SOMPOホールディングスのDX:脱保険で目指す「安心・安全・健康な世界」 リアルデータプラットフォームで新しい価値提供 | NEXT DX LEADER

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SOMPOホールディングスのDX:脱保険で目指す「安心・安全・健康な世界」 リアルデータプラットフォームで新しい価値提供

介護RDP(リアルデータプラットフォーム)~egakuのサービス概要~ より

SOMPOホールディングスは2010年、損害保険ジャパン(2002年に安田火災海上保険と日産火災海上保険、大成火災海上保険が合併して誕生)と日本興亜損害保険の経営統合により、NKSJホールディングスとして誕生した会社です。

2016年に現在の社名に変更。傘下の子会社統合、ワタミの介護会社や海外企業の買収などを経て、現在は「国内損害保険事業」「海外保険事業」「国内生命保険事業」「介護・シニア事業」「その他」の5つの事業を行っています。(文責:NEXT DX LEADER編集部)

「安心・安全・健康のテーマパーク」掲げる

SOMPOホールディングスの経常収益は、ここ数期右肩上がりに伸びています。2023年3月期は前期比10.5%増の4兆6071億円でした。一方、自然災害や自動車事故の増加により、経常利益は同61.2%減の1225億円、最終利益は同59.5%減の911億円の増収減益となりました。

事業別修正利益は、2022年3月期は国内生保事業が約6割を占めていましたが、翌期は上記理由で激減。海外保険事業が933億円(61%)、国内損保事業が320億円(21%)、国内生保事業が178億円(12%)、介護・シニア事業が59億円(4%)、その他デジタル事業等が30億円(2%)となっています。

SOMPOホールディングスの企業サイトより

SOMPOホールディングスの企業サイトより

2024年3月期は、新型コロナ関連の給付金支払いが大きく減少したほか、円安の影響などで海外保険事業の資産運用益が伸びており、最終利益が中間決算として過去最高となっています。

SOMPOホールディングスでは2021年5月、「新中期経営計画(2021~2023年度)」を策定。「経営理念」「パーパス」を定め、計画の到達点として「安心・安全・健康のテーマパーク」というスローガンを掲げています。

「新中期経営計画(2021~2023年度)」(2021年5月26日)より

「新中期経営計画(2021~2023年度)」(2021年5月26日)より

DXに関する取り組みとしては、3つの基本戦略のひとつに「新たな顧客価値の創造」をあげ、各事業・領域のリアルデータ(社会や生活から得られる実際のデータ)を有機的に結びつける「リアルデータプラットフォーム(RDP)」を構築することで、これまでにない価値提供を目指すとしています。

この実現に向けたマテリアリティ(重点課題)を整理し、経営数値目標を2023年度の修正連結利益3,000億円以上、修正連結ROEは10%以上に設定しました。2023年5月の「2022年度通期決算説明資料」によると、2023年度は一過性要因の影響もあり、修正連結ROEは10%以上を達成するものの、修正連結利益は2,800億円となる見込みです。

主要事業ごとにCDOを設置しDXの進捗を管理

SOMPOホールディングスでは、2016年にグループCDO(最高デジタル責任者)を設け、東京とシリコンバレー(米国)、テルアビブ(イスラエル)にSOMPO Digital Labを置くなど、デジタル技術の活用には早くから取り組んできました。

SOMPO Digital Labは「事故をなくす。災害をなくす。病をなくす。目指すのは、保険が必要ないほどの安心・安全・健康な世界。」をビジョンに掲げ、「不安をなくすためのサービス産業」をデジタルの力でドライブすることを使命とする会社です。

2021年には、デジタル事業の中核会社SOMPO Light Vortex(東京・新宿)を設立。2022年には、グループの主要事業ごとにCDOを設置してグループCDOと連携する体制を構築し、DX施策と効果の進捗管理を行う「DXメトリクス」の運用を開始するなど、DXの取り組みに本腰を入れています。

SOMPOホールディングでは2023年8月に公開した「統合レポート2023」の中で、デジタルに関する取り組みについて大きく取り上げています。

「統合レポート2023」より

「統合レポート2023」より

「SOMPOのデジタル戦略の進化」として、ホライゾン1の「DX:デジタル戦略スタート」(2016年~)、ホライゾン2の「RDP」(2019年~)に続く段階として、ホライゾン3「WEB3・AI時代へ:DX×RDPの加速」(2021年~)を位置づけています。

生保事業の「健康応援機能」ユーザーは入院率が半減

ホライゾン1の「DX」について、SOMPOの損害保険事業では、デジタル技術を活用した「保険金の支払いとアンダーライティング(保険引き受けの可否判断等を行なう業務)の精緻化・効率化」に取り組んでいます。

子会社の損害保険ジャパンでは、Palantir(パランティア)社のデータ統合基盤「Foundry」を使い、過去の損害率などさまざまな情報を効率的に収集し、簡単な事案については自動的にアンダーライティングの結果を出せるようにしているとのこと。災害時に保険金請求が集中しても、デジタル化で効率的に手続きが進められるようになったとのことです。

「中期経営計画の進捗」(2022年11月25日)より

「中期経営計画の進捗」(2022年11月25日)より

2022年11月の「中期経営計画の進捗」によると、「DXによる既存事業のバリューアップ」の効果として、「アンダーライティング収支改善」「オペレーション効率化」に加え、「新たなビジネス機会」により、2024年3月期には220億円の増益がもたらされたということです。

「中期経営計画の進捗」(2022年11月25日)より

「中期経営計画の進捗」(2022年11月25日)より

生命保険事業では、デジタル技術を活用した業務効率化、オペレーションの組み替え、顧客体験の創出に加え、顧客の健康を後押しする「Insurhealth(インシュアヘルス=保険機能+健康応援機能)」に取り組んでいます。健康になったら保険料が割引される「健康☆チャレンジ!制度」を使った顧客は、使っていない顧客に比べると入院率が半減することも判明したということです。

介護事業では、2017年から介護保険請求などの事務作業の集中化や、介護記録のスマートフォン活用に加え、2019年からFuture Care Lab in Japanを設置して、要介護者の見守りや介護業務を代替するテクノロジーやロボットなどの研究を行っています。

介護事業のRDPで2030年度に売上高300億円目指す

ホライゾン2の「RDP」については、2023年4月に前出の米Palantirと共同でソフトを開発し、自社内での活用や社外介護業者との協業を通じて介護RDP「egaku」の事業を開始しています。

「中期経営計画の進捗」(2022年11月25日)より

「中期経営計画の進捗」(2022年11月25日)より

egakuは、介護業界等で収集されるリアルデータを起点に、介護業界の社会課題解決につながるサービスを提供する会社。例えば、リアルデータ活用により、ケアプランとサービス実績の乖離や、利用者の体調変化などの可視化が可能になります。egakuでは2030年度に売上高300億円、営業利益100億円を目指す計画を立てているとのことです。

ホライゾン3の「WEB3・AI」について、グループCDOのアルバート・チュー氏は「統合レポート2023」の中で「基本的に、私たちはリアルデータの力を実感しています。そしてAI、WEB3によって、私たちはSOMPOの枠を超え、このようなソリューションを業界に提供することができます」とコメントしています。

YouTube:介護RDP(リアルデータプラットフォーム)~egakuのサービス概要~

考察記事執筆:NDX編集部

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