のように書いていた。
「その頃には、怒りも恨みもほとんど残っていませんでした。ただ、『やはり、あのやり方は長くは続かなかったのだな』と思ったことだけは覚えています」
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【前編はこちらから】「俺たちの定時は22時だ」入社1年目で休んだのは正月の3日だけ ベテラン男性が新人時代に目撃した“退職ドミノ”の現場


