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70万円のゴシック風「棺」に入って気分転換 こんな「安らぎ」も悪くない!?

写真:筆者

夏と言えば、死と恐怖がもっとも身近になる季節である。幽霊、百物語が夏の季語になるくらいだから間違いない。だから、と言うわけではないだろうが、このほど東京都大田区でえらくゴシックな棺の展示が行われていた。キャッチフレーズは【ヴァンパイア気分に浸れる「眠れる棺家具」】だ。(取材・文:檀原 照和)

けっこう売れてるの!?

棺の展示は、7月に開催された「NO WAY MANIACS 9th」(会場:大田区民プラザ展示室)という展示・販売イベントへの出展という形で行われていた。ケルン大聖堂が似合いそうなダークなブースが並んでいる。その最奥に目指す棺は安置されていた。

「若い頃はゴシックなアイテムが好きでも、大人になると顧みなくなってしまう人が多い。家具という形でうまく生活に溶け込ませたいと思った」と語るのは、デザイナーでこの棺の発案者の後藤ききさん。

「一般の方に、いままで知らなかった文化を知っていただくきっかけになれば」との思惑もあるそうだ。 

お値段はフルカスタムで70万円と、決して安くはない。しかし6月の時点で既に6台の販売実績があるという。

構想10年。一筋縄ではいかない伝統の壁

デザイナーの後藤ききさん(写真:筆者)

ききさんによると、この棺は10年ほど前に構想したものという。さっそく老舗の葬祭用具メーカーに製造を相談したが、「日本の葬儀のしきたりから外れたことをすると仕事が回ってこなくなる。だから引き受けられない」と拒絶されてしまう。伝統の壁は厚い。西洋式の棺は作ってもらえないのだ。

舞台の大道具制作会社にも当たってみたが「舞台公演が終わったら壊す前提でつくっているので、長持ちさせるものはつくれない」と無常な返答。さらに「表側はきれいにつくれるが、裏は張りぼてになる」と知り、いったんは諦めて棚上げにした。

それから10年経った頃、ふと「オーダー家具という形にすればいいんじゃないか?」と思いついたそうだ。地元である大田区の町工場に連絡したところ「お客様に合わせて一つずつしかつくれない。量産できなくても良いのなら」という条件で OKしてくれたという。

写真:筆者

すべての棺が一点物なので、材質や色は自由自在。豊富なバリエーションを取り揃えたカタログから、自由に選べる。さらに内張りのクッションは二重張りでふかふかしていて、永遠の眠りにも耐えられそうだ。

蓋を閉めれば、スツール代わりに座ったりもできる。職人がしっかり手作業でつくっているので、人が乗っても安心だ。

さらに、万が一なにかの拍子に間違ってふたが閉まっても、中から1人で開けられるように工夫が施されており、閉じ込められる心配もない。

棺に入ると寿命が延びる!?

普段は1点ものの衣裳をつくっているききさん。「“危機裸裸島”という天空に浮かぶ島の民族衣装」がコンセプトだ。地下に通じる工房にもお邪魔したが、不思議な世界が口を開けていた。諸説あるものの、大田区は「コスプレ発祥の地」と言われているそうで、こういう場所があるのは必然なのかも知れない。

棺は系列店の「危機裸裸珈琲店 Hair Salon」で常設展示されているほか、あちこちのイベントに出展している。

「先日も工房近くの商店街で実施している地域のマルシェに参加したんです」とききさん。昨年5月に「アド街ック天国」(テレビ東京)で取り上げられており、通りがかったおばちゃんたちの食いつきがすごかったという。

「もし知られていなかったら『なにあれ?』と言われて終わっていたと思う。ファッションを含めた見た目で敬遠せずに、もっと踏み込んでもらえたら。大田区で活動しているクリエイターとして地元と繋がっていきたい」とききさんは語る。

思わぬ発見もあった。地域マルシェでお婆さんたちが口々に「生前棺に入ると寿命が延びる」と教えてくれたのだ。入棺体験、じつは縁起物なのだという。

実際に入ってみたところ、ひじょうに静かで安らかな気分になった。人は皆、神様から与えられた命を生きている。一度死んだ気になって人生の再スタートを切るのも、一風変わった夏の思い出としては悪くないかも。

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