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子どもが主役!のデジタライゼーション実現へ。「学びを楽しむ」学研ならではの新たな価値創造・DX構想とは?

株式会社学研ホールディングス 執行役員 渡辺悟さん(写真中央)

コロナ禍における急速なデジタル化需要の高まりにより、教育分野のDXは一気に前進している。

市場における既存プレイヤー間の競争激化に加え、スタートアップ企業をはじめとした新興勢力の参入も加速している流れを受け、業界のリーディングカンパニーである株式会社学研ホールディングス(以下、学研HD)は中期経営計画「Gakken2023」の中で、DX施策の強化による成長をグループ全体の目標に掲げた。

そのスローガンは「揺るぎない成長基盤の確立」。不確実性の高い時代を迎えている今、学研HDはどのように挑んでいくのか。執行役員兼・人事戦略室長の渡辺悟さんに話を聞いた。(文:千葉郁美)

急速に進む教育業界のデジタライゼーション

教育業界全体がDX推進へと大きく舵を切った、その大きなきっかけを与えたのは言わずもがな、コロナ禍だ。

学校のオンライン化が進み、本来であれば校内で行われる学びがこれまでとは異なる状態で家庭に入り込み、家庭・学校・塾という3つの領域の学習における相互の重なりや繋がりにも大きな変化が起きている。学びを止めるわけにはいかない教育業界において、サービスのデジタル化は急務と言えよう。

「デジタルを利活用することで、家庭・学校・塾の垣根を越えて学習データをつなぎ、従来のあり方にとらわれない新たな学習体験を創出する、”教育のデジタライゼーション”が昨今の教育業界における主戦場になっています。私たち学研HDも競合他社に引けを取らず、学習支援アプリやAIを用いた学習サービス、オンライン教室など新たな取り組みを推進しています。
また、学研は創業以来、子どもがいかに楽しく学ぶかを大切にしている会社です。真っ直ぐ子どもたちの学びに向き合ってきたという自負があります。子どもを教え、親御さんや先生を支えること以上に、DXを通じて”子ども起点の学研ならでは”の多様性ある新しい顧客体験(CX)を提案していきたいと考えています」(渡辺さん)

データの連携で新たな学習体験を創出へ

学研グループの強みは、教育の現場である「家庭」「学校や園」「塾」の3つの領域それぞれのマーケットにおいてリーディングカンパニーの一角を占めていることだ。全国にある”学研教室”や地域に根ざした学習塾は長年トップブランドの一つである。また、保育園・幼稚園向けの絵本、書店に並ぶ学習参考書などの出版においても業界をリードしている。デジタルを利活用して、それぞれのコンテンツやサービスの個別化・最適化を進めている。それに加えて、”デジタルならでは”の新たな学びの創造や多様な学習機会創出に向け、今後よりいっそうデジタルソリューションの開発に注力している。

「例えば、学研の新・自立型個別学習G-PAPILS(ジーパピルス)は先進のAI(人工知能)を活用した自立型学習システムです。AIによって『生徒一人ひとりに最適化された』学習を実現しています。また、AIというデジタルの良さを生かすことに加え、子ども一人ひとりの理解度や進捗に応じた学習計画を学習サポーター(先生)とともに立案することでやる気に火をつけるという、人の良さをかけ合わせています。その過程を通じて能動的な学習への取り組みと自己管理の中で目標を達成できる子どもになることを目指します。
このようにデジタルの良さと人の良さをかけ合わせ、society5.0でもうたわれているようなスマートな学習サービスを磨いています。さらに今後は、学研ブランドで一貫したサービス提供やおもてなしができるよう、顧客接点をID化した”Gakken ID”への取り組みに注力していきます。家庭・学校・塾の3つの学びの場で存在している学研ファンと、より深く・濃く・長くつながり、最適で最良の学び体験を提案していきます」(渡辺さん)

Gakken IDを導入することで、例えば塾の生徒に対して、学習の管理や支援をするだけでなく、理解度や学習への取り組み姿勢などを踏まえた読書提案や家庭での学習に関するアドバイスなどの付加サービスが提案できるようになる。データを繋ぐことによって顧客のメリットになる取り組みを今後加速させていく構想だ。

「塾の利用者に限定し、当社の読書コンテンツをクラウドサービスで提供するなどの新たな取り組みが増えつつあります。まだまだ伸びる余地が大きいものの、Gakken IDの数はこの2年で約15倍の規模となりました。また、Gakken IDと接続し、手軽に、便利に使える学研グループのオンラインサービスも同様のペースで増加中です。ようやく分析や活用のしがいのあるビッグデータになってきました。これからの展開を楽しみにしています」(渡辺さん)

「主役は子どもたち」学びを楽しむDNAはデジタルソリューション開発でも変わらない

デジタライゼーションを推し進める上で、学研グループにはこだわりがある。それは常に「お客様が主役のモノづくり、コトづくり」であるということだ。

「前述したように、学研は1946年の創業以来、子どもの成長に携わる長い歴史の中で常に『子どもたちが楽しいかどうか』に重きを置いてきました。学研らしさは、子どもの興味を開発すること。興味開発はある種、いろいろな寄り道をしていく中で本当に好きなものや、打ち込めるものを発見する、旅のようなものです。デジタルとアナログ、それぞれの良さを融合させながら、私たちはその『健全な寄り道』を提案していきます」(渡辺さん)

業界内ではデジタルソリューションの開発が競い合うように展開されている。個別学習を支援するほか、「効率的な学習」に向けたAIの活用も盛んだ。直線的かつ目的的な学びの世界観を持つ競合の動きに対応しつつも、学研グループは独自のウィットに富んだ世界観でイノベーティブな取り組みを続けていく。

「直線的な道筋だけでなく、いろいろな道筋があるという多様性を大切にするのが学研らしい姿だと私は考えています。『健全な寄り道』を提案できるAIやデジタルの使い方をする、そういう『学研らしさ』を打ち出していきたいですね」(渡辺さん)

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