求人票に年齢制限を設けたり、年齢を理由に選考の採否を決めることは、法律で原則禁止されている。事業主が年齢に関わりなく、均等な雇用機会を与えなければならないという考え方からだ。
ところが、2月から就職氷河期世代を含めた35~54歳を募集する場合に限り、年齢制限を設けた募集や採用を行うことが可能になった。これに伴い、既に解禁されていたハローワークや求人サイトで「就職氷河期世代歓迎」などの文字が躍る求人が増えている。
だが、どれも職種や年収などの条件が厳しく、ロスジェネ世代が望むような求人は多くない印象だ。(文:ふじいりょう)
ハローワーク、求人の多くが「タクシー運転手」
ハローワークのオンライン版で氷河期世代を積極採用している求人を見ると、圧倒的に多いのがタクシー運転手の仕事だ。だが、タクシーやバスといった旅客の運送目的で運転する場合は第二種運転免許が必要になる。
つまり、ほとんどの人は、試験や講習などを受けて二種免許を取得しなければならない。求人先がこの取得費用を負担するかどうかも要確認だが、そもそも歩合制のケースが多く、キャリアプランを描きにくいタクシー運転手になる氷河期世代がどれだけいるだろうか。
一方、大手求人サイトはどうだろうか。あるサイトでは、就職氷河期世代向けの正社員の求人が700件以上ヒットした。ここで目立ったのは自動車整備士、施工業者、倉庫内軽作業、介護職、ルートセールスといった職種。仕事の内容に関しては、やりがいを見つけて働こうという人もいるだろう。
しかしながら、問題は年収で、200~300万円台がその多くを占める。これまでアルバイトや派遣社員ばかりで、正規雇用で働いたことがない人にとっては職歴になるかもしれないが、ワーキングプアから抜け出せずに早い段階で離職してしまう可能性は低くない。
ハローワーク、職業紹介会社を活用すべし
こういった求人が増えている背景には、政府が本年度の就職氷河期世代支援に603億円の予算を計上し、失業者を正社員として雇用した企業への助成金が拡充されていることがある。
現在、就職氷河期世代向けに求人を出している事業者の中には、この助成金をアテにしている可能性がある。逆に言えば、助成金なしでは人材を入れる余地のない事業規模なのかもしれない。
前述したように給与が低い求人も多く、筆者としては”ブラック”な職場に放り込まれないか心配になる。
ここでピンとくる人は、会社の財務諸表を見るなどして調べてみるだろうが、就労経験の少ない人では見方の分からないケースもあるだろう。Webを見て即応募するのはやめて、直接ハローワークに行って相談員に求人内容を詳しく聞いてみるべきだし、できれば職業紹介会社を通して求職活動をすべきだ。
昨秋に募集が始まった公務員の氷河期世代採用が、軒並み高い倍率になっているのは、安定した身分に加えて、手当や保険が保証されているため、という側面もありそうだ。
公務員に限らず、福利厚生の充実した大企業がこの世代の採用に力を入れるようになるべきだが、現在のところそのような動きはない。それどころか、むしろ40~50代の正社員のリストラといった報道ばかりが聞こえてくる。氷河期世代が求めてやまない安心を得られるかどうか、現状は心もとないというのが正直なところではないだろうか。