凸版印刷のDX:「Erhoeht-X(エルヘート・エックス)」でデジタル変革を支援 高収益化と新事業創出を目指す | NEXT DX LEADER

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凸版印刷のDX:「Erhoeht-X(エルヘート・エックス)」でデジタル変革を支援 高収益化と新事業創出を目指す

90秒でわかるTOPPAN(会社紹介映像) より

凸版印刷は1900年、当時最先端の印刷技術「エルヘート凸版法」の普及を目指して創業された会社です。戦後は総合印刷業として多角化を推進。2023年10月には、グループシナジー最大化とガバナンス強化に向けて持株会社制への移行を予定しています。

現在は大きく分けて、紙の印刷やデジタルコンテンツ、ICカードなどの「情報コミュニケーション事業分野」と、パッケージ印刷などの「生活・産業事業分野」、半導体・ディスプレイ関連製品などの「エレクトロニクス事業分野」の3つの事業を展開しています。(NEXT DX LEADER編集部)

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

新中期経営計画で「事業ポートフォリオの変革」掲げる

凸版印刷の2023年3月期の売上高は1.6兆円。セグメント別売上高(調整前)の構成比は、情報コミュニケーション事業分野が最も大きく53.3%と過半数を占め、生活・産業事業分野は31.3%、エレクトロニクス事業分野は15.4%でした。

一方、セグメント別営業利益(同)は、エレクトロニクス事業分野が42.1%を占めています。営業利益率も同事業が18.9%と最も高く、情報コミュニケーション事業分野は4.8%、生活・産業事業分野は4.5%と低水準で改善が必要です。

凸版印刷は以前よりデジタル技術重視の姿勢を示しており、2021年5月に発表した前中期経営計画では、“TOPPANのめざす姿”を「Digital & Sustainable Transformation DXとSXによってワールドワイドで社会課題を解決するリーディングカンパニーに」としています。

2023年5月に発表した「新中期経営計画」でも、「事業ポートフォリオの変革」に向けて、「成長事業」における「DX/SXでの高収益化と新たな事業の柱の創出」の取り組みを行うとしています。

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

なお、成長事業には、半導体関連事業、国内SX・海外生活系事業とともに「Erhoeht-X(エルヘート・エックス)事業」があげられています。Erhoeht-Xは、祖業の印刷技術エルヘート凸版法にちなみ、社会や企業のデジタル変革を支援するとともに、自社のデジタル変革を推進するコンセプトを表す言葉として使われています。

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

新中期経営計画の利益拡大イメージは、連結営業利益に占めるErhoeht-Xの割合を、2023年3月期の12%から、2026年3月期には25%、国内SX・海外生活系事業や新事業と合わせて過半数の52%とすること。中計の最終年度で連結営業利益1,100億円の達成を目指しています。

成長事業「Erhoeht-X」の中身

凸版印刷は専用ウェブサイトを開設して「Erhoeht-X」のコンセプトを説明。具体的な事業としては、以下の5つをあげています。

  • 「Hybrid BPO」:業務のデジタル化とバックエンド業務支援
  • 「マーケティングDX」:高度なマーケティング支援による顧客課題の解決
  • 「流通・サプライチェーンDX」:商談から企画、販促までの全体最適化
  • 「製造DX」:製造工程のデジタル化による業務効率化
  • 「セキュアビジネス」:金融・公共向けサービスや小売り向け決済サービス

Erhoeht-Xの主軸事業「Hybrid BPO」は、業務請負とシステム運用管理を組み合わせた次世代型サービスです。業務に関するすべてを、アナログ・デジタル双方から、企画設計から運用までトータルソリューションとして対応可能な体制を構築するものです。

凸版印刷では1990年代後半よりクライアントの顧客からの申請受付や問い合わせ対応を行う「事務局業務」などのBPO事業を提供し、コロナ禍においては給付金申請受付事務局の業務を国から請け負ってきました。

「凸版印刷、地方自治体向けに「Hybrid-BPO」の取り組みを 開始」(2021年11月30日)より

「凸版印刷、地方自治体向けに「Hybrid-BPO」の取り組みを
開始」(2021年11月30日)より

2021年11月からは神奈川県相模原市のコールセンターと行政手続きのナビゲーションシステムを掛け合わせたサービスを請け負い、市民に提供しています。凸版印刷の公共BPO本部長の河合功氏はTOPPAN BPOのウェブサイトで、次のように述べています。

「これまでの紙申請などのアナログ型事務局から、DX化によるデジタル型事務局への移行を加速させることが必須と考えています。一方で、ITに慣れていない方々へのケアも必要と考えています。そのためにはデジタル化を進めると同時に、アナログ対応も可能なハイブリッド型の事務局体制を整えています」

「マーケティングDX」については、推進ニーズを持ちながら具体的なプロジェクトとして前に進められない企業の悩みを解消する「DMAP(Digital Marketing Action Pyramid)診断サービス」を2022年5月から提供開始しています。現状のヒアリングを行い、診断結果と課題対応方針、ロードマップを提示します。

自社の製造現場で開発・運用したノウハウを顧客に提供

「流通・サプライチェーンDX」については2022年12月、シンガポール政府投資公社が設立したGLPグループのモノフルが組成するVCファンドに出資・参画。物流に携わるすべての企業がDXや企業連携の恩恵を受けられる「物流エコシステム」の構築に資する物流DXサービスの開発を推進しています。

「製造DX」について、凸版印刷は2019年から製造DX支援ソリューション「NAVINECT」を提供。生産装置や機器のデータをリアルタイムで収集・活用する「NAVINECTエッジ」など、自社の製造現場で開発・運用してきた130ものアプリケーション群とデジタル化のノウハウを活かした製品を提供しています。

「NAVINECTクラウドのご案内-総合編-」より

「NAVINECTクラウドのご案内-総合編-」より

2022年9月には、NAVINECTエッジの「品質管理」パッケージにおいて、ロボットラベラー装置と連携した個体トレーサビリティ機能の提供を開始。基幹システムから受信した生産情報をもとに、製品個々の識別番号を生成してラベルにバーコード等として印字し、識別番号と生産情報や製造装置の各種収集データを紐づけた管理を可能にします。

「セキュアビジネス」については、凸版印刷では証券印刷などで培った高度な技術を活かし、これまで証券類やビジネスフォーム、ICカードなどを提供してきましたが、今後は、ICタグによる自動識別システムの「RFIDソリューション」や、Officeデータや画像などを一元管理する「Toppan Light-DAM」など50以上のデジタル・セキュアソリューションの強化を図ります。

「注力する主要テーマ群」にヘルスケアなど

凸版印刷の新中期経営計画では、成長事業のほか、新事業として「注力する主要テーマ群」をあげ、早期スケールアップによる収益化と、将来の「成長の種」となる新規テーマの多産を創出する事業開発を推進するとしています。

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

主要開発テーマのひとつが「ヘルスケア」で、カルテデータをベースとしたデータ分析事業「ヘルスビッグデータ」や、3D細胞培養による個別化医療・創薬支援事業「バイオテック」、オンライン服薬指導プラットフォーム構築などの「メディカルサービス」の3テーマがあげられています。

新中期経営計画には、新事業「オールトッパンヘルスケア事業戦略」の全体像が描かれており、自治体や医療機関、製薬会社、生活者等に対して付加価値を提供するための、「デジタル(システム、仕組みの設計・開発)」「BPO(現場オペレーション・運用支援)」「データ分析」「コンサルティング」のサイクル型ビジネスモデルを確立するとしています。

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

このほか、新事業の主要開発テーマとして、ToF(反射型レーザー)センサー技術を活用した競争優位なデバイス事業の確立や、MEA(燃料電池用膜電極接合体)の開発による燃料電池市場への参入、自社メタバースプラットフォームの構築や産業・公共向けメタバースサービスの提供などがあげられています。

また、新中期経営計画では「成長を支える経営基盤の強化」のひとつとして、「システム基盤:攻めと守りの両面でのIT基盤強化」をあげています。Erhoeht-Xの拡大を支えるデータ活用基盤の構築や、新ERP運用開始による経営管理基盤の刷新、グループ共通IT基盤の構築に向けて、中計3ヶ年で200億円超の投資を行うとしています。

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

「新中期経営計画」(2023年5月16日)より

「製造基盤」強化の取り組みとしては、「次世代MES(製造実行システム)などの各種製造システム導入による全国製造拠点のスマートファクトリー化」を目指し、中計3ヶ年で年200億円の原価削減を目指すとしています。

「人材戦略」では、成長事業を牽引する人財の育成や獲得等に計画的に取組み、Erhoeht-X従事人財を2026年3月期までにグループ全体で現在の3,000人規模から6,000人規模へ増強を図り、あわせてグローバルキャリア人財の確保を進めるとしています。

YouTube:90秒でわかるTOPPAN(会社紹介映像)

考察記事執筆:NDX編集部

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