現在結婚2年目のAさん夫妻。出会ったのはおよそ6年前、Aさんの勤める大手アパレルメーカーに、妻のBさんがアルバイト社員として入社したときだった。

夫「同じブランドの部署ではありましたが、僕は店舗をまとめる業務、彼女は服の発注業務で、仕事上で関わることはほとんどありませんでした。部署内には彼女以外にもアルバイトの若い女の子が数人いて、彼女たちはすごく仲が良かったので、妻のこともはじめは『あの仲良しグループのうちの1人』という程度にしか認識していませんでしたね」

妻「私は当時から夫のことを『あの人、いいな』と思っていました。夫はどちらかといえば物静かで、職場でも目立つタイプではなかったんですが、忘年会などの飲み会の場でたまに発する言葉がおもしろくて、みんなに好かれていたんです。『この人ともっと仲良くなりたい』と密かに思っていました」

交際がスタートしたのは1年半後。Bさんの上司の女性が開催した少人数での飲み会に、2人が参加したことがきっかけだったという。

夫「妻は当時から年齢よりも落ち着いていて、ややクールな印象があったんですが、実際に話してみるとちょっと抜けているところもあって、おもしろい子だなと思いました。その夜に初めてラインを交換し、以降自然とメッセージのやりとりをするようになって、そのうち2人だけでも出かけるようになったんです」

妻「実は、飲み会を開いてくれた私の上司は、私が夫のことを気になっていると知っていたので、私たちが仲良くなれるよう気をきかせてくれたんですよね。悟られないようにしていましたけど、一緒に出かけるようになったときには内心『やった！』と思ってました（笑） 何回目かのデートのとき、夫のほうから交際を申し込んでもらったんですが、うれしかったですね」

「妻のため、とにかく健康に長生きしたい」

交際後、1年半の同棲を経て、2人は結婚。その際、周囲の反応はどうだったのだろう？　聞けば、Bさんの両親は57歳で、AさんはBさんよりも両親とのほうが年齢が近いというが……。

妻「付き合ってしばらく経ったときに、母には彼の年齢について話していましたが、あまり驚かれませんでした。もともと私は同年代の男性よりも年上の方と気が合うので、以前お付き合いしていた方もひと回りくらい年上でしたし、両親もそれを知っていましたから。親族にも反対するような人はいませんでしたし、みんな祝福してくれました」

夫「僕は婚約したときに初めて家族に話したのですが、彼女の年齢よりも、長年独身を貫いていた僕がついに結婚する、ということに驚いているようでした（笑） 40代半ばまで独り身で、それまでまともに恋人を紹介することもありませんでしたから、両親も諦めていたんでしょうね」

親族や友人らにはそれほど驚かれなかったという2人だが、やはり職場では大きな話題を生んだという。年の差カップルがそれほど珍しくないアパレルメーカーとはいえ、2人の関係は結婚前から噂になっていた。

妻「うまく隠しているつもりだったんですけど、会社が大きいこともあり、街を2人で歩いているだけで目撃されることが多くて。付き合って1年くらい経った頃、同じ部署の人から『みんな知ってるよ』と言われたときは恐怖でしたね……。夫は職場でも独身貴族のイメージがついていたし、まじめなタイプだったので、『まさかあの人が、あんなに若い子と！』と、みんな陰で騒いでいたようです」

夫「結婚する頃にはもう妻は会社を辞めていましたし、コロナ禍で社員同士で顔を合わせる機会も減っていたので、それほど騒ぎにはなりませんでしたけどね。当時の部長や僕の上司たちも彼女のことを知っていましたが、ふつうに『おめでとう』と祝福してくれました」

本人たちは、将来を考える際、年齢差について不安に思うことはなかったのだろうか？

夫「時々芸能人の話などでジェネレーションギャップを感じることはありますが、もともと波長や価値観が合うのか、妻との歳の差を感じることはあまりないんです。なので、心配だったのは自分の健康面だけでしたね。妻のために、とにかく健康に、長生きしなければと」

妻「私も、夫の身体だけが心配でした。夫はあまりお酒も飲まないし、同年代の男性と比べるとスリムで、今は健康そのものではあるんですが……。毎年夫の健康診断の結果を見るときには、ついドキドキしてしまいます（笑）」

最近では共通の趣味であるキャンプを2人で楽しんでいると話すなど、終始仲睦まじい様子のAさん夫妻。2人を見ていると、「愛があるなら歳の差なんて」という往年のフレーズがつい頭に浮かんだ。