若手の転職が当たり前の時代に優秀な人材を育てる5つのポイント
「思っていた仕事と違いました……」
「将来が見えなくて、続けていく自信が持てません……」
「心身ともに、体調が思わしくなくて……」
管理職として働く人の中には、過去に部下から突然の離職や休職を切り出されたことがある人もいるのではないでしょうか。今回は、このような言葉を急にもらわないために、管理職として部下と日々どのような関わり方をしていったら良いのか考えていきます。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
入社早々に転職サイトに登録する若手たち
厚生労働省が2022年に発表したデータによると、2019年3月に卒業した学卒者の就職後3年以内離職率は、中学卒57.8%、高校卒35.9%、大学卒31.5%でした。産業別に見ていくと、「宿泊業・飲食サービス業」では離職率は49.7%(大卒者)にものぼります。
また、就職してすぐに転職サイトに登録する新社会人も増加傾向にあり、働くことへの価値観の変化が伺えます。一つの会社でキャリアを積みあげて昇格や昇進を目指していく形から、転職や副業などを通じて複数の会社で経験を積み上げ、キャリアアップを目指す形へと変化しているようです。
パーソル総合研究所が2022年10月に発表した調査結果によると、1年以内の転職を検討している正社員が転職先の検討時に重視している上位3項目は「人間関係が良い」(88.3%)、「給料が良い」(87.5%)、「ワークライフバランスを保てる」(85.3%)でした。
しかし、この調査の中で注目していきたいのは、社内での評価が高くかつ昇格スピードも速い優秀人材と言われる人々が重視している項目との違いです。「裁量権がある」(52.5%、差分15.9pt)、「新しいことに挑戦できる」(62.3%、差分11.9pt)、「会社のビジョンやパーパスに共感できる」(72.7%、差分9.7pt)といったことが挙げられており、転職検討者全体と比べると違いがあります。
組織に定着をし、活躍できる社員を育てていきたい管理職の皆様にとって、優秀人材が転職先に求める項目は、マネジメントを進めていく際のポイントになります。
5つのポイントで優秀人材を育てる!
優秀人材が転職先に求める項目から考えると、管理職が部下育成で注力していく必要のあるポイントは、以下の5つとなります。一つずつ具体的な行動に落とし込んでいきましょう。
ポイント(1):裁量権を感じさせる
マイクロマネジメントは、部下の裁量権を奪っていきます。仕事を任せたら、とことん自身で考え抜いてもらいます。「君はどうしたいの?」「君はどうしたら良いと思う?」といったコミュニケーションを繰り返していきましょう。
ポイント(2):挑戦の実感を上げる
ミハイ・チクセントミハイのフロー理論によると、背伸びをすれば届くという実感の中で成果を出し続けることができると、仕事に没頭している「フロー状態」に入ると言われています。部下の能力を見極めながら、丁度いい背伸びが必要な仕事を任せていきましょう。
ポイント(3):組織のビジョンへの納得感を高める
部下を巻き込みながら、企業の理念やビジョンを、3年から5年後の自組織のビジョンに落とし込んでいきます。そして、組織ビジョンをもとに目標を立て、具体的な行動を考えさせていきましょう。
ポイント(4):成果をプロセスと結果で評価していく
部下を信頼して働く時間の裁量権を渡し、1on1面談等で支援しながら、成果に向けたプロセスと結果で評価をしていきましょう。決して、「サボっているのでは?」と考えてはいけません。
ポイント(5):成長の実感値を高める
成長の実感を掴むためには、自身の仕事を振り返りながら成功のポイントを概念化し、はっきりと見えるようにすることが必要です。概念化していくプロセスを1on1面談等の中で支援していきましょう。
以上、優秀社員と言われる方々の転職先への希望項目から、マネジメントに活かしていくポイントをご紹介させていただきました。部下が定着をして活躍できる組織を作っていくために、日々の関わりの一助としてください。