ふくおかフィナンシャルグループのDX:国内初のデジタルバンクを展開 「個人アプリ」と「法人ポータル」起点に既存事業も変革
福岡中央銀行との経営統合告知_ふくおかフィナンシャルグループ「登場 篇」2023年10月ver よりふくおかフィナンシャルグループは2007年、福岡銀行を中心に地銀3行が経営統合し誕生しました。2020年には傘下の親和銀行が十八銀行と経営統合して親和十八銀行となり、2021年開業のみんなの銀行、2023年10月統合の福岡中央銀行をあわせて5行でグループを形成します。
2023年3月期の当期純利益は311億円、セグメントは「国際部門」「公金部門」「個人部門」「法人部門」の4つ。総資産は29兆9242億円(2023年3月現在)で、全国の地銀グループのトップに位置します。(NEXT DX LEADER編集部)
「業務改革」と「営業改革」でデジタルを活用
ふくおかフィナンシャルグループは2023年5月、2030年の長期ビジョンとして「ファイナンスとコンサルティングを通じて全てのステークホルダーの成長に貢献するザ・ベスト リージョナルバンク」を設定しました。
ビジョン達成に向け、信頼をベースに多様化する顧客ニーズにストレスなく応える「サービス開発力」、企業・社会課題を解決する「ソリューション力」、大きく変化する環境・社会課題や働き方に柔軟に対応できる「組織力」を強化していくとしています。
これと同時に、2022年4月から2025年3月までの「第7次中期経営計画~カタチは変わる。想いは変わらない。~」を策定。「業務改革2nd」「営業改革」「戦略系子会社の強化」「新事業への挑戦」を4つの重点取組としています。
このうちDXに関わりの強い取り組みは、「業務改革2nd」における「デジタルチャネルの拡充」および「新たな店舗モデルの試行」、「営業改革」における「営業品質の均一化と顧客ニーズの充足」および「ヒューマンとデジタルの融合」と見られます。
また、新規事業として位置づける“国内初のデジタルバンク”「みんなの銀行」におけるDXに加え、既存事業のDXとして、スマートフォンの「個人アプリ」とパソコンでの「法人ポータル」を起点としたデジタルチャネルの構築を行うとしています。
これらの取り組みにより、2025年3月期には連結当期純利益650億円(対2022年3月期で+109億円)、ROE6%程度(同+0.5%程度)などの目標経営指標を達成していくとしています。
基幹系システムの「刷新」と「次世代化」に着手
ふくおかフィナンシャルグループは2022年11月、「デジタルトランスフォーメーションの推進強化について」と題し、日本IBMと戦略的パートナーシップを締結するとともに、次世代基幹系システムを構築すると発表しています。
パートナーシップについては、「協働体制によりDX戦略を加速させ、コアビジネスの成長を図る」と「デジタル人材の育成、内製化体制の構築、および全体最適なITアーキテクチャーの検討により組織力強化を図る」の2点を重点的に取り組むとのことです。
次世代基幹系システムについては、「DX戦略によるコアビジネスの成長」を実現する最重要インフラと位置づけ、将来の変化に柔軟かつスピーディに対応できるシステムの構築に着手するとしています。
2026年度までの1stステップでは、マルチバンク化、複雑化改善、DX基盤強化(API拡充、データ即時連携)を伴う「基幹系システムのモダナイゼーション」を、広島銀行、日本IBMおよびキンドリルジャパンと共同で実施。2032年度までの2ndフェーズで、最先端技術を活用した「次世代基幹系システムの実現」を達成する計画です。
また、ふくおかフィナンシャルグループはこれまで、情報コンテンツやクーポンなどの非金融サービスの提供を含む新しい金融のカタチを追求し、お金管理アプリ「Wallet+」と情報コンテンツ「mymo」、決済カード「Debit+」の機能を備えるスマホアプリ「iBank」を運営してデータマーケティングを実施。2017年4月にはデジタル戦略部を新設し、既存事業のプロセス改革や新規事業開発に取り組み、コアビジネスの高度化を図ってきました。
2021年5月には、デジタルバンク「みんなの銀行」を開業。銀行ビジネスそのものをゼロベースで刷新すべく、デジタル完結するUI/UXや勘定系システムのクラウド化、アジャイル開発の導入やDXカルチャーの醸成などを進めています。
セルフ化・キャッシュレス化した「軽量化店舗」を展開
ふくおかフィナンシャルグループのDX戦略の基本的な考え方は、「金融を軸とした銀行ビジネスのあり⽅」そのものを変革し、新たなビジネス価値(収益)を創出することを目指しています。ただし、今中計においては、生産性向上を中心に「事務システム改革」や「営業改革」を主な取り組み範囲としています。
「事務システム改革」では、銀行手続きのデジタルシフトによる事務効率化と手続き簡素化、システムの全体最適によるインフラコストの削減を目指し、「営業改革」では、対面営業とデジタルが融合した連続性のある金融サービスを展開し、データ利活用による顧客体験向上や営業品質の高度化・均一化を実現する状態を目指します。
第36回会社説明会資料(2023年5月23日)によると、業務改革の一環として、店頭業務をセルフ化・キャッシュレス化した「軽量化店舗」を福岡銀行で展開しています。
具体的には「高機能ATMによる窓口業務代替」「リモート受付ブースでの遠隔対応」「WEBサービスコーナーでの手続案内」などにより、店頭運営の省人化による人員捻出と成長分野への再配置、事務機器削減によるコスト削減を実現しており、2024年3月期以降に順次拡大を予定しています。
営業改革については、取引先の成長戦略をサポートし、資本支援を含めた最適なソリューションを提供するために、人材育成や体制整備とともに、「DX活用(情報とノウハウの共有)」を行っていくとしており、具体的にはデータの一元管理による営業品質の高度化・均一化を実現する「SFA(営業支援システム)の刷新」に取り組んでいます。
また、新たなビジネス価値創出に向けた「個人ビジネスのDX」については、個人バンキングアプリを刷新し、店頭事務をスマホ完結できるものとし、非対面チャネルの中心ツールの位置づけるとしています。2023年7月には、残高紹介や資金移動をはじめとする基本機能をリリースしています。
「法人ビジネスのDX」については、経営診断機能、オンライン銀行機能などを実装した「法人向けポータル」を2023年4月にリリース。「経営課題と解決策を知る」「経理業務の負担軽減」「銀行とオンラインでつながる」の3つの機能により、顧客リレーションのデジタルシフトを実現するとしています。
開発体制の内製化に向けた人財確保・育成に注力
このほか、ビジネスの成長を支える「組織・人財・風土・アーキテクチャーのDX」として、デジタルと基幹システムが融合したアーキテクチャーを実現し、一気通貫の顧客体験を提供するとともに、「組織整備」や「人財確保・育成」「風土・文化変革」にも取り組むとしています。
特に開発体制の内製化に向けたデジタル人財の確保・育成には力を入れ、中計期間中にビジネス職種の120人増、エンジニア・データ職種の360人増を図るとしています。