厚生労働省の資料(2018年)によると、「世帯所得」の平均は551万6000円、中央値は423万円だ。所得額と年収額では単純比較はできないが、年収1000万円は「お金持ち」「高収入」という印象があることは確かだ。しかし所得税は所得額に応じて5%から45%に上がるため、「900万円超1800万円以下」の税率は33%にもなる。社会保険料や所得税等を除いた手取り額は700~750万円ほどだ。
トピックのコメントには、「分不相応な生活をしてるからだよ」など、高収入だとそれなりに高くつく生活をしてしまうが、思っているほどお金持ちではないという冷ややかな声が相次いだ。また、世帯年収1000万円だという方たちからは、
「なんだかんだ税金がエグいんだよ…」
「税金は取られるけど、補助はなし。1000万は微妙なラインだと思う」
「私立高校生がいて年間120万くらいかかる&下の子は習い事2箇所って状態で、旦那1200万でギリギリな感じ」
などの嘆きが上がった。学費は私立や習い事・塾にお金をかければキリがなく、「何にお金を使うか夫婦で価値観合わないと難しい」と書いた人は、「住居は中古マンションで安く済ませて、教育費&学校関係のお付き合いに出来るだけ回すと決めた。(中略)とにかく贅沢は敵だよ」と堅実さを見せていた。
エリート商社マンの妻の苦悩……幸せは年収額では測れない
とはいえ、1人で年収1000万円を稼ぐのは並大抵のことではない。『会社四季報 業界地図』(2018年度版/東洋経済新報社)に掲載された「40歳モデル年収の業界平均」によれば、年収1000万円を超えるのは63業種中「総合商社」(1115万円)と「コンサルティング」(1240万円)のみだ。生育環境もあるだろうが、自分の努力や才覚でそれだけ稼いでいる人は尊敬に値する。
そんな希少な1000万プレイヤーの妻になれればさぞかし幸せなことだろうが、そう単純に言えない場合もある。夫に殺意を抱く妻たちのルポ『夫に死んでほしい妻たち』(小林美希/朝日新聞出版)には、こんな記述がある。39歳の主婦Aさんは、エリート商社マンと結婚し寿退社したが、夫は忙しくほとんど家にいない上に、妻を家政婦扱い。服やバッグは夫も見栄があるようで高級ブランド品を買ってくれるが、
「生活費は申請制で、ママ友とランチに行きたくても却下される。娘の玩具ひとつ買うのだって目的と効果と値段を聞かれ、教育的でないと判断されれば却下だ」
切り詰めて100円ショップで子どもの好きなものを買ってあげたのが見つかると、嫌な顔をしてしつこく咎めるという。いくら夫が高収入といっても、こんな生活は地獄だ。
とはいえ夫も、自分の能力と激務によってこの年収を稼ぎ出しているという自負があるだろう。だが、妻が家庭生活をサポートしているからこその部分には思いが及んでいない。辛い関係だ。ありきたりな言い方になるが、年収額だけで人の幸せは測れないものだとつくづく思う。