2023年夏から「採用直結インターンシップ」が解禁に! 企業にどんな影響があるのか? | キャリコネニュース
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2023年夏から「採用直結インターンシップ」が解禁に! 企業にどんな影響があるのか?

「ヨソがやってるならウチも!」は危ない

「ヨソがやってるならウチも!」は危ない

大学生等に対するインターンシップに関する方針をまとめた「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(文部科学省、厚生労働省及び経済産業省合意、通称「三省合意」)が、2022年6月に改正されました。

2025年卒の学生向け、つまり2023年、この夏のインターンシップから、一定の基準を満たしたインターンシップで取得した学生情報は、広報活動や採用選考活動の開始時期以降に使用してよいこととなり、人材業界ではこれを「採用直結インターンシップの解禁」と呼んでいます。(人材研究所代表・曽和利光)

人気企業が「5日以上の就業体験インターン」を実施

一定の基準には「就業体験要件」(実施期間の半分を超える日数を就業体験に充当)や「実施期間要件」(汎用能力活用型は5日間以上。専門活用型は2週間以上)などがあります。要は「半分以上就業体験」かつ「5日以上」のインターンシップであれば、採用直結にできるということです。

これを受け、これまでは「採用に使ってはならない」とされていたために本格参入してこなかった日系の大企業を中心に、この夏のインターンシップに注力するところが増えそうです。つまり、人気企業がこぞって「5日以上の就業体験インターン」を実施する可能性があるということです。

そんな中、我が国の企業の99.7%を占める中小企業やベンチャーはどう動けばよいでしょうか。波に乗り遅れるな、とばかりに「三省合意」の条件と同じインターンシップを行おうとしている企業も見受けられます。

しかし、私の意見は「やめた方がよいのではないか」というものです。確かに「5日以上の就業体験インターン」に学生をたくさん集めて実施できれば、そのまま採用プロセスへと流し込むことができてよいのでしょう。

それでも不安視する理由は、そもそもそんなに簡単に「5日以上の就業体験インターン」は実現できない、と考えるからです。それに、仮に企業側でそういう受け皿を作ることができても、学生が来ないのではないかと思うのです。

総活動量が減少する中で、人気企業が就活生を集める

コロナ禍も落ち着いてきた現在、新卒採用の求人倍率はコロナ前並みの1.71倍(ワークス研究所調べ)まで上がってきました。その結果、それほど就職活動を頑張らなくても内定が取れるようになり、学生の就職活動量は軒並み減少しています。

就職みらい研究所「就職白書2023」を見ると、2022年卒と2023年卒を比較すれば、合同説明会や個別企業の説明会への参加数も、エントリーシートの提出数も適性検査の受検数も、軒並み減少しています。

インターンシップの参加に関しては、かろうじて増加(2022年卒が平均6.69社、2023年卒が平均7.82社)しているので、やはりインターンシップなら学生は動くのだろうかと思われるかもしれませんが、問題はその中身です。

確かに学生のインターンシップへの参加率は増加しており、2023年卒では実に75%の学生が参加しています。しかしその内訳を見ると、82.2%が「半日または1日」のインターンシップや1day仕事体験で、「三省合意」の基準を満たす5日以上2週間未満のインターンシップに参加した学生は10.9%にすぎません。

それでも人気企業が「うちは5日のインターンをやりますよ」と集客すれば、多くの学生が参加することでしょう。しかし、就職活動量全体が減少する中で、人気企業の長期インターンに人が集まれば、割を食うのはその他の企業の採用イベントです。

「集客競争」へ安易に首を突っ込むのは危険

「三省合意」によって、この夏のインターンシップはさらなる格差拡大が生まれそうです。人気企業の長期インターンシップに学生が行けば、その分、その他の企業の採用イベントに行く人は減ります。それなのに「自社も採用直結の5日のインターンシップを」と安易に考えるのは無謀です。

仮に実施するとしても、「三省合意」にこだわらず、現在の8割以上の実施形態である「半日もしくは1日」の、従来型のインターンシップを維持した方がよいのではないでしょうか。

「就業体験」というコンテンツも、人気企業の就業体験ならやってみたい学生も多いでしょうが、知名度の低い企業の就業体験をやりたい学生はあまりいません。

やはりこれも「三省合意」の基準を満たしたものではありませんが、学生のためになる教育的コンテンツ、例えば自己分析や会社選び、面接対策等になるようなものを盛り込んだイベントの方がよいのではないかと思います。

まとめますと、激化する今年の夏のインターンシップの集客競争のど真ん中に、安易に首を突っ込むのは危険ということです。

中小企業は「あまり就活をしていない層」に照準を

とはいえ、早期化する採用活動の中で、指をくわえて大手の取り組みを眺めているだけというのも能がありません。もしも何か実施したいと考えるなら、お勧めは上述のように「半日もしくは1日」の「教育的コンテンツ」の「インターンシップ」です。学生への参加ハードルを上げてはいけません。

そして、そこへの集客も工夫しましょう。社員や内定者のネットワークをたどって集客する「リファラル採用」を試みたり、「スカウトメディア」でスカウトメールを打ってみたりするなど、会社の方からアプローチすることで、採用競合の少ない、あまり就職活動をしていない層にもアプローチするのです。

そこまでやるなら、中小・ベンチャー企業にも夏のインターンシップの勝算はあります。くれぐれも「採用直結インターン解禁」の勢いに飲まれないようにご注意ください。

sowa_book【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『定着と離職のマネジメント』(ソシム)、『採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『会社を成長させる新卒採用 戦略編』(クロスメディア・パブリッシング)など。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/

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