「コロナで現場がなくなる」危機感からオンラインの世界へ TikTokライバー桜川シュウの頭の中(前編) | キャリコネニュース
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「コロナで現場がなくなる」危機感からオンラインの世界へ TikTokライバー桜川シュウの頭の中(前編)

スマホさえあれば誰でも手軽に生配信と視聴が始められる「ライブ配信アプリ」の利用者が増えている。2017年にリリースしたPococha(ポコチャ。DeNA運営)は総ダウンロード数が430万件を超え、毎日1000人を超える「ライバー」が配信を行っているという。

ライバーは、ランクに応じた「時給」に配信時間を掛け合わせた報酬や、課金した視聴者からアプリ内で贈られる「投げ銭」などで収入が得られる。このほか、ライバーの影響力を当て込んだ「企業案件」も増えており、趣味や副業を超えて専業で取り組む人も出てきた。そんなライバーの世界を、トップライバー(TikTok LIVEクリエイター)の桜川シュウさんに聞いた。

ニュースを見て「私、働けなくなるんじゃないかな」

桜川シュウ:プロのライブ配信者(ライバー)。月9ドラマ「SUITS/スーツ2」(フジテレビ系)に出演するなど女優やテレビCMモデルとして活躍していたが、コロナ禍を機に芸能事務所から独立しライバーとしての活動を開始。PocochaやTikTok LIVEで活躍するトップライバーとなる。

桜川シュウ:プロのライブ配信者(ライバー)。月9ドラマ「SUITS/スーツ2」(フジテレビ系)に出演するなど女優やテレビCMモデルとして活躍していたが、コロナ禍を機に芸能事務所から独立しライバーとしての活動を開始。PocochaやTikTok LIVEで活躍するトップライバーとなる。

――シュウさんがライバー活動を始めたのはいつからですか。

コロナの感染拡大が始まった直後です。それまで中学3年生から10年以上ずっと女優やタレント、モデルをしてきました。月9のテレビドラマにサブキャストで出たり、テレビCMに出たり。そんなとき2020年の1月か前年の12月に、テレビでコロナのニュースを見て「あれ、私、働けなくなるんじゃないかな」と。

現場に行く仕事はウイルスに感染するからなくなるな、それだったらオンラインだよな、という危機感から始めてみたという感じです。ですからライバーは、私自身がこれまで積み重ねてきたエンタメの最後の逃げ場というか、最後にしがみつく場所でした。

それで2月にPocochaでライブ配信を始めると、おかげさまですぐに人気が出て、1ヶ月も経たずに最速でトップランク、当時のSプラスという最高ランクまで上がりました。おかげさまでそれからずっとS帯(たい)を維持していて、丸3年を迎えたところです。

――ライブ配信では報酬が得られるんですね。

Pocochaには19のランクがあって、Eランク帯は1段階、D~Aランク帯は3段階ずつ、最高のSランク帯はS1からS6まで6段階あります。ランクごとに「時間ダイヤ」と呼ばれる時給が決まっていて、配信時間とかけ合わせて報酬になります。

最高位のS6だと、通常は5,500円。S6の中でも、その日の1位になると16,500円まで上がります。S帯だと一番下のS1でも通常3,000円なので、1日数時間ライブをすれば、それなりに安定した収入が得られるようになります。

――いまから始めようとする人は、どういう感じになるんでしょうか。

一番下のE1クラスの30円から始まり、リスナー数やリスナーから得られた応援ポイントとかコメントで計算された「メーター」によって、その日のライブが評価されます。メーターは-1から+2の4段階あり、合計+3になるとランクがひとつ上がり、逆に-3になるとひとつ下がります。

ですから、1回のライブが当たったからといって一気にS帯に行けるのではなく、19段階のランクをコツコツのぼっていく必要があります。逆に下がるときも一気には下がりませんし、少しお休みしたいときには「おやすみチケット」でメーターをロックできます。

「職業としてのライバー」にこだわり

Pocochaのトップページより

Pocochaのトップページより

――ライバーとして本格的に活動を始めたとき、不安はなかったですか。

もちろんありました。今までやってきた芸能の仕事を全部断ってライブ配信に振り切ったので、これでよかったのかなと。当時ライブ配信はいまのようには流行っていなかったし、「ライバー」っていう言葉も浸透してない。本当に稼げるかどうかも分からなかった。

ただ、テレビのお仕事はもちろん大好きですけど、決められたことをやる仕事なんですね。その点、ライブ配信には自分でクリエイトしたものを届けられるという魅力がある。幸いPocochaですぐに上位になったので、じゃあ頑張ってやってみるかな、と。

――自分でクリエイトできる場としては、当時はYouTubeが全盛期だったと思うんですが、あえてPocochaに全振りしたのはなぜだったんでしょうか。

いま始めればライバーの先駆けになれるかな、と思ったからです。これはPocochaを始めて3ヶ月くらいにできた目標なんですけど、私、ライバーの象徴になりたいと思って。YouTubeにはヒカキンさんとか象徴になっている方ってすでにいらっしゃるじゃないですか。なので、私は自分が素敵なものを作って成功例になれるといいなと思って、ライバーに絞りました。

――他にもライブ配信のプラットフォームがある中で、Pocochaを選んだ理由は。

最も安定して収入が得られるシステムになっているからですね。ライブ配信って趣味みたいに思われがちですけど、私は始めたころから女優やタレント、モデルと同じような「職業にしたい」って本気で思っていたんです。

他のライブ配信ですと、どうしてもその日その日で収入が大きく変動してしまうけど、Pocochaは、先ほども言ったようにメーターで少しずつ上がったり下がったりするので、急に下がることはない。その点、「Pocochaって日本の伝統的な大企業みたい」と思っています(笑)。

ターゲットや配信時間、テーマを緻密に計算

――Pocochaではランクで時給が決まるということは、配信時間も総報酬額に関係するということですね。

そうです。ただ、1日あたり4時間まで、1週間あたり19時間まで、1ヶ月あたり75時間までといった上限はあるので、無限に時給がもらえるわけではありません。それでも1日10時間配信とか、本当に肉体と精神を削るようにしながらやっている人もいます(編註:ライバーの負担を考慮し2022年12月からは1ヶ月の配信時間の上限が導入された)。

私も最初は1日4時間やっていたんですが、だんだん短くしていって今は1日2時間と決めていて、長時間ではない代わりに楽しんでもらうための密度は大事にしています。2時間でも毎日キープしている人はそういないのですが、これも毎日来てくださるリスナーさんのおかげなので本当に感謝しています。

――みなさん毎日どういった配信をしているんですか。

Pocochaは対話がメインの配信アプリなので、リスナーさんたちとの対話をいかに続けていくかが大事です。私が始めたときは雑談枠が中心で、もう本当にまったりと、ライトも照らさず普通にお話ししている方が多かったですね。

Pocochaで本格的なエンタメ配信をしたのは、多分私が最初くらいだと思います。ギラギラしたライトをつけて、全身が映るようにカメラを遠めにして、アングルとかも気にして、昭和のアイドルの衣装を着て歌ったんです。中森明菜さんの歌は15曲、他の代表的なアイドルの歌も10曲ずつは歌えるようにしました。

リスナーさんとの対話も「昭和のあの頃に戻ろう!」みたいなテーマにして。対話に出てきたワードを次回の配信までに調べて、山口百恵さんの引退コンサートのDVDを見たり。ネットを検索して、通学カバンの持ち手に巻いたテープの色が赤だとケンカ売ります、白だと買います、といった話を仕入れたり(笑)。

――それを知っているのは50歳以上でしょうか。ということは、ターゲットは明確におじさんやおねえさんですね。

おじさまたちが多かったですかね。うちの両親も自営業なのですが、同じような人たちが暇な時間帯を考えて18時から20時をねらいました。なぜかというと、社長さんたちが飲みに行く前の時間、あるいはコロナ禍で飲みに出られなくなった時間がそのころなんですね。

私は「投げ銭ライバー」(視聴者からの“投げ銭”での収入を図るライブ配信者)なので、お金をもっている方、会社経営者さんとか、ちょっとご年配の方を対象に、飲みに行く前後の時間帯に配信する。そして昭和ネタで楽しんでもらう。この3つは最初から決めていました。

やりたいのはエンタメ。疑似恋愛してる人は「たぶんいない」

自らの配信を「参加型ひな壇枠」と呼ぶ

自らの配信を「参加型ひな壇枠」と呼ぶ

――そこまでターゲットを戦略的に考えて配信している人は少ないでしょうね。

どうでしょうか。戦略とかあまり難しいことは考えてなくて、私は配信を職業にしたいと考えつつ、リスナーの方にも無理してほしくないと思ったんですよね。この仕事をしていると、ライバーに疑似恋愛してしまったファンの方が、借金してまで貢いで、不幸なことに自己破産なんて話も聞いたことがあったので。

でも私は、もともと芸能の仕事をしていたからというのもありますが、あくまでもエンタメのひとつとして認めてくれる方に支援してほしかったんです。なので、私のリスナーさんで私に疑似恋愛している人は、たぶんいないと思います(笑)。

――先ほどかなり長時間配信しているライバーさんがいると聞きましたが、依存状態になってしまうのでしょうか。

配信しない日はランクメーターがマイナスになってしまうので、ランクを維持するためには毎日配信する必要があるんです(編註:現在は未配信でもランクメーターが変動しない「オフ日」が設定されている)。それ以外にも、自分が配信していないとリスナーが離れていってしまうのでは、と不安になってしまう方もいるようです。

でも私は、1日10時間もリスナーを楽しませることはできないので、2時間と決めたらそれで終わり。その代わり、例えば前日に出た言葉を覚えておいて、それを次の日の配信前にリサーチする時間を取るようにしています。

――そうすると配信のイメージは、深夜ラジオのDJのような感じでしょうか。

テレビのバラエティ番組です。私は自分の配信を「参加型ひな壇枠」と呼んでいるんですが、リスナーさんを含めて、ひな壇芸人の方たちのように話を回していくような感覚です。その中で何か連続的なもの作って、例えば前日に出た内容をより深掘り、翌日はそれをさらに広げてコミュニケーションを取るような感じで展開しています。

先日、アントニオ猪木さんが亡くなったときは、ファンの方に猪木さんのエピソードとか、猪木さんのテーマ曲「炎のファイター INOKI BOM-BA-YE」を教えてもらったりして盛り上がったんですが、次の週には他のプロレスラーさんの入場曲を仕入れて「イントロ、ドン!」みたいなことをやったりしましたね。(後編に続く)

@tiktok_live_japan 第1期LIVE Proに認定された桜川シュウさんにインタビュー‼︎動画最後には衝撃の画面が⁈ @SHU 🌸💄DOLL LIVE 桜川シュウドール配信者 #LIVEPro ♬ オリジナル楽曲 – TikTok LIVE Japan

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