大東建託のDX:新戦略で「生活支援サービスの創出」打ち出す データから課題発見できる「DX人材」の育成強化 | NEXT DX LEADER

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大東建託のDX:新戦略で「生活支援サービスの創出」打ち出す データから課題発見できる「DX人材」の育成強化

大東建託グループ 喫茶ミライ環境篇 より

大東建託は1974年、土地の有効活用を目的とした賃貸建物の建築を目的とし、名古屋市に大東産業として設立されました。1988年に現在の社名に変更。1992年に東証一部上場、2001年にはLPガス供給事業や国内初のノンリコースローンに参入するなど、新規事業も展開しています。

2024年3月期のセグメントは、建築請負の「建設事業」、不動産一括借上・仲介・賃貸等の「不動産事業」、建築資金融資等の「金融事業」、LPガス販売等の「その他事業」の4つ。連結売上高は1.7兆円、営業利益は1,048億円のうち、不動産事業の売上高が1.1兆円、営業利益が820億円を占めています。(NEXT DX LEADER編集部)

デジタルで「既存事業」と「働き方」を変革

大東建託は2024年5月、「グループ中期経営計画」を発表。創業50年を契機に次の100年へ向け、グループパーパスを「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定しています。

2030年のありたい姿「VISION 2030」を設け、「コア事業」(建設事業および不動産事業)の領域を拡大するとともに、生活、暮らしサービスなどの「コア周辺事業」を拡充し、高齢化や過疎化、災害への不安などの課題を抱える地域へ安心して豊かに暮らせる環境を提供するとしています。

大東建託グループ×DX戦略(2023年度)より

大東建託グループ×DX戦略(2023年度)より

中期経営計画(2024~2026)の基本方針としては、VISION 2030実現に向けた前半と位置づけ、「人的資本経営の推進」「強固なコア事業の確立」にあわせて、注力分野として「不動産開発事業の拡大」「海外事業への着手」「大東建託グループらしいまちづくり」をあげています。

 

これらの取り組みにより、2026年度には「売上2兆円/営業利益1,400億円/ROE20%」などの財務目標の実現を目指すとしています。

大東建託では2021年7月にDX戦略を策定していますが、「ビジョン2030」の策定を受けて、2023年11月に「2023年度版」のDX戦略を再策定しています。

この中で、グループDX戦略の3つの柱として、「デジタルで今までにない『生活支援サービス』をクリエイション」「デジタルで既存事業(コア事業・コア周辺事業)をトランスフォーメーション」「デジタルで社員の働き方をトランスフォーメーション」を掲げています。

また、これらの取り組みを推進するDX基盤として、「DX人材の育成」「DX基盤の整備」「DX推進の情報発信」の3つにあわせて取り組むとしています。

大東建託グループ×DX戦略(2023年度)より

大東建託グループ×DX戦略(2023年度)より

スペースマーケットと提携した「貸しスペース業」も

DX戦略の推進にあたっては、提供価値実現に向けてさまざまな取り組みや環境整備が行われていますが、主要な取り組みにはKPIや目標値が定められています。

大東建託グループ×DX戦略(2023年度)より

大東建託グループ×DX戦略(2023年度)より

デジタルを活用した今までにない「生活支援サービス」の創出の一例として、2019年からスペースマーケットと業務提携を締結し、レンタルスペース「.room(ドットルーム)」の提供に取り組んでおり、2023年度にはすでに売上高6.5億円、営業利益1.5億円をあげています。

「.room」は都心の駅近物件を改装した多様なニーズに対応できるレンタルスペースで、リモートワークに向いた「個室」やセミナーなどの最適な「会議室」、パーティなどに使える「イベントスペース」、料理教室や女子会などに最適な「キッチン付き」などさまざまな部屋タイプがあり、スペースマーケットを通して予約できます。

大東建託には、個室中心のマルチスペース「いい部屋Space」というレンタルスペースのサービスもあり、こちらは自社の公式サイトや専用アプリから予約できます。

生活支援サービスの2つ目の例としては、大東建託パートナーズが管理する賃貸住宅に住む人向けに提供されているプラットフォーム「ruum(ルーム)」があり、2022年度には利用登録者数が93.6万人にのぼっています。

「ruum」はWEBサービスとアプリで利用可能で、家賃照会や契約更新といった「お部屋に関する手続き」やライフラインの手配などの「暮らしに関するサポート」に加え、ショッピングなどに使えるクーポンなど「暮らしを豊かにする情報」が提供されています。

「AI審査による業務自動化」で年間およそ10万時間を削減

「既存事業(コア事業・コア周辺事業)の変革」の例としては、コア事業における定型業務のデジタル化として、「AI審査による業務自動化」「RPA導入と業務自動化」「定型業務のデジタル化」に取り組んでおり、AI審査により2023年度には9万6,000時間の削減がすでに実現しているようです。

また「IoTプラットフォームの構築」により、鍵管理システムの構築が2023年度で実現しています。提供されているのは大東建託の賃貸住宅ブランド「DK SELECT」の物件で、「環境」「防災」「ライフスタイル」の3つのコンセプトを軸に高付加価値な賃貸住宅を提供しています。

オートロック機能「いい部屋ロック」では、遠隔操作による鍵の開閉や施錠確認が可能に。外出先からでも来客に応答できる「いつでもインターホン」や、スマートフォンで操作できる「いつでも給湯器」などの機能も備えています。

基幹システムのクラウド化で年7億円の削減

コア周辺事業の既存事業の拡大については、「賃貸営業のデジタル化」「オンライン内覧・重説導入」「総合資産プラットフォームの構築」に取り組み、総合資産プラットフォーム「アセトラ(ASSET TRANSFORMATION)」の構築が2023年度で実現しています。

「アセトラ」は、不動産投資から相続対策まであらゆる資産運用をワンストップでサポートする、大東建託グループの総合資産サービスプラットフォームです。

不動産投資や相続税の「AIを活用したシミュレーション」を行ったり、自宅にいながら「オンライン相談」ができたり、契約手続きや各種申請を「オンライン手続き」で行ったりと、デジタル技術の活用を進めています。

DX推進基盤については、2020年度の「テレワーク導入率」が大東建託、大東建託リーシング、大東建託パートナーズですべて導入済。「DX人材の育成」については、DXワークショップの参加者が2022年度には85名、2023年度には700名を目指しています。

大東建託グループのオウンドメディアによると、グループにおける「社内DX人材」は、「データからビジネスの抱える潜在的な課題を発見」「デジタル技術を活用した解決策を発想」「プロジェクトを牽引し改革を実現」の3つの役割を持ち、DXを実現できる人材と定義しているそうです。

大東建託グループ×DX戦略(2023年度)より

大東建託グループ×DX戦略(2023年度)より

「クラウド化によるコスト削減」では、基幹システムの刷新により2025年度までにグループ全体で運用費の7.04億円削減を目指しています。

YouTube:大東建託グループ 喫茶ミライ環境篇

考察記事執筆:NDX編集部

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