「この子は悪霊ではない……」霊感体質の父が職場で見た”赤い頭巾をかぶった女の子”
当時、年に1、2回ほどプラントの定期点検をしていた。点検時は運転を止め、故障がないか機械をチェックするのだが、その際に必ず誰か1人が宿直となり、夜中に見回りをしなければならなかった。
この定期点検の数か月前から、社内で奇妙な噂が流れていた。プラントには倉庫が隣接しており、製品を袋詰めする下請け業者が出入りしていたのだが、その業者の社員たちが「倉庫内に幽霊を見た」というのだ。
「奥に製品を取りに行くと女が立っていた」「白いモヤモヤが飛んでいた」など、多くの人が不思議な体験をしていた。父は社内でも”霊感が強い人”として有名だったため、その業者の長から「一度倉庫を見てほしい」と頼まれた。
昼間に一緒に倉庫へ行くと、薄暗いものの特に嫌な感じはしなかったそうだ。その場で幽霊らしきものを見ることもなかった。しばらくして定期点検の日がやってきて、その日の当直は父が担当することになった。
「自分の骨が埋まっていて見つけてほしいと出てきたのかもしれない」
宿直の夜。父は運転の止まった暗いプラント内を点検してまわり、例の倉庫にも寄った。すると、いきなりゾクゾクッと寒気が走り、鳥肌が立った。倉庫内には誰もいない。前回昼間に見た時は何も感じなかったのに、今回は”霊的な何か”を察知した。
「とにかく意識を向けないようにしよう」と急いでその場を去り、他の箇所を点検して宿直室に戻った。次の点検まで仮眠をとるため簡易ベッドに横になり、すぐに眠りに落ちた……のだが、父は奇妙な夢を見たという。
真っ暗な倉庫、さっき見回った倉庫だ。そこに、赤い頭巾をかぶり、もんぺをはいた女の子が立っていた。そう思った瞬間、女の子の体が宙に浮き、ものすごいスピードで飛んできた。
女の子は倉庫を出て、配管やプラントの間を抜け、真っ暗な廊下を一直線に飛んでくる。確実に、父が寝ている宿直室に向かってきている。父はハッと目が覚め、「いま本当にこっちに来ている!」と瞬時に悟った。そして身構えた。
同時に、宿直室のドアに「バンッ!」と大きな衝撃が走る。ドアは重い二重扉だったが、いとも簡単に開いた。そこには、赤い頭巾をかぶってモンペをはいた女の子がいた。本当に部屋の中に入ってきたのだ。女の子の頭巾は、防空頭巾だった。
父は「何かしてくるかも」と身構えたが、女の子は父を見て、泣き始めた。思わず、「どうしたんか?」と声をかけた。が、応答はなく、女の子はその場に座ってしばらく泣いていた。
父は普段、禍々しいものや恐ろしいものに遭遇すると、身を守るために「九字」を切る。しかしこの時、「この子は悪霊ではない」と悟り、切らなかった。その代わりに念仏を唱え続けた。しばらくすると女の子はスッと消えていったという。
父は「これは絶対”何か”を訴えるために出てきたんだ。自分の骨が埋まっていて見つけてほしいと出てきたのかもしれない」と思ったそうだ。自分ではどうしてあげることもできないため、会社の上司に相談。本格的にプラント全体を御祓いすることを提案した。
父から提案を受けた上司は、すんなり受け入れた。実は自社の現場社員からも、さまざまなプラントで「幽霊を見た」と相談されることが多かったそうだ。
後日、その会社に縁のある神社の神主に依頼し、大々的な御祓いが行われた。父が担当していたプラントや倉庫を含め、敷地全体をまわって祝詞をあげ、お清めのお酒をまいた。さすがに倉庫を掘り起こして骨を探すことはできなかったが、それ以降、怪奇現象は落ち着いたという。
筆者が幼い頃、父が神棚を拝んだ後に「今日は会社で御祓いがあるから行ってくるよ」と出かけて行った記憶がある。今回、改めて当時の話を聞いたが、父は「あの子からは、怨念や恨みのような恐ろしさは感じなかった。自分がそこにいることを、ただ知ってほしかったのかも」と振り返っていた。
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