やばい営業をする呉服店 買うまで帰れない、靴を隠されて「トイレに行く」と嘘ついて逃げた女性の回想
商品を強引に売りつけてくる店員もいる。ノルマがあるのかもしれないが、売ればいいという態度では客は離れていくものだ。
京都府の40代女性は、高価な着物を売りつけられそうになったことが何度もあるようだ。
「着物販売店の一部は、昔……10年前、ブラックでした。でも今もなのかなと思います。失礼だったり脅迫に近かったり」
と振り返った女性は、このあと呉服屋店員の無茶苦茶な接客手口を暴露する。(文:天音琴葉)
トイレに行くと言ったら、「帰ってきたらお値段の話の続きをしましょう」
それは10年前、ある呉服屋で2点ほど着物を仕立てたあとのこと。長襦袢に半衿をつけるための「半衿テープ」という消耗品を買いに行った。1000円ほどの商品のようだ。
すると店員に「大島紬のいい反物が手に入った」としきりに勧められ、断りきれず、靴を脱いで店に上がり、その反物を体にあててもらった。それは「白大島」と呼ばれる種類の大島紬だった。女性は既に持っていることもあり、「買えない」と主張した。
だが店員はなんとしても売りつけたかったようで、「白大島ではない」と言い張った。「どう見ても白大島である」と思った女性は帰ろうとした。すると靴が見当たらず、意図的に隠されたと思ったようだ。
「トイレに行きたいと言ったら当てていた反物は外してくれましたが、日傘を人質ならぬ傘質にとられ、『どうぞいってらっしゃい。帰ってきたらお値段の話の続きをしましょう』と……」
買うと言っていないのに、すでに決定したかのような言い方で、不快になっただろう。「このままいたら、購入すると言うまで帰れない」と恐怖すら覚えた女性は、日傘を見捨てて帰ることにした。
「靴を脱いで上がった私も甘かった」と反省したものの、強引な接客を黙って見過ごすことはできなかった。本部に苦情の連絡を入れたという。すると後日、店員は家に日傘を届けにきた。ところが懲りずに帯も持ってきて、セールストークを始めたのだった。
「『ふざけるな、帰って!』と怒鳴りました。勿論その店には2度と行っていません」
60万の訪問着を勧められ「普段着以外はいりません」→店員「普段着用だ。洗濯機で洗える」
次は別の呉服屋で、「半衿100円」という広告を見て買いに行ったときのこと。この日は着物教室の帰りだったため、着物だった。
店員に「60万する訪問着」を勧められたが、「普段着の着物以外はもういりません。腐るほど持っています」と断った。また、普段用もたくさん持っている、特定の着物作家のもの以外はいらないと釘を刺し、「お会計をしてください」と広告の品の半衿を差し出した。
すると店員は「独特で人気ですよね!」と、その着物作家の話に食いついてきた。だが「すでにお持ちなんですか?」と聞かれた女性は、呆れたそう。そのとき着ていた着物が、件の作家のものだったからだ。「柄が特徴的なので、ファンも多く知っている人はわかる」というから、店員はあまり詳しくなかったのかもしれない。
女性の着物がその作家のものであると聞かされ、ばつが悪そうにした店員だが、先に勧めた60万円の訪問着を「普段着用だ」と言い張り、売りつけようとしてきた。「普段着どころか、結婚式クラスのフォーマル案件でもないと着られないようなものなのに」と、再び呆れた女性。しかも「洗濯も家でできる」「洗濯機で洗ってもいい」と言い出した店員に、さすがに黙っていられなかったようだ。
「『正絹の着物を洗濯機で洗っちゃダメでしょ。第一それはガチの訪問着です。素人だと思って馬鹿にしてるんですか? 早く会計してください』と言うと『では40万でいいので』と勝手に値段を下げだしました」
まったく聞く耳を持たない店員に閉口し、「半衿を売る気がないなら帰ります」と言ったら、ようやく税込110円を払って帰れたそうだ。
「失礼すぎます。なんでもかんでも売れればいい、というやり方では暇な金持ち以外は逃げて行くと思います。つい最近も、クリーニングに着物を出しに行っただけなのに、あれこれ勧められてうんざりしました」
「もう呉服屋には行かない」と懲りた女性は、最近はリサイクル品を購入し、洗濯の際には宅配クリーニングを利用しているようだ。
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