「つながり孤独」に陥る若者の心理、ゆうこすが代弁「SNSより現実の方がハードル高い」 幼いころからのメディア漬けが影響?
しかし彼らは、やめられないから辛いのだ。「上京した友達のキラキラした写真を見て自分との差を感じる」「本音が語れない、深い友だち関係を築けない」など、劣等感や淋しさで病んでいた。
16年の経験を持つカウンセラーによると、最近は「SNSよりも生身の人間に関わりたい」と言いつつ、「でもその関わり方が分からない」と苦しんでいる若者が多いという。
メイクやファッションの情報を発信し、100万人以上のフォロワーがいる「ゆうこす」さんに「SNSでの関係が辛いなら、なんで近くの生身の人間関係を充実させようと思わないのかな?」と聞くと、
「SNSよりも現実世界のほうで気を遣ってしまう。私たち世代はSNSでコミュニケーションをとるのに慣れすぎて、『SNSで失敗したから現実』っていうのは、なかなか行きづらいと思う」
と若者の心理を答えてくれた。現実で失敗したからSNSへというのは分かるが、ハードルが低いところから急にまた高いところに挑戦していくことは難しいと話す。
「(現実世界の方が、ハードルが)全然高いです」
明るく可愛らしい彼女でも、実際の人間関係よりネット上のつながりが心地いいと感じているのだ。
メディア漬けでリアルの体験が不足した子どもは精神的に大人になれない?
なぜここまで、今の若者は実際の人間関係が希薄なのだろう。筆者は、スマホ育児に警鐘を鳴らす小児科医、田澤雄作氏の著書『メディアにむしばまれるこどもたち』(教文館)を思い出した。ここでいうメディアとは、テレビ・ゲーム・ネット動画などの映像メディアのことを指している。
こうした話を出すと、「ワンオペ育児の母親をさらに追い詰める」と言われそうだが、それはひとまず脇に置き、本書が示す弊害の一部を要約してみると、脳への影響のほかに、
「大人になるためには、社会の中での様々な現実体験が必要だが、メディア漬けになった子どもたちは、その体験時間を奪われ、『幼いままの心』や『大人になれない』問題を抱えて身体だけ大人になる」
としている。つまり、メディアに時間を取られ、実体験が乏しくなり、精神的に未成熟のままになってしまうという指摘だ。
「現実の方がハードルが高い」という心理は、この「メディア漬け」が一因としてあるのかもしれない。テレビっ子の40代筆者よりも、いまの若者のほうがずっと多くの映像メディアに、幼いときから触れてきているはずだ。人間関係で味わう嫌な気持ちや、対話の楽しさの経験が乏しく、身近な人とすら心を通わせてこなかったとすれば、孤独で病んでしまっても仕方ないだろう。
だが、いまやネットやスマホ、ゲームは当たり前で、代わりにじっくり子どもに向き合えと言われても難しい。かくいう筆者も、子どもが幼少期にはスマホこそなかったがテレビに頼ることは多かった。子どもが中学生の今は、ゲーム、テレビ、YouTube漬けで、そんなことだから写生の宿題は「ネットの写真を見て描く」などと言い出すのかとうなだれてしまう。母親ひとりの意識だけでは、どうにもならないと半ば諦めてもいる。
イギリスでは、「孤独」を社会問題ととらえ、300億円の基金を作って対策に乗り出しているという。孤独問題の担当大臣まで新設され、孤独を「後ろめたいもの」という風潮を変える運動をするNPOもある。
社会が孤独を放置しないことは、それだけで救いがある。「スマホ育児をさせないで」「SNSをやめればいい」と言うだけでは、孤独感は増すばかりだ。メディアと適度な距離を置き、身近な人と目を合わせた対話を大切にすることを、まずは大人が努力すべきなのだと思う。