そのとき、男性は良かれと思って少し工夫をした。
「(雪かきが)終わって振り返るころにはもう積もっているような日で、何とか雪を片付けたい私は、よせばいいのに排水溝のグレーチング(80センチ四方くらい)のふたを開け、そこへ雪を落としていました。最初のうちは、排水溝内の水で雪も解けて流れていったんですが、次第に雪の方が多くなったのか、排水溝が見えなくなるほどになってしまいました」
しかし、この工夫が裏目に出て、思わぬ形で自分に跳ね返ってくることになってしまった。
「『雪かきご苦労様、休憩入りなよ』 と、店長に言われてありがたく事務所に戻ろうと足を踏み出したときに、こともあろうか雪で埋もれて見えなくなっていた排水溝に『ズボッ!』とはまり込んでしまいました」
男性は当時の状況をこう綴っている。
「深さもあり、腰くらいまで落ちたのですが、自分が落ちたことで雪の密度が高くなったのか、抜け出そうとしても私の下半身はびくともせず、そのまま身動きが取れなくなってしまいました」
「お店は平均的な郊外型よりは一回り大きな店舗で駐車場も広く、歩道から一番遠い位置で見づらく、店内はBGMがかかっているためか声を上げても届かないようで、だれも来てくれません。雪かきで汗だくだった身体も、次第に体温を奪われガタガタ震え始めました」
「すまん。動けないんで、助けて…」
絶体絶命の状況の中、店舗から後輩が出てきた。
「もがいてももがいても抜けられず、『このままじゃ死んじゃう!』と思った頃、なかなか休憩に来ない私の様子を見に後輩が外に出てきてくれました。
『主任、何やってんですか??』
『すまん。動けないんで、助けて…』
かろうじてそれだけ言うと、後輩が手を貸してくれたのですが、それでも抜けられず、先輩や店長など、大人3人がかりで引っ張り上げてくれました。排水溝にはまってから、15分足らずだと思いますが、体感では何時間もはまっていたように思えました」
散々な目に遭った男性だったが、勤務先が紳士服店で救われた部分もあるようだ。
「何とか助かった私は暖を取る間、縫製係のパートさんにお願いしてスーツを直してもらい、店内で販売されている下着を購入し、帰るころにはすっかり新品に身を包んでいたのでした。この時ばかりは、紳士服店で働いていてよかったと思いました。気が付いてくれた後輩には、後日お礼に焼き肉をおごったのでした」
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