“身にならない本の読み方”のよくあるケースとしては、「単純に『本を読むこと』が目的になっている」というパターンがあります。「年間100冊のビジネス書を読みました!」という学生さんで最も多いのがこのケースです。
こうした人は本から何かを学んだり身に着けたりしようとしない傾向があります。以前、面接で「1年間、3日に1冊のペースでビジネス書を読み、自分を成長させてきました!」という学生がいました。
そこでおすすめの本を聞くと、「前田裕二さんの『メモの魔力』です」と返ってきました。私も読んだ本だったため、どこが良かったのか尋ねると、「メモの取り方で思考が整理され、未来に対しての行動まで考えられるのが衝撃でした」といいます。
しかし、面接終わりの質問タイムで、その学生がメモをとる様子をみると、単純に箇条書きで、本で紹介されている方法ではありませんでした。
本を読んでいるといっても「薄い理解で、考え方まで定着していない」と感じるときもあります。選考のグループディスカッションで、「3C」「4P」「BCGのPPM」「SWOT分析」といったマーケティング用語を連発する学生がいました。彼の履歴書にも趣味はビジネス書を読むこととありました。
その様子を見守っていたのですが、フレームワークの使いどころを間違っていたり、会話の流れ上、言葉の意味が若干ずれた使い方になっていたり……。それらの用語は本を読んで「知っている」という状態だったとは思うのですが、「理解」にまで及んでいません。グループワーク自体も、そのフレームワークのズレた使い方によって崩壊していました。
「本は薬やサプリのようなもの」という学生
一方で、非常に“賢い本の読み方”をしている学生にも多く出会いました。特に秀逸だと思った読み方が、「アウトプットを前提に本を読んでいる」ということです。
学生インターン生を束ねるマネージャー職についている学生を面接したときのことです。誰にもマネジメントの相談をすることが出来ず悩んだそうなのですが、
「稲森和夫さんの『人を生かす』を読んで、そもそもマネジメントとは何なのかという考えを学び、実際に試して壁を乗り越えることが出来た」
という話をしてくれました。
ほかにも何か課題があったら、乗り越えるヒントとして適切なビジネス書を探し、読んでいるとのことでした。「本は薬やサプリのようなものだと思っていて、自分の課題や治したい所がある時に読むようにしています」と答えてくれていたのが、非常に印象的でした。
私自身、ビジネス書はよく読むほうで、幾度となく助けて貰ったことがある大切な武器です。「読書が趣味」という人は、ぜひ本と上手な付き合い方をして、自身の成長の一助として欲しいと思います。
【坂元 俊介】株式会社STORY CAREER代表取締役/キャリアコンサルタント・採用人事コンサルタント
同志社大学経済学部卒。新卒でリクルートHRMK(現リクルートジョブズ)入社。中
途・新卒領域における求人広告媒体の営業に従事、その後、営業として3つの新メディアの立ち上げを行う。リーダーや大手担当を経験。Webベンチャーでのオフィス長経験を経て、30歳になるタイミングで家業の和菓子屋を継ぐとともに、企業の採用コンサルティング会社を立ち上げ、採用人事支援なども行う。リクルートの同期が立ち上げた株式会社STORYの法人化の際に、取締役に就任。大学生・第二新卒層のキャリア支援をおこなうSTORY CAREER事業部の責任者を兼任。2020年4月、STORY CAREER事業部の拡大に、同事業部を分社化、株式会社STORY CAREERの代表取締役に就任。毎年数百名の大学生・社会人のキャリア支援を行っている。