角川歴彦会長逮捕「トップ逮捕」の悪夢再び 角川兄弟の「お家騒動」を振り返る | キャリコネニュース
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角川歴彦会長逮捕「トップ逮捕」の悪夢再び 角川兄弟の「お家騒動」を振り返る

角川本社ビル Lombroso, Public domain, via Wikimedia Commons

東京五輪・パラリンピックの汚職事件をめぐり、大会スポンサーだった「KADOKAWA」の角川歴彦会長が9月14日、贈賄容疑で逮捕された。角川歴彦容疑者の兄、角川春樹氏も同社トップだった93年に違法薬物のコカインを密輸させた罪で逮捕されている(後に有罪が確定)。2人は90年代初頭に同社の経営を巡って繰り広げた「お家騒動」で有名だが、まさか兄に次いで弟まで逮捕されるとは、誰も思いもよらない出来事である。これを機に「角川」ブランドの歴史を振り返ってみたい。(文:キャリコネニュース編集部)

兄弟の確執「角川騒動」とは?

「KADOKAWA」の創業は1945年、国文学者の角川源義が「角川書店」を立ち上げたことに始まる。その躍進が始まったのは、1975年に角川春樹氏が社長に就任してからだ。春樹氏は「横溝正史ブーム」を仕掛けると、1976年に『犬神家の一族』で映画製作に進出。自社の手掛けるコンテンツを映像化し、音楽も付けて売り出すという、「メディアミックス戦略」で業界に旋風を巻き起こした。

この「角川商法」と呼ばれたビジネスモデルで角川書店は大いに繁栄したが、1980年代になるとテレビ局の映画業界参入などで、競争が激化。同社の存在感は薄まり、ヒット映画を作っても巨額すぎる制作費を回収できない、といった事態が起きるようになった。

こうした流れを受けて、春樹・歴彦兄弟の、経営方針を巡る確執は深まっていく。

もともと角川書店はワンマン色の強い春樹氏が目立っていたが、その裏では歴彦氏が雑誌や営業を担当し、「両輪体制」で成長してきた会社だった。1990年代初頭のタイミングで角川書店の屋台骨を支えていたのは、歴彦氏が育てた『東京ウォーカー』や『ザ・テレビジョン』などの情報誌や、『コミックコンプ』『コンプティーク』などのオタク向け雑誌だった。

そして兄弟の対立は、春樹氏が長男の太郎氏を後継者として入社させたタイミングで激化。歴彦氏は92年9月に取締役副社長職を解任され、追放されるに至った。

歴彦氏の「逆襲」

ただし、歴彦氏もタダでは転ばない。主婦の友社や紀伊國屋書店から資金援助を受け、1992年11月に「メディアワークス」を設立。角川時代に発行していた雑誌とまったく同ジャンルの雑誌を創刊して対抗した。こうした雑誌の作り手は、歴彦氏のあとを追って退社した「元角川」の編集者たち。角川メディアオフィスでは80人いた社員中、70人もが歴彦氏のあとを追って退社したというから、ようは主要メンバーがごっそり移籍してしまったのだ。

新雑誌に移籍したのは、編集者だけではない。彼らとともに雑誌を作っていたライターや漫画家なども、ゴソッと新雑誌に移った。ここで大混乱したのは、事情を知らない読者である。これまで読んでいた『コミックコンプ』に載っているのは、まったく知らない新連載マンガばかり。その隣で売られている『電撃コミックGAO』という聞いたことのない雑誌に、楽しみにしていた連載作品の「続き」が載っているのだ……(ちなみに、創刊号では初見用にあらすじが書いてあった)。ネットのない時代、角川内部の対立など知らない全国のオタクたちは、大いに戸惑った。

驚きの「結末」

ところがこの会社分裂も、後から振り返ると、騒動の「序章」に過ぎなかった。

まず、後継者候補として鳴り物入りで入社し、若くして同社取締役になった太郎氏が、男性部下へのセクハラ疑惑で93年2月に提訴された。「男性から男性へのセクハラ裁判」は「国内初」として大きな注目を集め、結果的に太郎氏は退社することになった。

春樹氏はその後もワンマン方針を維持していたが、自身で建立した神社「明日香宮」で祈祷し、神のお告げだとして角川ホラー文庫を創刊したり、会社のパーティで「神は見ておる!」と社員を鼓舞するなど、神がかり的な言動が「奇行」として注目されるように。

そんな中で起きたのが、1993年7月の「コカイン密輸事件」だった。まずは角川社員がロサンゼルスから帰国した際、所持品からコカインが発見され、現行品逮捕されるという事態が発生。その密輸を指示した容疑で、8月29日に春樹氏も逮捕された。その後の裁判では、社員が春樹氏の指示でのべ1キロ以上(末端価格7000万円あまり)のコカインを運んでいたと認定されている。

角川書店は逮捕から数日後の9月1日、新聞朝刊で謝罪広告を出し、春樹氏も辞任を表明するなど、スピード対応を図った。しかしその後も事態はなかなか沈静化せず、コカインをカレーにかけて食べる「コカインパーティー」が開かれていた、といった関係者供述が報じられる中、角川書店のブランドは地に堕ちていった。

このピンチを救ったのが、同社に返り咲いた歴彦氏だった。歴彦氏は10月19日に社長に就任、その後はアニメ・ゲーム・マンガを中心にした新たな方向性の「メディアミックス」を打ち出し、見事に会社を立て直した。その経営手腕は誰の目にも明らか……という感じだったのだが、ここに来て、まさかの逮捕に驚愕するしかない。

もちろん、まだ有罪と判断されたわけではないどころか、裁判も始まっていない段階だから、何かを断定して言えるような状況ではない。しかし、「五輪汚職疑惑」に「トップ逮捕」と続く事態が、KADOKAWAブランドに与える悪影響は、決して少なくなさそうだ。

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