三井化学が「DX人材のキャリア採用」で実現したいこと 社外の視点を取り込み「企業変革」を推進 | NEXT DX LEADER

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三井化学が「DX人材のキャリア採用」で実現したいこと 社外の視点を取り込み「企業変革」を推進

三井化学 会社紹介映像 より
(左から)三井化学 デジタルトランスフォーメーション推進本部 デジタルトランスフォーメーション企画管理部 企画グループリーダーの櫻井雅浩さん、同グループ企画担当の平岩菜津子さん、グローバル人材部 デジタルトランスフォーメーション企画管理部HRBPの鳥羽陽子さん

(左から)三井化学 デジタルトランスフォーメーション推進本部 デジタルトランスフォーメーション企画管理部 企画グループリーダーの櫻井雅浩さん、同グループ企画担当の平岩菜津子さん、グローバル人材部 デジタルトランスフォーメーション企画管理部HRBPの鳥羽陽子さん

総合化学大手の三井化学が、DXを基本戦略に置いた長期経営計画を策定している。トップラインの向上や会社全体を変えるCX(コーポレートトランスフォーメーション)実現を目指し、データサイエンティストを中心に積極的にキャリア採用する一方で、社員全体のデジタルリテラシーの向上にも取り組んでいる。

全社をあげたDX推進に取り組む中で、キャリア採用にどのようなことを期待するのか。三井化学のデジタルトランスフォーメーション推進本部 デジタルトランスフォーメーション企画管理部の櫻井雅浩さんと平岩菜津子さん、グローバル人材部兼人事部人材グループの鳥羽陽子さんに話を聞いた。(聞き手・文:水野香央里)

「CX(企業変革)の実現に向けたDX」に取り組む

――現在、キャリア採用を積極的に行っている背景はどのようなものでしょうか。

櫻井 三井化学は2021年に長期経営計画「VISION2030」を策定し、2030年のありたい姿実現に向けた5つの基本戦略のもとで、グループの発展を目指しています。

中でも「DXを通じた企業変革」は、他の4つの戦略実行の土台となるものです。全社・全領域にDXを展開し、会社全体を変えるコーポレートトランスフォーメーション(CX)を実現させるために、全社をあげて取り組んでいます。

三井化学の2030長期経営計画の基本戦略

三井化学の2030長期経営計画の基本戦略

DX推進にあたって、DX Visionを設けました。当社グループ全メンバーによる「データとデジタル技術の活用」を通じて、社会課題解決のために革新的な製品やサービス、ビジネスモデルをアジャイルに創出し、企業・業界・社会の変革をリードすることを掲げています。

DX Visionと4つの基本戦略

DX Visionと4つの基本戦略

このDX Visionを実現するために、4つの基本戦略を実行しています。基本戦略を実行する上でベースとなるのが、基本戦略1である「デジタルリテラシーの向上」で、全社員の基本スキル向上を図るとともに、データサイエンティストなど専門スキルを持った人材育成に力を入れています。

基本戦略2は「業務改革の推進」で、これまで経験と勘といった仕事のやり方から、データに基づく仕事のやり方へ変えていきます。基本戦略3は「開発力の強化」で、デジタルの力を活用して新しい顧客や新しい製品、新しい市場を開発していきます。

基本戦略4は「事業モデルの変革」です。DXをドライバーとして、事業モデル自体をソリューション(課題解決)型、サーキュラーエコノミー(循環経済)型へ変革していきます。このような中で、当社グループのDXを推進する人材を募集しております。

――キャリア採用でもDXの専門性をもった人を重視するということですね。

櫻井 その通りです。デジタルの専門スキルを持った方に、そのスキルを活かして活躍いただくとともに、新しい視点での取り組みに期待しています。

鳥羽 当社は新卒社員が多いと思われるかもしれませんが、当社本体の20〜30%がキャリア採用で入社しています。すでに多くのキャリア採用人材が各部署で活躍していますので、ご自身の経験やスキルを活かしてのびのびと仕事をしてもらえると思います。

キャリア採用組を対象に「化学」の社内勉強会を開催

――具体的にはどのような職種の採用に注力していますか。

櫻井 DX関連システムの導入やプロジェクトを行う「アプリケーション担当」「データサイエンティスト」を募集しています。

アプリケーション担当は、デジタルツールを用いたDXの全社展開を目指して、社内外と協力しながらDX関連システムの導入や業務変革に取り組みます。デジタルツールを通じた業務変革を進め、業務効率の向上だけでなく、新たな事業の創出を促進していきたいと考えています。社内の人的リソースはまだまだ十分とは言えません。ぜひ外部から力を借りて弾みをつけたいと思っています。

データサイエンティストは、市場環境の分析や生産管理の効率化を図る分析など、事業部門や本社コーポレート部門に関わるさまざまな分析・解析を行います。現場とコミュニケーションを取りながら一緒に改革に取り組む熱意のある方に、ぜひ入社していただきたいと考えています。

三井化学のオフィスの様子

三井化学のオフィスの様子

――キャリア採用のDX人材が事業会社で働く際には、その会社の専門性をどの程度身につけている必要があるのか不安な場合があるかもしれません。

鳥羽 キャリア採用は基本的にDX推進に関わるスキルを重視して採用しているので、出身業界は問いません。新しい視点で会社を見て欲しい思いもあるので、製造業の経験があれば歓迎という程度で、化学にこだわらず採用を行なっています。

平岩 化学業界の知識についてはOJTのほか、部内勉強会でフォローしています。キャリア入社した社員に対し、先輩社員が化学に関する勉強会を開催し、会社の事業概要から化学の基礎知識、業務における頻出単語などを解説する場を設けたところ、大変好評でした。

基礎知識の勉強会では、元素周期表といった中学・高校で学ぶレベルから、プラスチックの加工技術といった工業的な知識、当社の主要製品の構造や特徴といったことを、受講者のニーズやレベルに合わせて先輩社員がレクチャーしました。

逆に、デジタルやITに関する基礎知識については、キャリア採用の社員が講師となり、先輩社員が受講することもあります。社内で進められているデータサイエンティスト育成プログラムでも、ITを専門としたキャリア入社組が講師を務めています。

DX人材など「スペシャリスト」の処遇を検討中

――現場社員による化学知識の講義は、DX人材定着の助けになると思います。他に同様な取り組みはありますか。

平岩 IT企業から当社に入社することで、業務環境が変わったと感じる方も少なくないようです。これを「郷に入っては郷に従え」ではなく、キャリア入社組の意見を取り入れ、手始めにDX企画管理部で部内ローカルの「働き方ルール」を作成しています。

例えば、キャリア入社組からは「当社に入ってからTeamsチャットの使用頻度が下がった」という意見をもらいました。当社ではメールの往復で簡易な申請・許可手続きを行うことも多いのですが、IT企業ではチャットで上司に伝えて、いいねが押されたら許可を得たことになる、といった文化の違いに驚きました。そういった意見を取り入れ、チャットの利用奨励を部として宣言しました。

同じタイミングで、キャリア入社組からコミュニケーション不足についての相談も受けていました。何かいい知恵はないかと情報収集を行ったところ、「短い会話を高頻度に行った方が、生産性や創造性にプラスの影響を与える」という研究結果を見つけ、縦の関係だけでなく横や斜めの関係も含めて、予定のない雑談を増やす取り組みを行っているところです。

このほか、DXを全社に戦略として定着させるために社内広報に力を入れていて、動画による社内ポータルでの情報発信などを行っているのですが、この中でキャリア採用組の活躍を伝え、彼らの力が会社の力になっているということを広く伝えています。

――最近はDX人材の報酬が労働市場で高騰しており、伝統的な日本企業の給与テーブルとのギャップが生じているとも聞きます。

櫻井 待遇については、高い能力を持ったデータサイエンティストのような方を「スペシャリスト」として処遇する制度を検討しています。一方、仕事面では、現場で課題を掘り起こしてさまざまな部門と力を合わせて取り組み、その成果を目に見える形で味わえるという事業会社ならではの面白みもあると思います。

鳥羽 働きやすい環境の整備については、人事を中心に進めております。現状ではフレックス制度のほか、テレワーク制度についても業務を調整できれば出社する日はかなり少なくできるなど、柔軟な働き方が可能になっています。男性の育児休暇の取得も奨励しており、2022年度は取得期間の長短はありますが該当社員の8割が取得しており、男女を問わず育児や介護をしながら働く社員をサポートしています。

DX推進本部の傘下に「物流部」「購買部」を置いて取り組み加速

――御社のDX推進体制はどのような形で行っていますか。

櫻井 2022年にDX推進本部を立ち上げ、全社DX戦略(営業マーケティングDXとソリューション開発、DX人材育成等)、サプライチェーンにおけるDX加速、情報システム戦略にかかわる業務、IT・データ基盤の強化に取り組んでいます。

三井化学のDX推進本部

三井化学のDX推進本部

組織体制の特徴としては、情報システム統括部だけでなく、物流部や購買部も傘下に収めているところにあり、DXによるサプライチェーン業務プロセスの変革に取り組んでいます。各部門にDX推進の代表者である「DXチャンピオン」を配置し、事業本部、研究開発本部や生産・技術本部との連携を強化し、DXを推進しています。

DX推進本部全体の戦略推進を行っているのが、DX企画管理部です。DX推進本部内はもちろんのこと、様々な部門と連携を取りながら、冒頭に述べた4つの基本戦略に則り、業務を進めています。また、メンバーの半数以上がキャリア採用であることもあり、比較的速やかに溶け込める職場であると思っています。

――DX人材の育成策はどのようなことを行っていますか。

櫻井 「データサイエンティスト」の育成に集中して取り組んでいます。DX人材のレベルを0~3の4つに定義して、それぞれに必要な教育を行えるような仕組みを構築しています。

レベル0と1が全社のデジタルリテラシーを向上させる教育、レベル2以上が専門人材を育成するための教育になります。レベル2の人材の教育には、キャリア採用で入社したデータサイエンティストの方々に指導の協力をお願いしたいと思っています。

三井化学の「データサイエンティスト」レベル別スキル定義

三井化学の「データサイエンティスト」レベル別スキル定義

DX企画管理部では、データの活用やデジタルツールの導入により、業務や事業、ひいては会社をトランスフォーム(変革)することをミッションとしています。変革を自らリードする気概を有し、これまでの担当業務に精通した知識を持ち、それらを活かした様々な業務におけるDX関連技術の活用に積極的に取り組むことができる方をお待ちしています。

YouTube:三井化学 会社紹介映像

考察記事執筆:NDX編集部

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