エイジスのDX:棚卸会社から「リテイルサービス会社へ」デジタル技術で事業転換 流通小売業界のDXをリード | NEXT DX LEADER

NEXT DX LEADER

エイジスのDX:棚卸会社から「リテイルサービス会社へ」デジタル技術で事業転換 流通小売業界のDXをリード

エイジス会社紹介 より

エイジスは1978年、実地棚卸サービスを目的とするオール・ジャパン・インベントリ・サービスとして設立。全国にフランチャイズ展開を広げつつ、1996年に現在の社名に変更し、同年に東証JASDAQ(スタンダード)に店頭登録しました。

2003年には韓国、2004年には中国、2009年にはマレーシアと台湾に拠点を置き、その後もタイやフィリピン、ベトナムへ海外進出を進めて、2022年にはアメリカに、2023年11月にはシンガポールに連結子会社を設立しています。(NEXT DX LEADER編集部)

主力の「国内棚卸サービス事業」は減収減益傾向に

エイジスの2023年3月期の売上高は260.6億円、営業利益は28.0億円、売上高営業利益率は10.8%でした。

主要セグメントは3つ。1つ目の「国内棚卸サービス事業」は、利益管理・商品管理を目的として在庫金額・数量を確定する「店舗棚卸」をはじめ、固定資産の棚卸や災害備蓄品の管理代行などを行っています。

2024年3月期中間決算説明会(2023年10月31日)より

2024年3月期中間決算説明会(2023年10月31日)より

国内棚卸サービス事業の2023年3月期のセグメント別売上高構成比は60.6%、同営業利益は8割超えで、エイジスの中核事業。国内の棚卸代行事業における国内シェアは77%と首位に輝いています。しかし近年は減収減益傾向が続いています。

2024年3月期中間決算説明会(2023年10月31日)より

2024年3月期中間決算説明会(2023年10月31日)より

国内棚卸受託収入の内訳は、「ホームセンター・ドラッグストア」「コンビニエンスストア」がそれぞれ35.1億円ずつと最も大きく、次いで「専門店等」が33.5億円、「スーパーマーケット」が21.0億円、「GMS」が19.7億円、「書店」が4.9億円でした。

2つ目の「海外棚卸サービス」は、国内で培った技術やノウハウを活かしてアジア各国で棚卸サービスを中心に提供。売上高は24.1億円、同構成比は9.3%。売上高は増加、営業損失は減少傾向。同営業利益は1.2億円の赤字でした。

3つ目の「リテイルサポートサービス事業」は、閉店後から翌日の開店までに品切れのない売り場作りを行う「集中補充サービス」のほか、新規出店や店舗改装に関わる作業を実施する「マーチャンダイジングサービス」、人材派遣やリサーチサービス、プロモーション支援などを行っています。売上高は78.7億円、同構成比は30.2%を占めています。

「作業提供中心のビジネスモデル」脱却を目指す

エイジスは2023年5月、福田久也新社長のもと、3つの「中長期方針」として「棚卸会社からリテイルサービス会社へ事業転換する」「グループの柱となる新たな事業を創出する」「展開地域をアジアから世界へ拡大する」を示しています。

2023年3月期決算説明会(2023年5月15日)より

2023年3月期決算説明会(2023年5月15日)より

そして2024年3月期の重点施策として「主要顧客に複数サービスを提供する(クロスセル)」「成長事業の創出に向けた投資を積極的に実行する(店頭フィールドアラウンダー事業のmitorizを子会社化)」「海外事業の収益力向上/現地化を推進し進出国のシェア拡大」などに取り組んでいます。

2024年3月期中間決算説明会(2023年10月31日)より

2024年3月期中間決算説明会(2023年10月31日)より

エイジスグループは2016年7月に経営理念を整備し、「エイジスグループは、プロフェッショナルとしてお客様に最高のサービスを提供することにより、チェーンストアの発展と豊かな社会の実現に貢献します」をミッションに掲げています。

エイジスは2022年8月に「エイジスのDX推進に関わる取組について」を発表。齋藤昭生社長(当時)は「第四次産業革命を引き起こす技術はデジタル技術」としたうえで、「豊かな社会の実現に貢献」できる千載一遇のチャンスであり、業界全体のDXレベルアップに貢献していくとしています。

「エイジスのDX推進に関わる取組について」では、会社が目指すDX推進の方向性について、「従来の作業提供中心のビジネスモデルから、ITシステムやデジタル技術を活用したビジネスモデルへの転換」を進め、「流通小売のDX」をリードできるサービスの提供を目指すとしています。

主要セグメントでも、サービスを提供する中で入手できる様々なデータとサービス提供先との「様々なデータ連携」により問題点を可視化し、それを即座に改善する新たな価値創造に取り組むとのこと。「実行部隊」を有することが強みとなるとしています。

主要セグメント以外にも「新たなサービスの開発」に着手しているとのこと。このサービスは「流通小売のビジネスプロセス全体や社会全体の変化を見据えた」ものになるとのことです。

データプラットフォーム構築で「顧客企業の理想」を実現

また、エイジスのDX推進戦略について、以下の3つをあげています。

  1. 統合データプラットフォームの実現と、各種データの連携による新たな価値創造
  2. ITシステム開発の内製化
  3. デジタル人材育成やDX推進のための体制づくり

特に1.について、エイジスでは「各地域、各サービスのデータをクラウド上に集約し、当社の顧客である小売企業やその店舗のデータを連携する事で、『AJIS プラットフォーム』を構築」するとしています。

このプラットフォーム構築により、エイジスの顧客である小売企業が理想とする「購買者や最終消費者が満足する店舗状況」を実現し続けることのできるサービスを提供していくということです。

また3.について、会社は「理想とする店舗状態」を実現し続けるためにDX推進のための体制を強化。「デジタル人材の育成や小売の経験のある人材の採用」を進め、あわせて「様々な個性を持った社員が自由に活躍できる環境を作り、挑戦を称賛し、失敗を恐れない企業文化」を醸成するとしています。

これらの取り組みを推進するために、エイジスでは2023年3月期よりDX推進室を新設。DX推進に関する組織横断的な取り組みをするためのCoE(センターオブエクセレンス)を設置し、人材育成も進めていくということです。

中長期的な事業成長を実現するための投資として「人材」「デジタル」「事業」の3つをあげ、テクノロジーの研究開発やシステム投資だけでなく、「DX人材育成や小売業のプロ人材の獲得」に投資を行っていくとしています。

2023年3月期決算説明会(2023年5月15日)より

2023年3月期決算説明会(2023年5月15日)より

YouTube:エイジス会社紹介

考察記事執筆:NDX編集部

エイジス会社紹介の再生回数推移