10年目社員の「やりたいことがわかりません……」 そんな部下のキャリア支援、どうやりますか?
そもそもキャリアとは何でしょうか? その語源は「車や馬車の轍」と言われますので、その意味合いから考えると、歩んできた道を振り返ってみるとわかるものであったりします。なので、これまでは「言われた仕事をしっかりとやれ!そうすればお前のキャリアが出来てくるんだ」といった指導をする上司が多かったようです。かつての右肩上がりの時代は、このような指導で部下も納得したかもしれませんが、今は通用しません。
しかし、現代の低成長で先の見えない時代においては、部下が自分自身でキャリアを作る力を支援していくスキルが上司には求められます。やりたいことが分からない部下に対して、明確な目標を見つけられる支援が出来ればベストですが、そこまでは難しいのが現状です。まずは「このやり方をやっていけばやりたいことが見つかって、自分の人生をより良いものにすることが出来るかも」といった感覚を部下に育むことが大切です。
でも、「キャリア支援のことなんか、学んだこともない!」といった管理職が多いのではないでしょうか。キャリアの学びをしたことが無い上司が、キャリアの学びを学生時代に受けている部下を指導しなければならないといった難しい現実が現場にはあります。
MUST⇒CAN⇒WILLの流れでやりたいことに向かってもらう
ではどうすればいいのでしょうか。キャリアの世界では、将来のキャリアをWILL・CAN・MUSTの3つに当てはめながら考えていきます。WILLとは意思ややりたいことであり、CANは出来る事、MUSTはやらなければならないことです。この3点が重なるキャリアを作ることが出来れば、人は幸せな仕事人生を歩むことが出来ると言われます。
しかし、現実は会社におけるMUST、いわゆるやらなければならない仕事に翻弄されていることが多く、自身の理想的なキャリアを見ることが出来ていません。このような中においては、以下のような優先順位で、部下のキャリア支援をしていきましょう。
(1)自身のこれまでの仕事人生の中で、最も活き活きとしていた時の事や成功体験を話してもらいながら自身のWILLを見つけてもらい、これからのキャリアを考えてもらいましょう。なかなかWILLが見つからない人には、WILLに気付くような、サードプレイスへの参加も促しましょう。
(2)自身のこれまでの仕事人生の中で身に付けてきた能力を振り返らせ、どのような仕事に活かしていけるのかを考えてもらいましょう。また、どのような能力をのばしていきたいのかを考えさせることも大切です。
(3)上記(1)と(2)がなかなか出てこないメンバーには、次のような阪急電鉄の創始者である小林一三さんの言葉を伝えてみましょう。「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ」です。目の前の仕事のプロになれば、次の目標が見えてくるといったものです。野球のイチローやタイガーウッズのように、明確な目標がある人の方が稀ですので。
理想的なキャリアを描くには、(1)>(2)>(3)といった順位が理想ですが、実際はなかなか上手くいかないものです。(3)⇒(2)⇒(1)の順で、ステップバイステップでキャリア支援を行っていくことが現実でしょう。
そして、支援をしていく上で最も大切なことは、上司自身が自分のWILL・CAN・MUSTを明確に知り、活き活きとしたキャリアを歩んでいる姿を部下に見せることです。上司自身が、「俺の人生、こんなはずでは……」といった姿では、部下が活き活きとすることはありませんので……。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。