「がんばらない経営」で知られるケーズデンキ 小売に珍しいホワイトな労働環境
『日経トップリーダー』2015年3月号で、当時のケーズホールディングス会長兼CEOで、現在は相談役の加藤修一氏がインタビューで、「本当の意味での『お客様第一』のためには、1.従業員、2.お取引先、3.お客様、4.株主の順番で大切にすることが重要」という考えを、グループの理念として述べている。
もっとも、気になるのはこうした理念が現場にどれほど浸透しているか、ケーズデンキで実際に働く従業員たちの実状の方だが、「週休2日で週40時間の労働は必ずであり、シフト性を採用している。自分の都合が悪い日もあらかじめ前もって申請していれば休みは取得できる環境ではあった」(販売促進 20代後半 男性 300万円)など、キャリコネに寄せられた口コミも好意的な投稿が目立った。
「頑張らない経営=無駄な事はしないが企業理念で上手く経営している。社員としても働くにはいい会社であると思われる。残業事態はほぼない。繁忙期は多少あるが、それでも20時間いくかどうかで会社自体が残業を減らそうとしてくる。労働時間は8時間で長い日で10時間の日がある。休憩は80分で基本的に1回目50分で2回目が30分」(ホールスタッフ 20代前半 男性 450万円)
他社が住宅やリフォームなど新事業を拡大する中、ケーズデンキは家電一筋で郊外型店舗を貫いているのも特徴的。新事業への参入や出店コストの高い都心への進出を控える姿勢には、従業員が無理なく丁寧な接客を行える労働環境を整え、顧客満足度を最大限に引き上げる、という同社の基本方針がよく現れているとも言えそうだ。
「仕事のやりがいはあります。顧客満足度が非常に高い電器屋さんだけあって、親切な接客とサポートがウリです。研修で培った接客を続けていればお客様から感謝される事が増えていきますので仕事の励みになります」(ショップスタッフ 20代後半 男性 250万円)
「家電業界なので、様々な商品があり、覚えて行くのは大変だが、商品の事をマスターしてお客様へ提案し、喜んで貰えた時は本当に嬉しくなる。良い接客をしていれば顧客も付く様になるので、おのずと売り上げも上がり評価も上がって行く」(店舗スタッフ関連職 30代後半 男性 250万円)
「ケーズデンキは柔和で優しい大人の社員さんが多かった」
一方、口コミからはそんなケーズホールディングスも”給与の満足度”はお世辞にも高くはない。しかし、手厚い福利厚生などは少なからず従業員たちのモチベーションに繋がっているようで、高い離職率が業界的課題となっている家電量販店各社にあって、ケーズホールディングスの離職率は業界平均の3分の1ほどという話もあるらしい。
「福利厚生は、いい方だと感じました。サークル活動がありまして、1人につきいくらか補助金が出ます(自分でサークルを作れます)。地方に飛ばされて実家に帰るときには帰省手当ももらえます。社割が効きますので、欲しい商品を販売価格よりも安く買うことができます。もちろん住宅手当も支給されます」(ショップスタッフ 20代前半 女性 200万円)
「私が居た場所は人はとても良く人事の方もすごく優しい方でした。今思うととても優良企業なんだと感じました。残業代も出て有給も取りやすく、持ち株制度等もあり中小企業などと比べると福利厚生はかなり充実していると感じました。違う店舗に行きたいなどの要望も私の場合は応えて頂きました」(ショップスタッフ 20代前半 男性 310万円)
女性の活躍推進や子育て家庭応援制度の整備にも積極的で、昨年7月には大手家電量販店として初めて、女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業に認定される「えるぼし」最高ランクを、さらに男性の育児休業取得率13%等、より高い水準で育児の両立支援を行う企業に認定される「プラチナくるみん」を、それぞれ茨城労働局より受けている。
また、複数の家電量販店チェーンで働いた経験があるという人は次のように書いている。
「色々な店舗にブロードバンドスタッフとして入店しましたが、ケーズデンキは柔和で優しい大人の社員さんが多かったです。パワハラの様な光景も特に無かったです。ケーズデンキはブロバンスタッフはブロバンだけ、『他の仕事はやらないで下さい』と仕事がハッキリしております。本来はそれで当たり前なんですが」(フロアスタッフ 30代前半 男性 300万円)
共働きが当たり前になった時代、ケーズホールディングスの理念に基づいたこれらの取り組みの数々は、今後、ますます注目を集めていくことになるかもしれない。