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『スナックバス江』なぜYouTubeに現れた「作者不明の謎アニメ」をファンが歓迎したのか

YouTubeをキャプチャ

2024年4月9日、人気マンガ『スナックバス江』の1エピソードを描いたアニメーション動画がYouTubeに突如として公開され、瞬く間に話題となった。公開したのはYouTubeに突如現れた謎の「ネメシス」というアカウントで正体は一切不明。しかし、作者のフォビドゥン澁川氏がX上でリンクを紹介したことから大勢の目に触れることになった。実はこのエピソード、TVアニメ化された際にも取り上げられていたのだが、その内容は原作漫画とは異なるものだったのだ。いったい何が起きているのか? (文:昼間たかし)

テレビアニメでカットされた原作エピソードが、忠実に再現されていた

『スナックバス江』は『週刊ヤングジャンプ』で連載中のマンガだ。札幌市北24条にある架空の寂れたスナック「スナックバス江」を舞台にバス江や常連客たちの日常を温かく、時にシュールに描いたギャグ作品だ。独特の世界観とキャラクターたちの掛け合いが魅力で、多くのファンを獲得してきた。

今回YouTubeで公開された動画のエピソードは、テレビアニメ化されたときに大幅改変され、ファンの怒りをかったものだった。

原作ではトミノ・ハヤオ・アンノ・シンカイという、どこか聞き覚えのある名前のネコ人間?が登場し、際どい発言を連発する。しかし、テレビアニメ版では、名前が「猫レッド」「猫ブルー」などと改変され、会話そのものもほぼカットされてごく短い1シーン扱いになってしまっていた。

テレビ版アニメと比べれば、今回のYouTube版アニメは、絵柄こそ原作クオリティだが、動きは圧倒的に少ない。キャラの音声も声優が演じるのではなくテキスト読み上げソフトウェアを使っている雰囲気だ。しかし、会話はテンポよく進むし、エピソード内容も原作そのまま忠実に再現されていた。

さて、テレビアニメ版で原作通りの表現がされなかった理由は、筆者には推測できる。一言でいうと「大人の事情」だ。漫画では許容されても、公共の電波であるテレビアニメでは許されない表現は多々ある。とりわけ、実在人物を彷彿とさせるパロディはテレビ局がもっとも避けるところ。さまざまな調整の結果、それがテレビアニメ版としての限界だったのだろう。

ただ、もともと原作の最大の魅力は過激なパロディ表現や、論争を呼ぶような「際どい」ジョークの数々である。原作では「ド○えも○のモノマネしてみて!」など、たびたび有名作品や実在人物を想起させるパロディギャグを展開している。それだけに、そこを避けて通ったテレビアニメ版には、失望する原作ファンが多かった。

アニメ版への不満を受け、アニメの脚本・監督を担当する芦名みのる氏がX上で反論したのも火に油を注ぐ結果となっていた。たとえば、原作に存在しないドリンクをつくるシーンが「邪魔」という批判に対して、芦名氏が「スナックでドリンクを常に作るのは当たり前で、それをやらないキャストなんていないんですよねえ」と投稿したところ、ファンから「ギャグアニメとしてのテンポ崩してまで正しいスナック描写に拘るべきなのか」と疑問が呈される……といった具合だった。

芦名監督は最終的に「これ以上の発言は控える」としてXアカウントを閉鎖。結局、原作に描かれているような表現はテレビアニメでは無理だったのだろうと、ファンにも諦めムードが広がっていた。

今回YouTube動画が登場し、ファンが歓喜した背景には、こうした事情があったわけだ。しかも、作者本人がそのリンクをXで紹介したことから、原作ファンの間では、これがアニメ化されたシーンに対する作者自身のアンサーなのではないかと受け止められている。もちろん、この動画への作者の関与はまったく明らかになっていないし、おそらく今後も真相が明かされることはないだろう。

今回の作品に限らず、マンガ原作のアニメ化や実写化に際しては、しばしば原作ファンから悲しみの声があがっている。そうしたファンへの型破りなアンサーとして、今回のYouTube動画は、長く語り継がれる存在になるかもしれない。

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