話題の「中野東図書館」は、10月末で閉館した本町図書館・東中野図書館に代わる存在。10階建ての複合施設「みらいステップなかの」の7~9階部分を利用し「ヴィアックス・紀伊國屋書店共同事業体」が指定管理者で運営すると発表されている。
そのPRをしていたのが「100日後に開館する中野東図書館」という、どこかで見たようなネーミングの同館公式アカウントだ。
写真を見れば一目瞭然だが、あの高さから本が落ちてきたら明らかに危ない。本を取り出すのも大変だろう。あえて、そんな本棚を作った中野区には、どういう意図があるのか。図書館を管轄する中野区教育委員会子ども・教育政策課を訪ねたところ、こんな回答があった。
「上のほうに本を置くことは考えていません。公共施設である以上、利用者の安全が第一です。高いところに本を置いたら危ないのは当たり前じゃないですか」(小野秀晃・図書館運用支援係長)
説明によれば、通常の本棚として利用するのは一番下の7階の部分のみ。それから上は、当初から蔵書を配架する予定はないのだという。
「まだ詳細は決まっていませんが、7階より上の部分は本を並べるのではなく、本の背表紙のコピーや子供の書いた絵などを用いて展示を行うことを考えています」(前同)
そう。公式アカウントは「本棚」と表現していたし、ツイートを見た人たちもみんなが本棚だと誤解していたが、実際は危ないから本は決して置かない、明らかに違う存在である何かだったのである。
高層の本棚には「裏」があった
さて、もう一つネット上で批判されていたのは、「あんな高い部分に本を置いて、どうやって取るのか」というポイントだった。本を置かないなら頻繁な出し入れもなさそうだが、聞いてみると意外な回答があった。
小野係長によると、実はこの棚、裏側が開いて安全にモノを置けるのだという。
「指摘されている本棚は、裏側も書架になっていて、裏側から壁を開いて、展示物の出し入れをできるようになっているんです」
まさか「裏」があるとは、予想外である。
「ただ、各階の床にあたる部分だけは裏から出し入れができないので、展示替えをする際には足場を組む必要があります。ですので、その部分だけは数年に一度展示替えをすればよいものを設置することを検討しています」(小野係長)
その部分については、数年間いじらなくてもいいような展示を考えるのだろう。さて、公式アカウントのツイートが説明不足だったことは、小野係長も認めていた。
「詳細な図書館の案内は12月に公開する予定として、Twitterでは小出しに情報を出すことにしていました。多くの人に興味を持って貰うことが目的ですから、一度にすべてを出してしまうと忘れられてしまうと考えたからです。ただ、今回のこともありましたので、今日にもホームページでなんらかの説明は掲載するつもりです」
いきなり開館前から「炎上」となった中野東図書館だが、小野係長によれば蔵書数は閉館した2館の合計よりも増加。区民から要望の多かった自習スペースを設けるなど使い勝手はよくなっているという。謎の「棚」はともかく、安全で使いやすい図書館ができるなら歓迎だ。
それにしても、「本棚ではない」とか「裏が開く」とか、意外な事だらけだった。裏側を見にいくのはやはり大事なことである。