オートバックスセブンのDX:全社員を対象に「ITリスキリング」実施 戦略子会社通じてデジタルリテラシー高める | NEXT DX LEADER

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オートバックスセブンのDX:全社員を対象に「ITリスキリング」実施 戦略子会社通じてデジタルリテラシー高める

AUTOBACS BRAND PHILOSOPHY 2023 より

オートバックスセブンは1947年、自動車部品の卸売を目的とした個人経営の末廣商會として創業。1974年に日本初のカー用品のワンストップショップ「オートバックス」の第1号店を出店、翌1975年からフランチャイズビジネスを開始しました。

1979年には100号店を開店。1980年に現社名に変更し、1993年に東証一部上場を果たしました。2023年3月期の総店舗数は670。売上高は2,362億円で、カー用品店業界では2位のイエローハットの1,471億円を大きく上回る首位です。(NEXT DX LEADER編集部)

進化の方向性のひとつに「DXイノベーション」掲げる

オートバックスセブンのセグメントは、売上高の72.7%と営業利益のほぼすべてを生み出している「国内オートバックス事業」のほか、「海外事業」「ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業」「その他の事業」の計4つです。

オートバックスセブンは2023年5月に長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」を策定。グループのパーパス(存在意義)として「社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現」、進化の方向性(ありたい姿)として「「出かける楽しさ」を提案し続ける会社へ」を掲げています。

Beyond AUTOBACS Vision 2023(2023年5月9日)より

Beyond AUTOBACS Vision 2023(2023年5月9日)より

進化の具体的方向性について、6つの項目をあげています。そのひとつが「DXイノベーション」で、「データに基づいた最適なサービスで、『楽しさ』を加速させるモビリティライフのイノベーターへ」進化するとしています。

Beyond AUTOBACS Vision 2023(2023年5月9日)より

Beyond AUTOBACS Vision 2023(2023年5月9日)より

また「チャネルの多様化」を掲げ、オンラインとオフラインの「どのチャネルからも『お客様とのつながり』を持てる場」にするとしています。

そして成長目標として「連結売上高2022年度2,362億円 から 2032年度5,000億円へ」を掲げています。

Beyond AUTOBACS Vision 2023(2023年5月9日)より

Beyond AUTOBACS Vision 2023(2023年5月9日)より

内訳は「既存事業の進化」(連続的成長)に「新たな事業の創造」(非連続のイノベーション)を加えたもので、DX関連としては前者として「DXを活用したコンテンツの進化」、後者として「モビリティ情報のプラットフォーマーへ」があげています。

「人的資本強化」の一環でIT人材を外部採用

オートバックスセブンの「統合報告書2023」には、長期ビジョン実現のための方策として、2つの特集が組まれています。

1つ目は「人的資本強化」で、長期ビジョンを実現するためには「お客様に満足を提供できる人材」「デジタルリテラシーの高い人材」を増やしていく必要があり、「DX人材の育成」に取り組むとしています。

統合報告書2023より

統合報告書2023より

2023年より、ITに関わるメンバーだけでなく、社内メンバーや役員を含めたパネルディスカッションを開催し、「お客様起点による顧客情報基盤を活用した新しい商品・サービス」などのテーマを設けてアイデア出しを行うとともに、最新動向の共有などを通じてIT・DXを通じた自社の可能性について議論を進めています。

2023年6月からは、全社員を対象としてIT・DXのリスキリングプログラムの提供を開始。将来的な高度IT人材を育成し、デジタル技術や顧客データを用いて新たな価値を創造できる集団を目指しています。

加えて、自社に不足する高度な専門性を有するIT人材の外部採用を進め、DXを通じた顧客の購買体験の高度化を実現するとともに、オートバックスならではの価値を提供していくとしています。

2つ目は「既存事業の進化による連続的成長」で、この実現に向けて「ネットとリアルの融合による『小売業の進化』」に取り組むとしています。

例えば、来店した顧客に対し、特定の商品に精通した専門スタッフがオンラインで接客する「オンライン接客サービス」によるカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上や、ECで購入した商品を近隣店舗で受け取ったり(店舗在庫引当)、近隣店舗から発送したりする(ラストワンマイル対策)方法を試験的に導入するとのことです。

統合報告書2023より

統合報告書2023より

富士通との合弁会社を「DX戦略」完全子会社に

「小売業の進化」に向けたもうひとつのDXの取り組みとして、「ユニークデータの利活用によるDX」があります。これはさまざまなチャネルで収集したユニークデータ、つまり顧客のパーソナルデータや車両データを蓄積・統合し、データとデジタル技術を活用することで、顧客の利便性や価値提供を追求して顧客満足向上につなげているとのことです。

また、2023年4月には、カーライフ総合情報サイト「MOBILA(モビラ)」を開設し、メンテナンス履歴の記録ができる「マイカー管理」や、おでかけ情報から宿泊予約までできる「ドライブ・旅行情報」、駐車場やガソリン価格がわかる「MAPサービス」、アウトドア情報やカーライフSNSなどのサービスを提供しています。

こうしたDX戦略における取り組みを強化すべく、2023年4月に国内外のグループを支えるシステムの構築・保守・運用と、先進的な技術によるグループおよび自動車産業のDXを推進する「オートバックスデジタルイニシアチブ(ABDI)」を完全子会社化しました。

ABDIのウェブサイトより

ABDIのウェブサイトより

ABDIの前身は、2022年に富士通(持株比率85.1%)とオートバックスセブン(同14.9%)の合弁で設立されたABシステムソリューション。2023年1月にオートバックスセブンが全株式を取得。DX戦略子会社としてサービスを提供するとともに、デジタル人材の育成を進め、グループ全体のデジタルリテラシーの向上を図るとしています。

YouTube:AUTOBACS BRAND PHILOSOPHY 2023

考察記事執筆:NDX編集部

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