男性が「ミクシィ」を始めたのは2004年、日記を辿ると10月頃のことだったという。
「当時は招待制だったのですが、地方では招待してくれる人がリアルにはいなくて……。ネットで繋がっている友人に頼んで招待して貰ったのを覚えています」
それまで、自分でHTMLを直打ちしてサイトをつくり、最近読んだ本や政治のことを語っていた男性にとって、ミクシィは新鮮だった。
「当時やっていたサイトでは、定番だったティーカップの掲示板も設置して政治のことなんかを議論していたんですが、やっぱり荒れることが多くて。それに比べると、ミクシィはまったりして平和な場所だと思いました」
なにより日記で話題になっていることを書けば、読みに来てくれる人がいるのが「足あと」機能によってわかる。俄然、日記を書く気になった。
そのうち、地方でもミクシィをやっている人は増え繋がっている人とリアルで会う機会も増えた。しかし、2009年くらいになると、次第に交流は低調になった。多くの人がTwitterやFacebookに移行して、ミクシィにアクセスすることがなくなったからだ。
「かつては、みんな1時間の間に何度もミクシィを開いて、誰か訪問者がいないかチェックしていたというのに。自分は、今でも一日に3回はチェックしていますよ」
ちなみに、マイミクは500人くらいいたが、今となっては同じように利用しているのは、そのうち3人ほどだという。
「その人たちとはお互いに日記を読んでいると思うんですが、コメントをすることはありません。十数年も繋がっていると、いいかげん交流する話題も尽きました。むしろ、自分も日記を書きながら『こんなオッサンのつまらない日常に誰が興味を持つんだ』と思っていますよ。マイミクも、きっとそうでしょう」
ちなみに、ここ5年ばかりは日常のことを書くのも辛くなり、ニュースを引用して一言コメントを書き記す程度だという。
「そんなに毎日、日記に書いて人に伝えるような出来事なんてあるわけないじゃないですか」
ちなみに男性は独身。
一年のうちに心が躍るイベントがあるか訊ねたところ「正月くらい」だという。
ただ、そんな風に利用は低調だが「ミクシィ」は、ほかに代え難いSNSだという。
「TwitterもFacebookもアカウントをつくったんですが、Twitterは無の空間に独り言を呟いているみたいにみえます。Facebookは、なんかキラキラした感じが気持ち悪くて……。ようは、日記帳の延長みたいなミクシィが楽なんですよ。もはや、夏休みの日記みたいな気分で週に何度かなにか書くのが日課になっています」
さらに最近はこんなことも。
「さすがに年を重ねると、孤独死も怖くなってきて……ミクシィにログインする習慣があれば、ログインが途切れた時に誰かが気づいてくれて死体が腐る前に見つけてくれるんじゃないかと思っています」
今後も「生存報告」として、男性は「ミクシィ」を続けていくつもりだという。