イオンは1926年、三重県に岡田屋呉服店として設立。1970年に3社と合併して大阪市に移転、商号をジャスコに変更しました。合併を重ねて事業規模を拡大し、1974年に東証二部上場、1976年に東証一部(現プライム)に指定替え。1983年に本社を東京に移転後も合併、子会社化や子会社上場を進め、現在は15の子会社が上場しています。
2001年に本社を千葉市美浜区に移転し、社名をイオンに変更。2008年に純粋持株会社制に移行し、ダイエーやウエルシアホールディングス、マルエツ、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス、カスミ、キャンドゥ、フジなど大手企業の買収を続けながら、日本最大級の小売業を展開しています。(NEXT DX LEADER編集部)
中計では利益率に軸足を置き「経営効率改善」に注力
イオングループの報告セグメントは7つ。中核となる総合スーパー(ゼネラルマーチャンダイズストア)などの「GMS事業」、スーパーマーケット・コンビニ・ディスカウントストアの「SM事業・DS事業」、ドラッグストアなどの「ヘルス&ウエルネス事業」、クレジットカードなどの「総合金融事業」、イオンモールなどの「ディベロッパー事業」、キャンドゥなどの「サービス・専門店事業」、中国やASEANで展開する「国際事業」となっています。
2023年2月期は、営業収益が過去最高を更新し9兆円台に。段階利益はいずれも増益で、当期純利益は前期比で約3倍に増加しました。2021年2月期と2022年2月期は赤字だった主力のGMS事業のセグメント利益もコロナ前を上回るV字回復となっていますが、グループ全体の対営業収益の営業利益率は2.3%と低い水準です。
セグメント別営業収益(除くその他・調整額)の構成比は、GMS事業が34.0%、SM事業が27.5%、ヘルス&ウエルネス事業が12.0%。一方、同営業利益は、総合金融事業が28.2%、ディベロッパー事業が21.1%、ヘルス&ウエルネス事業が20.9%を占めています。
営業収益の6割を超えるGMS事業とSM事業も、営業利益では2割弱にとどまります。とはいえ、クレジットカード事業やショッピングモール開発・賃貸事業は、小売業やその顧客が支えており、収益性はグループ全体で見る必要があります。
イオンは2021年4月、「2021~2025年度中期経営計画」を発表しました。2030年にありたい姿に“「イオンの地域での成長」が「地域の豊かさ」に結び付く、循環型かつ持続可能な経営”を掲げ、営業収益対比利益率に軸足を置いて経営効率改善に注力するとしています。
5つの成長戦略の筆頭にあげられているのが「デジタルシフトの加速と進化」で、顧客に対しては、店舗とデジタルが融合したシームレスな顧客体験を、社内に対しては、データ・AI・経験に基づく迅速な意思決定を実現するとしています。
英企業とオンラインマーケット「Green Beans」開始
デジタルシフトの加速と進化について、中期経営計画では3つの主要施策をあげています。
1つめの施策「デジタル事業の加速」では、リアルとデジタルの両方を持つイオンならではの強みを活かし、Eコマース・ネットスーパー・オムニチャネルの拡大と、英Ocado社との提携による次世代型EC構築を進めるとしています。
2023年7月には、イオンネクストがオンラインマーケット「Green Beans(グリーンビーンズ)」のサービスを開始。PCやスマホアプリで注文ができ、英Ocado Solutionsとともに最新デジタル技術と機能を活用した買い物体験を提供しています。
英Ocadoは2000年にロンドンで設立されたネットスーパー運営企業で、米国や豪州、スウェーデンの企業とも提携実績もあります。店舗を持たず、オンラインで食料品などの注文を受けて顧客に届けるサービスを提供。中央集約型倉庫と精緻な宅配システムを独自に確立し、英国の業界で最も早い成長スピードを誇っているとのことです。
Green Beansでは、最先端のAIおよびロボティクス機能を導入した日本初の顧客フルフィルメントセンター(千葉市)を物流拠点とし、最大5万品目の商品を品揃え。朝7時から夜23時まで1時間単位で配送対応します。
顧客の手元に届くラストワンマイルは、グループ関連会社が直接雇用するドライバーが手掛け、東京都7区と千葉県5市、神奈川県川崎市(高津区・中原区)を皮切りに、今後1年で東京23区全域へ配送エリアを拡大する予定です。
チームの勤務計画を自動化する「AIワーク」を導入
2つめの施策「店舗、本社・本部のデジタル化」では、セルフレジ導入等による顧客体験の向上や、店舗オペレーションの効率化、業務フロー見直しとデジタル化による効率化に取り組むとしています。
2020年3月から本格展開されているイオンリテールの「レジゴー」は、専用アプリをダウンロードしたスマホなどを利用して、商品のスキャンから支払いまでをセルフで済ませることができるサービスです。
導入店舗では、すでに利用率が20%まで拡大し、レジ関連労働時間は30%削減(2021年3月時点)する効果も。セルフレジは非食品売場へも水平展開しており、顧客が求める非接触と利便性を拡大しつつ、従業員は接客や売り場づくりにシフトできているとのことです。
グループ会社のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスでは、カスミ・マルエツの全店とマックスバリュ関東を含めた500店舗に、スマホ決済サービス「Scan&Go」を導入。加えて、オンラインデリバリーやデジタルサイネージ、セルフPOSシステムのDXソリューションを「ignica(イグニカ)」ブランドで外販しています。
社内業務のデジタル化については2022年7月より、チームの勤務計画を自動化するシステム「AIワーク」と、デジタルサイネージでチーム内の情報共有を行う「MaI(マイ)ボード」の導入を、イオンおよびイオンスタイルの約350店舗において順次展開しています。
トータルアプリ「iAEON」のプラットフォームは中国で構築
3つめの施策「共通デジタル基盤の整備」では、アプリを通じたパーソナライズド販促およびロイヤリティプログラムの進化、顧客データを活用した広告収入など新たな収益源の創出、共通データ基盤構築による利益率改善を進めるとしています。
イオンでは2019年4月に、グループのITソリューション事業を展開するイオンアイビスと共同出資し、中国で「Aeon Digital Management Center(DMC)」を設立。グループ各社の既存システムからデータを受け取り、各社が活用できるイオンスマートプラットフォームを開発しています。
また、イオンでは2021年9月11日以降のイオンカードの支払いで付与される「ときめきポイント」を「WAON POINT」に統合。決済・ポイント・店舗情報などがひとつになったトータルアプリ「iAEON」をリリースしていますが、このアプリもDMCで構築したプラットフォーム上で動いているとのことです。
このほか、専門・機能人材育成として、イオンビジネススクールを基軸にデジタル人材の育成に注力。デジタルアカデミーを通じ、社内育成と中間採用の両方で年間1,000人の人材を育成・確保しています。